【モラハラ相談が増加中】〝モラハラ離婚ならこの人〟と呼ばれる女性弁護士が、人生を変えるきっかけになった出来事とは

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「その女性が初めて法律相談にやってきた時、離婚の相談に来る人のなかでも特に疲れ果てているように見えました。聞けば、相談は私のところで10軒目で・・・・」
――弁護士歴17年、これまでに2000件を超える離婚・恋愛トラブルを扱ってきた堀井亜生弁護士は、自身のモラハラへの認識を大きく変えたある女性との出会いをそう振り返ります。



モラハラでは離婚できない!?

不倫や暴力に代わり、年々増え続ける「モラハラ離婚」。しかし、ネットで検索をかけると、モラハラでは離婚できない、と出てくる場合もあります。では堀井弁護士の元を訪れる相談者は、どうやって夫と別れられたのでしょうか。そして、堀井弁護士の人生を変えるきっかけとなった案件とは?

モラハラに苦しむ妻とその実態、勝つために弁護士がとった戦略、モラハラ夫が生まれた背景に迫った『モラハラ夫と食洗機 弁護士が教える15の離婚事例と戦い方』(堀井亜生 著)から、著者の思いのこめられた「はじめに」を公開します。

「モラハラ」への認識が一変した、ある女性からの相談

モラルハラスメント、略してモラハラ。近年よく耳にするようになった言葉だと思います。正確な定義はまだありませんが、本書でいうモラハラは、相手を追い詰めるほどの精神的暴力を指します。

令和2年度の司法統計によると、離婚調停を申し立てた女性の動機の1位は「性格が合わない」、2位が「生活費を渡さない」、そして3位が「精神的に虐待する」。2位と3位はまさにモラハラの特徴で、不倫や暴力に代わって年々増え続けています

まんが/ゆむい

私が弁護士になったのは17年前。当時、離婚の主流は「不倫」「借金」「暴力」で、モラハラは単なる「性格の不一致」と片付けられ、軽視されていた時代でした。私自身も、モラハラとは夫のお小言ぐらいのことだろうと考えて、離婚を勝ち取るために、探偵の証拠、けがの写真や診断書といったわかりやすい証拠を集めていました。しかし、ある時担当した案件をきっかけに、その認識は大きく変わることになります。

3年間にわたり毎日夫から送られた嫌がらせメール

その女性が初めて法律相談にやってきた時、離婚の相談に来る人のなかでも特に疲れ果てているように見えました。聞けば、相談は私のところで10軒目。最初は役所で紹介された女性のための相談に行き、行政の無料相談、CMをしている法律事務所、地元の弁護士、離婚に強い弁護士など……。

その全てで「あなたのケースは離婚できない」と言われ、最後はカウンセラーや、占いにも頼ったということです。
どうして離婚したいのですかと私が尋ねると、妻は「夫から虐待を受けているんです」と答えます。しかし夫とは会話はなく、メールをしているのみ。おそらく、この時点で離婚などできないと突き返されたのです。

妻から携帯を預かると、そこには3年間にわたって毎日夫から送られ続けた膨大な数の嫌がらせメールがありました。画面全体を埋め尽くす「お前を殺す」の文字、「毎日死ねばいいと思っている」「何もできない無能なゴミ人間」といった目を覆いたくなるようなひどい言葉が、毎日毎日、大量に送られていました。

これで離婚できないのはおかしい。そう考えた私は、依頼を引き受けますと妻に連絡を入れました。

A4用紙で数百枚の資料を提出

そこからもさまざまな苦労がありました。書面に「●月●日、夫は妻に●●というメールを送り精神的に虐待をした」と書くだけでは、夫の異常さや妻が受けた恐怖は伝わらない。そこで、3年間の全てのメールを証拠として提出したのです。A4用紙で数百枚。一時期はこの裁判の記録で事務所の本棚が埋まりました。

夫は「妻にも問題がある」と最後まで離婚に抵抗しましたが、裁判官は全ての証拠に目を通してくれて、激しい言動、執拗な脅迫などから修復は不可能として、夫婦関係の破綻が認定され、離婚が認められました。

これを受けて私は、実態がつかみにくいモラハラでも、諦めずに立証することで離婚はできるのだと知りました。

まんが/ゆむい

モラハラの案件は年を追うごとに増加

それと同時に、この経験を弁護士として生かしていきたいと考えるようになりました。テレビや雑誌などでモラハラ離婚について発信すると、離婚を諦めていた方からの相談が多く来るようになりました。私はこれまで2000件を超える離婚や恋愛トラブルの相談を受けてきましたが、モラハラの案件は年を追うごとに増加しています。

