第71回カンヌ国際映画祭最高賞のパルム・ドール受賞という快挙を成し遂げた是枝裕和監督作『万引き家族』が、第91回米アカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされたことはテレビでも報じられ、話題を呼びました。授賞式は、米国時間2月24日(日)(日本時間2月25日)に開催されますが、映画界はかなり色めきだっています。
公開から8か月目を迎え、動員数374万人、興行収入45億を突破(2月20日時点)という特大ヒットとなり、2月8日より、凱旋上映もスタート。そこで、いまや国民的映画となった『万引き家族』のすごさを改めて紹介したいと思います。
受賞すれば『おくりびと』以来、10年ぶりの快挙!
映画賞の審査のやり方はいろいろありますが、米アカデミー賞は、映画産業に貢献したアカデミー会員の投票により選出される映画賞となります。つまりプロからリスペクトされ、選ばれる栄誉ということです。
外国語映画賞の作品は、まずアメリカ以外の国が、規定の期間に自国で公開される映画の中で選りすぐりの1本を選出してエントリーします。『万引き家族』もいわば、日本の代表として選ばれた作品なのです。そうして各国から集められた作品群の中で、米アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされるのはたった5本です。
日本映画がノミネートされたのは、滝田洋二郎監督作『おくりびと』(08)以来で10年ぶりの快挙となり、当然、受賞すれば『おくりびと』以来の偉業となります。
日本だけではなく、全世界でも記録的に大ヒット
『万引き家族』、英題『Shoplifters』ですが、米アカデミー賞にノミネートされた時点で、カンヌ国際映画祭のパルム・ドール受賞の他、66の海外映画賞の各部門で、76ノミネート、36の受賞歴を誇っています。(国内賞除く)
たとえば直近のものでいくと、イギリスで最も権威ある映画賞とされる第72回英国アカデミー賞でも、外国語映画賞にノミネートされました。残念ながら受賞は逃したものの、日本映画でノミネートされたのは、第57回の宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』(宮崎駿監督)以来15年ぶりだったのです。
また、権威あるパルム・ドール受賞で箔が付いたせいか、各国で上映されて大ヒットしています。中国では実写邦画として歴代1位の興収をマーク!フランス・パリでは初登場1位、全米では興行収入300万ドルを越え、2018年公開の邦画実写および外国語映画でもナンバー1の興収を挙げました。
先日行われたティーチインイベントに登壇した是枝監督は、印象に残っている海外での反応について「自国と比べてみても、どこにでもある問題だと感じてもらえたようで、だからこそ、世界で広がっているのかなと。役者についても良い評価をいただき、役者のアンサブル賞というのもいくつかいただいているのですが、それがすごく嬉しいです」と笑顔でコメントされていたのが印象的でした。
いよいよ2月25日に米アカデミー賞の授賞式で、その結果が発表されます。一番の強豪は、作品賞ほか最多10部門にノミネートされたNetflix配信作品の『ROMA/ローマ』だと、是枝監督自身も言っていますが、世界中で愛されている『万引き家族』だけに、オスカーの女神が微笑む可能性は残されていると思います。まだ、未見の方は、ぜひ凱旋上映をごらんください!
原案・監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、佐々木みゆ、樹木希林…ほか
公式HP:gaga.ne.jp/manbiki-kazoku
文/山崎伸子