【発達障害の子の入学心得】学校に合わせるのではなく、我が子に合わせて学校を利用するスタイルを

小学校入学に際して、発達障害の子の保護者が、学校の先生や、同級生のママたちに我が子の特性をどう伝え、理解を求めたらよいのでしょうか。発達障害を持つ⼩学校1年⽣から⾼校3年⽣を対象とした放課後等デイサービス「Luce(ルーチェ)」を運営している、藤原美保さんに、子どもがスムーズな学校生活を送るためのアドバイスをうかがいました。

学校の先生と保護者では、「支援」に対する目的が違うことを理解しましょう

まず、小学校は、幼稚園・保育園時代のようにバスや大人の送り迎えがありません。子どもだけでの集団登校を始め、今まであった大人の手が無くなることで「様々なトラブル」が起こります。そのトラブルをどうやって未然に防ぐかは。保護者にとって昔から変わらぬ課題です。

長年お子さんたちの支援を行ってきた中で、多くのトラブルを保護者や先生方から見聞きしてきましたが、いつも感じるのはこの両者の問題の方向性がすれ違っているという事です。

学校の先生と保護者とでは、子どもへの「支援」に対する課題が違います。

先生の課題は、教室運営をしていくのにはどうしたらいいか?

保護者の課題は、我が子を支援してもらうにはどうしたらいいか?

この先生と保護者の両者の意識のギャップが、学校と保護者間でのトラブルになるわけです。

親にとってはonly oneでも、先生にとって子どもはone of them ということを心得ておきましょう。

先生にとっての1番の目的は教室運営、つまり自分の仕事です。発達障害の子の親は、わが子への配慮は1番ではないという事をまず理解しておく必要があります。

我が子への理解を求めようと行き過ぎた行動が、先生を遠ざけることに。

 

以前、こんなお母さんがいらっしゃいました。我が子への理解を求めようと、発達障害の本を何冊も買って、「先生に読んでいただきたいんです!」と渡したそう。受け取ってはもらえたけど、お母さんが思ったような支援はしてもらえず「解ってもらえなかった」と泣いて私のところに来たのです。

「少しの気配り」でできることからお願いしましょう

このお母さんに足りなかったのは、先生が負担にならないための配慮です。 子どもの障害への理解をうまく伝えるためには工夫が必要です。
多くてもA4の紙1枚くらいの情報にまとめて、簡潔に伝えるようにしましょう。例えば、

・板書が苦手です。連絡事項はプリントで渡してください

・指示は個別に「名前」を呼んでください

など、ポイントは先生が「少しの気配り」で出来る事をお願いすることから始めることです。

 

子どもの特性やペースに合わせて学校で過ごすことを、学校に提案してみる

保護者は、ついつい子どもを学校に合わせようと考えがちです。学校のカリキュラムは全体の6割以上数の子の発達に合わせて作られているため、学校の学習スピードに合わせようとするとどうしてもお子さんに負担がかかります。

 特性の強い子や不安の強い子にとっては、長時間の集団生活がそもそも負担になるため、知的にグレーゾーン診断のある子にとっては負担が大きいのです。

そのため、爪噛みがひどくなったり、授業中に立ち歩くなど様々な二次障害的な行動が出てしまう事があります。しかし、学校の活動の中にはお子さんが楽しめる、お子さんに合うものもあるはずです。

 

例えば、集団での授業で指示が通らず立ち歩くなどの場合は、通級を取り入れて、個別の対応をしてもらう事で立ち歩かなくなったということがありました。

子どもによっては、イベント、体験学習や課外授業なら参加できる子もいます。その逆で、見通しが立たなく不安が強くなる子の場合は、通常のペースとは違う課外授業は参加せずにお休みにするなど、お子さんに合わせて使う事をお勧めしています。

スモールステップで、お子さんのペースで「学校を利用する」という意識をもって取り組むことがお勧めです。その積み重ねで、担任にも、子どもにどう配慮すべきかを具体的に知ってもらうことができます。

 

子ども同士のトラブルは、大人の目の届かないところで起きます。多いのは、集団登校でのトラブル

小学生くらいの子どもは、みんなと同じを「正しい事」と判断しがちで、子ども同士のトラブルは大人の眼のないところでおきます。相談の中で多いのは集団登校の際のトラブルです。トラブルを避けるために、小学校でも親御さんが送迎を行っているケースは多いです。

集団登校のペースについて行けないことが、登校しぶりに

本人は無意識なのですが、不注意で集団から外れてしまったり、他の子の歩くスピードについて行けない事を責められ続けて、登校しぶりが始まったお子さんがいました。保護者が毎日集団登校に付き添う事になったのですが、ほかの子ども同士のケンカにも巻き込まれてしまい、こんなことなら、最初から自分の子だけを送迎することを申し出ればよかった、というケースもありました。

 

理解してもらえない保護者とは、割り切ってつきあう。「我が子にあったスタイルを私が作る」という気持ちで

障害のある子もない子も「みんなが一緒に学ぶ」というインクルーシブ教育理念の方向性が、文部科学省によって教育現場に示されて早10年になりますが、一般に浸透しているかと言われれば、まだまだという状況だと感じています。同級生のママにやっとの思いで打ち明けたのに理解してもらえないなど、余計に悩みを深くしてしまう保護者からの相談を多く受けますが、保護者も無理に合わせようとせずに、割り切ってある程度の距離を持つ事をおすすめします。

 

発達障害を持つ子に対しては、登校のスタイルも、学習スタイルも、他のお子さんと同じようにするのではなくて、お子さんのオリジナルな「スタイル」を、保護者が作っていくという気持ちで取り組んでください。

教えてくれたのは

健康運動指導士、介護福祉士、保育士。株式会社スプレンドーレ代表。

藤原美保さん

発達障害の子ども達への運動指導担当をきっかけに感覚統合やコーディネーショントレーニングを学び、「放課後等デイサービスLuce」の運営に至る。Luceでは発達障害の女の子のサポートを行っており、性教育に力を入れている。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(エッセンシャル出版)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。

5月より、YouTubeで「子どもの対応おたすけチャンネルMamma mia」を主宰。

イラスト/本田 亮

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