【子どものチック】入園入学・進級シーズンは要注意!親はとにかく「大丈夫だよ」と安心させてあげて

子どものチックは年少ぐらいから見られ、とくに入園、入学、進級シーズンなど環境が大きく変わるときは注意が必要です。小児神経の専門家で、東邦大学医療センター 佐倉病院小児科教授 金村英秋先生に、子どものチックの特徴や受診の目安などについて教えてもらいました。

子どものチックは4人に1人。早いと年少から症状が出ることも

子どものチックは、軽症も含めると4人に1人ぐらいの割合で見られるという調査結果もあり、早いと年少ぐらいから発症します。

4人1人というと「そんなにいるの?」と驚くお母さんやお父さんもいるでしょうが、なかには軽い咳払いを繰り返す程度で、チックと思われていない場合もあります。

チックには「単純運動チック」「複雑運動チック」「単純音声チック」「複雑音声チック」の4タイプがあり、主な症状は次の通りです。

【単純運動チック】まばたき、顔をしかめる、肩をピクピク動かすなど

【複雑運動チック】蹴るような動作をする、ジャンプをする、ものを叩くなど

【単純音声チック】「アッ」など声を出す、咳払いをする、鼻を鳴らすなど

【複雑音声チック】ほかの人が言ったことを繰り返す、その場にふさわしくないことを突然言うなど

チックは、上記のような動きや音声を突発的に繰り返すのが特徴です。1つの動き(音声)だけのときもありますし、運動と音声を併せ持ち同時に症状が出ることもあります。一般的には1年ぐらいでおさまります。

原因は、過度なストレスや緊張。新年度など大きく環境が変わるときは要注意。

長時間のゲームも発症リスクを高めます

チックの原因は、ひと昔前は心の問題と言われていました。しかし研究が進み、近年は脳内ホルモン(ドーパミン)のバランスが関係していることがわかっています。ドーパミンは神経伝達物質の1つで、幸福感などの快さを高める役割を担います。しかし過度なストレスや緊張などで、脳内ホルモンのバランスが崩れると、チックの症状が出る子もいます。

とくに入園、入学、進級シーズンなど環境が大きく変わるときは、ストレスを感じやすいので注意が必要です。

長時間のゲームや動画視聴にも気をつけて

また、チックは脳が興奮状態になると発症しやすいです。そのためスマホやタブレットで、長時間動画を見たり、ゲームをしたりすると発症リスクは高まります。

子どもが気にしていたり、半年以上症状が続く場合は小児科へ

軽いチックだと「少し様子を見よう」と思うお母さん、お父さんもいますが、次の2つのうち、1つでも該当したら小児科を受診しましょう。とくに子ども自身、チックを気にしている場合は、放っておくと友だちと遊ばなくなったり、学校を休みがちになったりすることもあります。

【チックの受診の目安】

□子ども自身、チックを気にしている

□半年以上、チックが続いている

 

子どものチックの治療は、基本的には薬は処方しません。チックの説明や環境調整の提案などを行ったりします。医師から話を聞くことで安心して、症状が次第にやわらぐ子もいますし、親もどんな対応をすればいいのかがわかります。

また診察のときは、チックの症状を動画で撮影して見せると診断の助けになりますが、子どもが嫌がるときは無理に撮影しないほうがいいです。

チックを気にしているときは、「大丈夫だよ」と安心させて

子どもにチックが出ると、なかには「顔をしかめないの!」と注意したり、「まばたきしているよ!」と指摘するお母さんやお父さんもいますが、これは逆効果です。

子どもが気にしていたら「大丈夫だよ」と言って安心させてあげましょう。ただし「そのうち治るよ」と励ますのは、お勧めしません。なかなか症状がおさまらず「ウソをつかれた」と親に不信感を抱くこともあります。

友だちにからかわれたりしたときは、担任の先生に相談してください。「親は味方!」「親は一番の理解者である」という安心感が、チックの症状をやわらげます。

チックは再発することも。しかし神経質になり過ぎるのは考えもの

 

チックは一度、症状がおさまっても再発することがあります。とくに園や学校行事、習い事の発表会、中学受験などで、過剰にストレスやプレッシャーがかかると再発しやすいです。しかし学校行事や発表会などは、子どもにとっては必要な経験です。成長の糧になります。親子で話し合ったり、先生や医師と相談したりしながら、可能な範囲で挑戦させてください。こうしたことを繰り返すことで、子ども自身「これ以上は、無理しないほうがいい」とさじ加減がわかるようになっていきます。

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記事監修

金村英秋先生|東邦大学医療センター 佐倉病院小児科教授
専門は小児神経、小児科全般。日本小児科学会専門医、日本小児神経学会小児神経専門医、日本てんかん学会てんかん専門医・指導医、日本小児神経学会評議員。

取材・構成/麻生珠恵

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