夜のスマホいじりで子どもが短足になる!そのワケとは?【子どもの発育の専門家が解説】

子どもの発育と健康の関係を長年研究されている小林正子先生によると、平成7~10年をピークに子どもの足の長さが縮んでいることがわかっています。なぜ子どもの足は短くなっているのでしょうか。その原因と改善法についてお話をうかがいました。

今の子どもたちは「胴長短足」進行中です。その原因はスマホにあり!

2015年(平成27年)を最後に全国的に小学生の座高が計測されなくなりましたが、それまでのデータによると1995~98年(平成7~10年)をピークに、座高は伸びているのに足の長さが徐々に縮んでいることがわかっています。

なぜ2000年前頃から胴長短足化してきたのでしょうか。

その原因は明らか。現代ではズバリ「スマートフォンの夜間使用」です。2000年頃から小学生がゲームをしたり、メールをしたりして、今ではスマホを使うようになり、夜になっても親の制止もきかず使っているという状況になってきました。

スマホからでるブルーライトの恐ろしい弊害

スマートフォンの画面からは、高いエネルギーを持ったブルーライトが放出されています。夜間や就寝前に長時間見続けることで、目から脳を刺激して興奮状態となり、深い睡眠を得られなくなります。この度合いが頻繁になれば、体内時計のリズムを崩し、睡眠障害を起こすと考えられています。

成長ホルモンが出るのは、ぐっすり眠っている夜の12時から1時がピーク。その時間帯に身長や足が伸びるのに、スマホの夜間使用が、それを邪魔しているのです。それが大元の原因になって、朝ごはんを食べない、運動不足になる、さらには頭が痛い、目がまわるといった不定愁訴など、さまざまな弊害を引き起こします。

足が伸びる成長時期は限られています。逃すと二度とやってきません!

もともと日本人は胴長短足のイメージがありますが、戦後、栄養状態が改善してからは、身長がずっと伸びてきました。座高も伸びましたが、足の長さが伸びたことも大きい。ですから日本民族といえども、ちゃんと栄養をとって、テーブルと椅子で骨に負担をかけない生活をすれば、持って生まれた素質として、足は伸びるはずなのです。

メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手は、日本人であっても身長は高く、足も長い。アメリカ人の中に入っても引けをとりません。あれだけ素晴らしい体格の日本人がいるということは、私たち日本人としても誇らしいですよね。
彼もやはり素質を十分に伸ばせた人。身長の伸びる時期に骨に過度な負担をかける練習をさせなかった花巻東高校の佐々木 洋監督のおかげともいえます。

決して胴長短足がいけないわけではありません。問題は、本来足の伸びる時期にわざわざ伸びない生活習慣をして、その可能性をつぶしていることです。
足の伸びる時期というのは限られていますから、その時期を逃すと、伸びる時期は二度とやってこないのです。このことを、保護者のかたはまず知っておいてほしいですね。

背は「足→座高→足」の順に伸びる

では身長の伸びる時期とは、いつなのでしょうか。

個人差がありますが、女の子はだいたい小学校4年生ぐらいから、男の子は5、6年生、中学校1年生ぐらいからという子もいます。

伸び方としては、まず足が伸びて、次に座高が伸びて、最後にまた足が伸びる。期間にすると2~3年で、これを身長スパートといいます。
この最後の足の伸びる時期に、頻繁なスマホの夜間使用をすると、成長ホルモンが十分に得られず、伸びが悪くなってしまいます。ですから身長が伸びきるまでは、スマホの夜間使用はできるだけ控えることが大切です。

1時間以上の使用には、ブルーライトカット対策を

理想的な生活習慣としては、スマホはできるだけ日中に短時間。昼でも夜でもスマホを1時間使っている子は不定愁訴が多いという報告もありますから、健康面からいっても使用は1時間以内、できれば30分ぐらいが理想です。そして小学生なら夜9時には寝かせましょう。

勉強で1時間以上、スマホやタブレットを使う場合は、ブルーライトをカットするメガネをかけるなど対策が必要です。ブルーライトを多く浴びることもまた、夜の睡眠に悪影響を与え、成長ホルモンの分泌を抑制してしまいますから。

正しい生活習慣が身につくのは3歳までが勝負

十分な睡眠とともに健康な発育に欠かせないのが正しい生活習慣です。これは、とにかく3歳までが勝負です。子どもが冷蔵庫や戸棚など、おやつのあるところを知っていて、勝手に開けてとって食べる。いつ食べてもいいという生活習慣が3歳までについてしまうと、直すのが相当大変です。そういう子は必ず肥満になります。肥満については、別の回で詳しく触れたいと思います。

そもそも生活習慣というのは「朝起きる時間」「夜寝る時間」「ごはんを食べる時間」、この3つの定点を決めれば、自然に身につくものです。

子どもに「ダメ」という前に、親自身はどうなのか考えてみる

理想的な生活は、小学生であれば、夜9時に寝かせて、9時間は寝て、6時には起きる。栄養バランスのよいものを食べさせて、食べるときは一人で食べさせないこと。

以前、5000人の中高生を調査したところ、「孤食」の子はキレやすい子が多いことが確認されています。食事は身体面だけでなく、精神面の発育にも大きな影響を及ぼすことを知っておいてほしいですね。

私にも二人の娘がいますが、自分の反省を込めて、やはり子どもは親を見るので、子どもを何とかしようとする前に自分を振り返ることが大切でしょうね。子どもにああしなさい、こうしなさいというぐらいなら先に自分がする。子どもにスマホの夜間使用をやめさせたいなら、自分もやめるということです。

ただ、子どもに「夜スマホを使っていると足が伸びなくなるんだよ」と言うと、けっこう効き目があります。子ども自身もやはり足も身長も伸ばしたいんですね。

胴長短足化の原因には、スマホの夜間使用のほかに「運動のし過ぎ」も関係しますが、「運動のし過ぎ」は座高も足も成長が止まってしまい、身長の伸びそのものがストップしてしまうということがあります。これについては次回、詳しくお話ししたいと思います。

 

教えてくれたのは

女子栄養大学客員教授、女子栄養大学栄養科学研究所客員研究員
小林正子先生

お茶の水女子大学理学部化学科卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。
東京大学教育学部助手、国立公衆衛生院(現 国立保健医療科学院)室長を経て、2007年より女子栄養大学教授。2020年より現職。発育の基礎研究のほか「発育グラフソフト」を開発し、全国の保育園、幼稚園、学校等に無償提供し、成長曲線の活用を促進。発育から子どもの健康を守る重要性を啓発している。著書に『子どもの足はもっと伸びる! 健康でスタイルのよい子が育つ「成長曲線」による新子育てメソッド』(女子栄養大学出版部)」、最新刊に『子どもの異変は「成長曲線」でわかる』(小学館新書)

子どもの発育研究に長年携わってきた小林正子先生が、子どもの健康を守るため、家庭でも「成長曲線」を活用することの重要性を提唱する1冊。

著/小林正子|990円(税込)

子どもの異変は、「成長曲線」のグラフに記録することで早期に発見できると、子どもの発育研究に長年携わってきた小林正子氏は語ります。
子どもの健康を守るため、家庭でも「成長曲線」を活用することの重要性を提唱します。

取材・構成/池田純子  イラスト/まる

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