目からウロコの「視覚障害者あるある」
シンガーソングライターである、栗山龍太さん。小学校5年生のときに視力を失い全盲となります。栗山さんがともに過ごす盲導犬「アンジー」との生活は、ユーモラスで愛情たっぷり。そんなふたり(ひとりと1匹)の生活が本になりました。その名も『見えないボクと盲導犬アンジーの 目もあてられない日々』。
タイトルからしてユーモアにあふれた本には、「視覚障害者あるある」と盲導犬アンジーとの日々が、イラストレーター・エイイチさんのコミック&エッセイでつづられています。クスっと笑って「なるほど!」と実感できる厳選エピソードをご紹介します。
あるある1:人間のお尻の幅が、盲導犬にはわからない?
空いている座席を上手に見つけ、教えてくれるアンジー。ところが座れる幅がわからないため、時には狭いすき間にお腹をへこませて座ることも……。
「アンジーよ、君のお尻と僕のお尻の大きさははぜんぜん違うからね。」とお嘆きの栗山さんが微笑ましい!
あるある2:「並ぶ」ということが盲導犬にはわからない?
コロナ禍でより重要になった間隔空け。目の見えない栗山さんにとって、前の人との距離を上手にキープするのは難しいことです。アンジーにも並ぶという概念がありません。なので、前に進んでいるのがわからないのが「行列あるある」だそうです。
目の見えない方が列に並ばれていたら、進んでいますよ、とお伝えできるようになりたいですね。
あるある3:自分の背丈より高い位置の障害物については・・・
盲導犬は高いところの障害物を認識する訓練もしてきているそうなのですが、アンジーはちょっぴり苦手な様子。冷たい街路樹に「ばさっ」と突っ込んでしまい、洋服まで濡れてしまうこともあるんだとか。アンジーの表情を実際に見てみたいですね♪
あるある4:暗闇はこわくない!
停電になっても栗山さんはへっちゃら。とはいえ、真っ暗な部屋に人がいるという状況は家族にびっくりされるため、消し忘れならぬ「つけ忘れ」に気をつけているんだそうですよ。
そしておばけ屋敷では……無敵状態に!おばけも暗闇も関係なく進むお父さんの姿、お子さんたちにはさぞたくましく映ったことでしょう。
あるある5:常連店が家族にバレる・・・
鋭い嗅覚を持つアンジー。一度行ったお店はかなりの確率で覚えているそうです。ましてやよく行く居酒屋さんなんてばっちり!ということで、家族に「どうやら隠し事はできません」という栗山さん。
アンジーの先回りの気遣いと学習能力にカンパイするしかない!?
あるある6:エレベーターから出てきた人はドッキリ!
栗山さんがエレベーターに乗るとき、ドアの開く音で到着を判断。遠くに立ってしまうと全くわからないので、基本的にエレベーターの近くにスタンバイしているそうです。
目の不自由な方がいたら、エレベーターの直近エリアはおゆずりしたいところですね!
あるある7:声だけで判別が難しいことも・・・
「名前を言って~!」。声を掛けられたときのあるあるですが、栗山さんの頭の中はフル回転! 必死に脳内検索してもわからないままなんてこともあるのだとか。
やっぱり、「どなたですか」が聞きづらいのは誰しも共通なんですね……。
あるある8:直射日光は盲導犬もつらい!
夏の待ち合わせはつらいもの。アスファルトに近い犬のアンジーにとって、夏の日向は危険な場所になり得ます。栗山さんいわく、体感温度だけだと日向と日陰の違いがわかりにくいので、声をかけてもらうと助かるとのことです。
ちょっとしたことでも助けになれるんですね。今年の夏からさっそく実践してみようと思います。
子育て中の親として。栗山さんからのメッセージ
家族と一緒に盲導犬と暮らす栗山さん。買い物中にんじんのコーナーに案内したと見せかけてちゃっかりアイスを握らせるなど、同書にはやんちゃな2人の息子さんのエピソードも盛りだくさんです。
そんな子育て中のパパでもある栗山さんから、HugKum読者の皆さんに特別メッセージをいただきました。
僕たちの子育ては、ご飯のあげ方から、お風呂の入れ方まで失敗の繰り返しでした。でもそれこそ親子で一緒に笑える素敵な思い出になるのだと思います。
うちの子もまだまだ成長段階。子育て真っ最中です。時には親の思うようにいかなくて……。怒って、反省、日々その繰り返しです。みなさんにアドバイスできるような立派な親ではないかもしれませんが、それでもいいのでは?と思います。
僕も、子どもに教えられながら親でいさせてもらっているのだから。是非みんなでこの子育て時代を深刻に悩まず親子で一緒にのりきるつもりで笑いに変えていきませんか。
子どもは物事をプラスに変えることが得意な生き物だと思いますので。
コロナ禍で思わぬ苦労に見舞われながら、常にアンジーと「目もあてられない日々」を楽しんでいる栗山さん。その姿にはきっと勇気をもらえるはず!
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全盲の教師であり、シンガーソングライターでもある著者(栗山龍太)と盲導犬アンジーの日常を綴るコミックエッセイ。「出不精な盲導犬もいる」「盲導犬と間違えて人の頭をなでてしまった!」「自動販売機はロシアンルーレット」「見えない僕は、停電の暗闇では無敵になる」等々、著者と盲導犬「二人」の身の回りに起きる日常の出来事を、ユーモラスなマンガとエッセイで面白く、ときにちょっぴり悲しく描きます。大人から子どもまで楽しめます。
構成・文/宇野なおみ、HugKum編集部