小学校入学が心配…「園でサポートを受けている子」は、早めの就学相談が頼りに

「うちの子、園では特別なサポートを受けているけれど、小学校ではどうなるんだろう」と考えている方、ぜひ「就学相談」を考えてみてください。お子さんに最も適した就学先を考えるための相談です。 通常学級の1年生担任を何度も経験した筆者が出会った、お子さん・保護者の方の事例もご紹介します。

「就学相談」って何について相談するの?

小学校の入学にあたり、「幼稚園ではサポートの先生がついていてくれている」「小学校では何か支援が受けられるのか知りたい」という方、「就学相談」はご存知ですか?

就学相談とは、小学校入学にあたり、就学先を決める相談をする場です。
具体的には、「通常学級、特別支援学級、特別支援学校」のどこに行くか、または通級を選択するか、子ども・保護者・教育委員会で話し合い、決めていきます。
通級とは、知的な能力に遅れはないけれど特別な支援を必要とするお子さんが、通常学級にいながら週に数回のみ専門スタッフから個別指導・グループ指導を受けられるシステムです。

就学先を決めるには、必要に応じて、医療・心理学・発達の専門家に見てもらったり、意見をもらったりして、お子さんについての情報を集めます。その上で、お子さんに最も適した就学先を決めるのです。

文部科学省 就学相談・就学生決定の在り方について

 相談から入学までの流れは

教育委員会に相談を申し込む

保護者の方から「就学相談を受けたい」と申し込みます。
3歳児健診のような、自治体からの通知はありません。申し込みの方法は主に2パターンです。
教育委員会に直接連絡するか、幼稚園・保育園の先生を通じて申し込みます

面談をする

教育委員会のスタッフと面談をします。お子さんの成育歴や特徴、希望の進学先を中心に話すことが多いです。
就学に向けて知りたいことは、ここで質問しておくと良いでしょう。

心理検査・行動観察・医師による診断などを行う

心理士など専門のスタッフがお子さんの発達検査や心理検査を実施したり、行動観察を行い、お子さんの様子を客観的に捉えます。必要がある場合は、幼稚園・保育園にスタッフが出向いて行動観察をすることもあります。医療的なケアが必要と思われる場合は、医師が診断をすることもあります。

学校見学・体験をする

保護者の方が就学予定の学校(支援学校・支援学級・通級指導教室)を見学したり、お子さんも一緒に行き学校生活を体験したりします。
どんな場所だとお子さんに合った支援を受けられるか、考えてみましょう。

就学支援委員会での話し合い

教育委員会の職員、医療や心理専門のスタッフのみで、お子さんの就学先について審議します。
成育歴・面談の内容・医師や心理士の所見などの情報から、最も適していると思われる就学先について話し合います。

最終面談

就学支援委員会で話し合われた結果を保護者の方に報告し、お子さん・保護者の方の意見をうかがいながら、就学先を決めます。

就学通知

決定した就学先について、書面で通知されます。多くの自治体では、1月ごろに通知が送られます。

東京都教育委員会「就学相談リーフレット」

申込みは早めに

2023年4月に入学予定のお子さんなら、就学相談の締め切りはもう間近です。
11月ごろには締め切ってしまう自治体もありますので、検討されている方は早めに申し込みましょう。

小学校の教員から見た「就学相談」のメリットは

就学相談のメリットは、小学校や先生が事前にお子さんについて理解し、配慮できることにあります。

①児童理解がスムーズ

先生が子どもたちについて理解を深めることを、「児童理解」といいます。
入学してからの毎日で少しずつ、一人ひとりのお子さんについて理解を深めていきます。

 就学相談を受けていると、入学前にお子さんについての配慮事項を知ることができます
体調面・コミュニケーション時の配慮など、入学式の日から先生に知っておいてほしいことがある場合は、就学相談を受けておくと安心です。

②クラス分けで配慮できる

1年生のクラスを考えるのは主に、3月の時点でその学校にいる先生たちです。
低学年の先生や養護教諭(保健室の先生)が中心となって相談し、校長先生や副校長先生も加わって最終決定します。

クラス分けのときには、男女の人数を均等にし、配慮の必要なお子さんの数に偏りが出ないように分けていきます。
そのときに必要なのが、「保護者の方からいただいた情報」「幼稚園・保育園からの申し送り」そして「教育委員会からの情報」です。
就学相談で話し合われた結果は「教育委員会からの情報」として、学校に知らされます。

 集団生活で個別の配慮が必要あると事前に分かっていれば、そのようなお子さんが偏らないようにクラス分けができます。 

③入学当初から支援ができる

入学式の日から、子どもたちは新しい友だち、新しい先生と過ごすことになります。
先生一人に対して、1年生は25人~30人程度が一般的です。出会ったばかりの子どもたちですから、先生もまだお子さんの様子がつかめていません。
就学支援を受けた1年生の担任の先生は、入学前に「就学相談を受けたこと」を知ることができます。

