障害がある子は保育園には入れない?「障害児保育園ヘレン」がそんなお悩みの受け皿に

待機児童問題が叫ばれて久しいですが、日本では待機児童にさえなれない子どもたちがいます。それは、障害や医療的ケアのある子どもたちです。

そんな子どもたちを預かる「障害児保育園ヘレン」が、2018年11月1日、東京都練馬区の中村橋にオープンしました。カラフルな動物の彫刻やアート作品が点在する「練馬区立美術の森緑地」を眺めながら、歩いて5分の好立地にあります。

医療的ケアが必要な子供が増えているなか、障害児をもつ母親の就業率はわずか5%。

医療の進歩によって出産時に救える命が増え、医療的ケアが必要な児童数は、いま増加しています。しかし、それにもかかわらず、日本では医療的ケアが必要な子どもを長時間預けることができる保育園がほとんどないのが現実です。

健常児の母親の常勤就労率が34%なのに対して、障害児の母親の常勤就労率はわずか5%(認定NPO法人フローレンス調べ)。多くの保護者は仕事を辞め、365日休みなく、子どもの介護にあたっています。また、そのうえに医療費や教育費の大きな負担があり、貧困リスクとも近接しているのです。

「障害児保育園ヘレン中村橋」は、そんな障害児を持つ保護者が働けるように作られた、東京都で6園目の保育園です。定員は15名。保育スタッフ、看護師、理学療法士、作業療法士など、専門のスタッフが連携しながら、障害児の長時間保育を行ないます。

▲ヘレンでは、保育だけでなく、遊びを出発点とした子ども自身が楽しみながら発達を促す療育プログラムも行なっている。布の端を持ち上下させながら、フワフワする布の様子を楽しむ遊びで、視覚と感触を刺激。また、皆でタイミングを合わせて同じ動作をすることで、その一体感を楽しみ、気持ちや身体のコントロールの練習にもなる。

設立のきっかけは障害児を持つお母さんの依頼から

「ヘレン」を運営しているのは「認定NPO法人フローレンス」。誰もが子育てと仕事の両立のできる社会創生を目指して設立されたNPO法人で、これまで病児保育事業や小規模保育事業など、さまざまな保育事業を手掛けており、ヘレンの運営は、障害児保育事業の一環として行なわれています。

フローレンスにおける障害児保育事業のはじまりは、障害児を持つひとりのお母さんの依頼からだったそうです。

「医療的なケアが必要な子を預かってくれる保育園がないので一緒に探してほしい」

このお母さんの願いを叶えるため、フローレンスの障害児保育事業ははじまりました。そして、2014年、日本初の「障害児保育園ヘレン」を開設。以来、これまで都内に5つの障害児保育園を開設しています。また、ヘレンの運営と並行して「障害児訪問保育アニー」もスタート。ヘレンでのノウハウを活かして保育スタッフが家庭を訪問し、慣れ親しんだ家のなかでマンツーマンでの遊びやお散歩のほか、療育施設への送迎や訪問看護も行なっています。

友だちと過ごすことで心身の発達が促され 地域の認可保育所へ転園する子も

ヘレンでは、月曜~金曜、午前8時から午後6時30分までの保育を行なってます。保育の対象となるのは、主に医療的ケア児、重症心身障害児、中重度の肢体不自由児、知的障害児が必要な、1歳からの未就学児(0歳児は要相談)。入所の認定は、お子さんだけでなく、保護者の方が働いているかどうかなど、家庭環境も鑑みながら行なわれています。

フローレンスによれば、ヘレン開設後、これまでにのべ59人の子どもが利用しているそうですが、そのなかには園で複数の子どもといっしょに過ごすことによって心身の発達が促され、医療的ケアが必要なくなった子どもたちが毎年現れており、一般の保育園に転園しているそうです。

その人数は全体の2割にものぼり、このようなうれしい出来事は予測していなかったことだとか――。まさにいっしょに過ごす仲間の影響を受けながら育つ、集団保育ならではの良さが実証されました。

2020年までに、東京23区で保育を希望する全ての医療的ケア児に保育を届けたい

ヘレンでは、障害の重い人でも楽しめ、リラクゼーションできるように開発された「スヌーズレン」も体験できる。「スヌーズレン」は、1970年代半ばにオランダの知的障害施設から生まれた取り組み。光や音、匂い、振動、温度、触覚の素材などを使って、心地よい刺激を体感することで、一緒に過ごすパートナーや仲間とのコミュニケーションが深まっていく効果がある。

「フローレンス」では、今後2020年までに東京23区で保育を希望するすべての重症心身障害児、医療的ケア児に保育の受け皿が提供できる社会を実現すべく、障害児保育事業を推進していく予定です。しかし、まだまだ資金や人材は不足しており、入園希望者だけでなく、園で働くスタッフや支援者を随時募集しています。

ご興味のある方、詳しく知りたい方は、ぜひ一度、下記Webサイトをご覧ください。もしかしたら、あなた自身が支える側に立って活躍できるかもしれません。

「フローレンス」は、保育事業のほかに「ひとり親支援事業」や「こども宅食事業」、「コミュニティ創出事業」など、子育てを地域で支え合うさまざまな取り組みも行なっています。‟どんな形の家族であっても、笑顔で暮らせる社会“を目指した、このような取り組みが、全国に広がることを願ってやみません。

障害児保育園ヘレン

認定NPO法人フローレンス

 

構成/山津京子

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