その一番の理由は、スマートフォンとLINEの普及です。夫婦の日常的なやりとりが簡単に記録できるようになったので、家庭内で起きているモラハラを、客観的・立体的に証明しやすくなりました。

もう一つの理由は、コロナ禍のステイホーム期間です。会社に行けず、飲みにも行けない。やり場のない苛立ちを家族にぶつける夫が急増しました。緊急事態宣言が明けた夏以降、離婚相談の多くは「モラハラで離婚したい」というものでした。

モラハラ夫には傾向がある

こうして多くの相談を受ける中で、モラハラ夫にはいくつかの傾向があることがわかってきました。夫の言動だけでなく、職業や経歴、外見すら似ている場合もありました。

本書では、夫によるモラハラを15の事例として紹介していますが、これは15人の夫の事例ではありません。たくさんの数のモラハラ夫の事例を、類似点をもとに15種類にまとめたものです。妻が別れを決意した理由と具体的な希望、それらを踏まえた私の戦略を解説し、なぜそのようなモラハラ夫が生まれてしまったかを分析しています。

まんが/ゆむい

モラハラ夫との離別のゴールは人によって違っていて、離婚がゴールとは限りません。本書の事例には、別居でひとまずの解決となったケースもありますが、それも含めて、書名は〝離婚事例〟としています。また、妻のモラハラに悩む夫からの相談も多く受けていますが、本書ではモラハラ夫に事例を絞っています。

統計を見ても、不倫や暴力による離婚は減り続け、代わりにモラハラ離婚が増加の一途をたどっています。それなのに、実務では、モラハラを軽視する傾向がいまだに続いています。一つ一つの事例を見ると、とても壮絶で、これで離婚できないはずがないと思うものが数多くあるのに、離婚を諦めている妻がたくさんいるのです。

一度しかない人生を、自分で考えて生きてほしい

モラハラでも離婚はできます。絶対に離婚できない、夫から離れられないということはありません。それを伝えるべく、本書を執筆しました。
モラハラで悩んでいる女性には、あなただけではないこと、つらいなら離別の道は必ず見つかること。そして周囲の人たちやモラハラに関わる専門家には、モラハラと聞いても軽くとらえずに事実関係を聞き取れば、これだけのことが出てくる可能性もあること。

本書を読んだ皆さんにとってモラハラを考えるきっかけになればと思っています。といっても、私は堅苦しい話が得意ではないので、できるだけわかりやすくライトな形でお伝えします。

ちなみに、皆さんが気になっているであろう、タイトルにあるモラハラ夫と食洗機の関係は、本書をお読みいただければわかります
ありがたいことに、『夫の扶養からぬけだしたい』『親になったの私だけ!?』でモラハラまんが界に新風を巻き起こしたまんが家のゆむいさんが、本書の事例をもとに、新たな作品を執筆してくださいました。私が戦ったモラハラ夫たちの特徴や怖さ、そして妻の不安や恐怖心がリアルに描かれています。

離婚や別居を積極的に勧める意図はありません。とはいえ、モラハラに苦しみながら一生我慢するしかないと諦めてしまうこともお勧めしません。

一度しかない人生を、自分で考えて生きてほしい。本書が、モラハラで悩む方の一助となることを願っています。

記事監修

堀井亜生(ほりい・あおい)|弁護士
北海道札幌市出身、中央大学法学部卒。堀井亜生法律事務所代表。第一東京弁護士会所属。
離婚問題に特に詳しく、取り扱った離婚事例は2000件超。豊富な経験と事例分析をもとに多くの案件を解決へ導いており、男女問わず全国からの依頼を受けている。また、相続問題、医療問題にも詳しい。
「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)をはじめ、テレビやラジオへの出演も多数。執筆活動も精力的に行っており、著書に『ブラック彼氏』(毎日新聞出版)などがある。

 

堀井亜生/著|小学館|1,430円

3時間を超える説教、一瞬の休憩も許されない家事地獄、エアコン禁止で死の恐怖に襲われた夏、夢見た新居はなぜか「空っぽ」………こんな夫からのモラハラ事例が、本書には15例も登場します。そして
・妻が別れを決意した〔モラハラの実態〕と具体的な希望、
・それらを踏まえた〔別れるための戦略〕、
・モラハラ夫が生まれてしまった理由や背景を探る〔分析〕
――が、2000件を超える離婚・恋愛トラブルを扱ってきた弁護士だからこその視点と説得力で語られます。

文・構成/小学館出版局生活編集室

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