【実録】「就学支援を受けてよかった!」「事前に情報があれば・・・」3つの事例

小学1年生を何度も担任してきた筆者が出会ったお子さん・おうちの方についてご紹介します。
入学して数年が経ってからおうちの方にお話をうかがい、「就学支援を受けておいてよかった」「受けたほうがよかったかも」と話してくださった3つの事例です。

①就学支援での話し合いが、担任の先生の支援につながった

3歳ごろから専門機関での支援を受けていたAくん。おうちの方によると、ご家庭での日常生活に支障はないものの、集団生活では「他の子とちょっと違うな」と感じることが多かったようでした。
おうちの方は「小学校では通常学級でやっていけるのか心配…」と感じており、就学相談を受けることにしました。心理検査の結果、IQがとても高いこと、思考力が高く先々のことを考えすぎてしまって不安になりやすいことが分かりました。

私はAくんが1年生のときの担任となり、入学前にそのような情報を把握することができました。
あいまいな情報では、Aくんは不安になってしまうことが予想されたので、入学直後から、その日の予定を具体的に示して見通しを持たせるようにしました。

また、クラスメイトの何気ない言葉に困惑する様子が見られたときには、「~な出来事があったから、○○と言っているんだと思うよ」とクラスメイトの気持ちを代弁してあげると、「そういう意味だったのか」と安心できたようでした

②関わる大人みんなで、“今のBちゃんにちょうどよい支援”を考えながら接することができた

1歳半健診で発達のゆっくりさが分かり、ずっと療育に通っていたBちゃん。
就学相談では、「心理検査の結果だと、知的な遅れが見られるため、特別支援学校が適している」と言われたそうです。
それに対しておうちの方は、「子どもが大人になったとき、障害のない方たちと関わる機会のほうが圧倒的に多いはず。学習はできないかもしれないけれど、日常生活はできる。できるだけ通常学級の子と生活を共にさせたいので、特別支援学校ではなく、特別支援学級でもなく、通常学級に入学させたい」という希望をお持ちでした。
そこで、検査結果・おうちの方の意向を踏まえて、「特別支援学級が設置されている学校の通常学級」に入学することとなりました。

私はBちゃんの担任を受け持つことになりました。入学式の前に、職員全員でBちゃんについて情報共有し、迎えることにしました。入学後、やはり学習面は難しさがありましたが、その中でもできることを支援していきました。
時には、特別支援学級の先生に、支援のアドバイスやBちゃんに適した教材をシェアしてもらいました。また、年に1度はお家の方と面談をし、通常学級が適しているか、Bちゃんにとって最も実りが大きい居場所はどこかを話し合いながら過ごすことができました。
4年生になるとき特別支援学級に移り、可能な範囲で通常学級の授業も受ける形をとることにしました。

③あえて情報を共有せずに入学したCくんの場合は

入学式のあと「ちょっと個性的かもしれませんが、よろしくお願いします」と声をかけてくれたCくんのお母さん。
その言葉が気になってはいましたが、保育園からの情報には特に気になるものがなかったので、そのまま学校生活をスタートしました。
入学して1週間くらいは「少しマイペースかな?」と感じましたが、特に困った様子もなく過ごしていました。
しかし2週目、Cくんはある授業の時間に突然大きな声を上げ、教室を出て行ってしまったのです。
それから、授業の内容に少しでも「難しい、やりたくない」と感じると、教室を出て行ったり、物を投げたりするようになりました。

お家の方に様子を伝えると、保育園の頃からそのような様子があり、保育園では先生がほぼマンツーマンでそばについてくれていたとのことでした。
よくうかがってみると、「小学校でゼロからのスタートなら、みんなと同じようにできるんじゃないかと思った」「保育園の先生にも、小学校には特に何も伝えないでほしいとお願いした」と教えてくれました。

自分の気持ちを言葉で表現するのが苦手なCくん。自分の思うようにいかないときには「大声を出す・投げる・逃げる」という方法をとることが増えてしまいました。また、そんな方法をとってしまう自分に対して、自己肯定感がどんどん下がっていきました。

その後も様々な支援を行い、1日教室にいられるようになり、「わからない」「どうしたらいいの?」と言葉で表現できるようになったのは、4年生になったころでした。
入学時に少しでも情報があれば、違った支援ができたのではないかと今でも思っています。

お子さんの発達が心配なら「就学相談」を

本当は難しさや苦しさを抱えているのに、必要な支援を受けられないまま長い期間が過ぎてしまうと、自信を失ったり、支援を受けることに抵抗感をもったりする子もいます。
1年生の担任としては、個別の支援を必要とするお子さんについて、事前に情報があると様々なサポートの仕方を模索することができます。

「通常のクラスでついていけるのかな?」「園では特別なサポートを受けているけれど、学校ではどうなるんだろう」と考えている方は、ぜひ「就学相談」を検討してみましょう。
「うちの子くらいでも相談に行くものなのかな…」と悩むときは、まず幼稚園・保育園の先生に相談してみてください。

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文・構成/yurinako

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