入園直前! 7つの「これが心配」にベテラン先生が答える|コロナ禍を乗り越えての入園激励ガイド

この春から幼稚園や保育園に入園するめばえっ子もいるはず。集団生活というはじめての経験を前に、心配が絶えないママパパも少なくないですよね。笑顔で園生活を始めるための心構え、準備について知っておきましょう。

完璧に準備を整えておかなくても大丈夫

入園に向けて、「あれもこれもできていないと園生活が大変なのでは?」と、不安をどんどん膨らませてしまうのも、子どもを想う親心があってこそ。ですが、何もかもができている子でないと、園生活がうまくいかないということは絶対にありません。むしろ、今できていない部分を園生活での経験を通じて成長させていくのだと考えてみてください。

また、子育てに関しての悩みがあれば、入園後は親だけで解決する必要はなく、園の保育者と一緒に「ああしてみたら」「こういう声かけもいいかも」と、相談することができます。入園に向けてお子さんがやるべきことは、今を精一杯生きて、心と体が健康であること。今、それができているから園生活が始まるのです。

わが子の成長を認めて自信を高める

入園に向けてぜひやっていただきたいのは、お子さんの「できていないこと」ではなく「今できていること」に目を向けることです。「落ちている物に気づいて拾ってくれた」「ぶつかりそうな物をよけることができた」など、ささいなことであっても、できたことがあったら「すごいね! だから幼稚園に入るんだね」とほめて、入園に向けての自信を高めてほしいのです。

そして、「玄関を出るところまでは機嫌よく連れ出せた」「今日も子どもを元気に育てられた」など、おうちの方自身も「できていること」探しをやってみてください。

親子ともに肩の力を抜いて、これから始まる新しい生活をワクワクと楽しみにしながら、ご家庭ならではの準備を進めてみてください。

入学に向けた 声かけOK・NG例

オススメ〇「~~できたね!さすが、もうすぐ幼稚園」

子どもができていることを見つけたら、すかさず「すごいね」とほめるとともに、「さすがもうすぐ幼稚園だね」とつなげることで、入園に向けての自信を高めていくことができます。こうした声かけを通じて、おうちの方自身も「この子は大丈夫!」と思えるようになるのではないでしょうか。

NG×「~~できないと幼稚園で笑われちゃうよ」

トイレに関することや、食事に関することなど、「できてほしいこと」に失敗すると、ついこういった声かけをしてしまうと思います。「できないと笑われる」という価値観を伝えることは、子ども自身がほかの子の失敗を笑う子になってしまう可能性も。「大丈夫だよ」と安心させてあげることが大切です。

入園前の「これが心配」どうしたら?

園生活が始まるにあたって「これができていないと…」と考えがちな生活習慣にまつわるあれこれ。入園前に家庭でやっておくとよいことや、入園に向けた考え方はあるのでしょうか?

これが心配 日常編①早寝早起き

朝起きるのが苦手で、起きた後もぼんやりしています。毎朝登園時刻に間に合うでしょうか?

園生活が始まることで整っていく部分も

早寝早起きは、園生活のためだけでなく、子どもが活発に活動するためにぜひ身に付けたいものです。とはいえ、叱りながら寝かせたり起こしたりするのは親子ともつらいもの。入園がターニングポイントとなって、運動量が増えて早く寝られるようになることもあります。どうしたら気持ちよく起きられるかを工夫しながら、入園後、夏くらいまでに家族全員が一丸となってリズムを整えるのを目指すといいのではないでしょうか。

これが心配 日常編②トイレ

おむつが完全に外れていません。トイレに行きたいと保育者に伝えられるかも心配です。

本人が安心できるような環境づくりを優先して

3歳入園の場合でも、まだおむつが外れていない子が3分の1程度はいると聞きます。また、家ではトイレでできるけれど、本人の安心のためにおむつで登園するお子さんも。今はほとんどの園が、それぞれに適した形に応じてくれるのではと思います。「おむつが外れないと入園できない!」ではなく、「あなたが安心したときにパンツにすればいいよ」ということを伝えてあげてください。慣れない園のトイレが心配なら、入園前に見学させてもらってもいいですね。

これが心配 日常編③食事

好き嫌いが多く、食べるのも遅いため、みんなと一緒に食事ができないかもしれません。

食べることが楽しいと思える経験を重ねて

いろいろ食べられるものがあったほうがいいと考えがちですが、「白いお米とからあげなら食べられます」というお子さんも珍しくありません。少しずつ食べられるものを増やすためにも、大切なことは「食事は楽しいもの」だとお子さんが感じていることだと思います。そのためにお願いしたいのは、親子一緒に食卓を囲み、「おいしいね」と話しながら食事をする経験を重ねていくことです。友達と一緒だと食が進む子も多いので、あまり気負わなくても大丈夫です。

これが心配日常編④身じたく

家だとつい親が何でもしてしまい、ひとりで衣服や靴の着脱ができるか気がかりです。

脱いだり着たりしやすい服を用意して

おうちの方が着せたいものもあると思うのですが、まずは伸縮性のある素材だったり、ボタンが留めやすかったり、子どもが着脱しやすい衣類を探して、数枚準備しておくといいのではないでしょうか。すると「自分でやってみる」という気持ちにもつながっていきます。時には子どもが「これを着たい!」と園に着ていくにはふさわしくないようなものを選ぶこともあるかもしれません。でも、それで本人のテンションがあがって登園できるなら、いいと思います。

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これが心配 集団生活編①コミュニケーション

言葉が出るのがゆっくり。園であいさつされてもすぐ返事ができるのか心配です。

親と保育者のコミュニケーションを大切に

言葉は園生活を経験することで急速に伸びていくもののひとつです。まだあいさつができないなら、おうちの方が代わりに「おはようございます」と言うことで、子どもは「こうするものなんだ」と学んでいきます。保育者とのコミュニケーションも、最初はおうちの方が代弁者となって「家ではこんなことをしています」「園でのこの遊びが楽しかったようです」と伝える形に。保護者と保育者の関係が良好だと、子どもも安心して園生活を送れます。

これが心配 集団生活編②友達関係

マイペースですぐにかんしゃくを起こします。友達と仲良くできるのでしょうか?

園生活を通じて友達とのかかわりも学びます

同年代の友達との関係を学ぶためにこそ、園があります。大人がかかわると、ついもめごとが起きないようにと口出しをしてしまいますが、時にはケンカもしながら、葛藤を通じて、友達と良い関係を続けるためにどうしたらいいのかを子どもは学んでいくのです。無理に子どもの性格を「変えよう」と思わなくて構いません。おうちの方は「友達と仲良く遊べるようになるといいね」と伝えて見守ってください。

これが心配 集団生活編③発達の進度

まわりの友達と発達の差を比べてしまいそう。どんな心持ちでいれば?

「差」ではなく、わが子にしかない「違い」に目を向けて

2、3歳のころは月齢の差も大きいので、同じクラスの中にもいろいろな子がいる状態です。どの子もその子らしく育っていっているので、まわりの子がどうなのかではなく、ぜひお子さんのありのままを受け止めて過ごしていただけたらと思います。また、お父さんやお母さんも、ほかの人と自分を比べてしまうことがあるでしょう。どうか「私は私」と呪文のように唱えてみてください。親も子も「差」ではなく「違い」であり「個性」なのですから。

コロナ禍を乗り越えて入園する方へ

親子でゆっくり過ごした時間はかけがえのないものです

コロナ禍の約2年間、同年代のお子さんとかかわるような機会が少なかったことが、園生活に影響があるのではと心配する声を聞くことがあります。ですが、これだけ濃密な親子の時間を過ごした方たちは、集団生活が始まったときに、上手に離れることができるのではと思います。家庭でゆっくりと過ごしたお子さんにとって、同年代の子どもとの遊びはとても新鮮に映るでしょう。親子で過ごしたことを安心の基盤として、のびのびと外に出ていくことができるはずです。おうちの方も、入園後はお子さんと離れる時間を楽しんでください。仕事などで忙しい方もいると思いますが、時間に余裕があれば、新しく挑戦したいことを考えておいてもいいかもしれませんね。

教えてくれたのは

宮里暁美先生
お茶大アカデミック・プロダクション特任教授(保育実践研究)。文京区立お茶の水女子大学こども園元園長。30年以上幼児教育・保育の現場、保育者の養成に携わる。著書に『耳をすまして目をこらす~いろとりどりの子どものきもち~』(赤ちゃんとママ社)など。

『めばえ』2022年3月号 イラスト/わたいしおり 構成/童夢

 

親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。

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再構成/HugKum編集部

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