2023年度中学受験最前線!花まるスクールFC・松島先生が語る「中学受験、夏休み前の落とし穴」

中学受験は「次」の季節が始まっています。来春に向けてすでに準備を始めている5年生、6年生の受験生を持つパパママは、今どのような心境でしょうか。受験は時間との闘い、そして本人とのよいコミュニケーションがカナメ。そこで、花まるグループの進学塾部門、スクールFC代表の松島伸浩先生に、夏休み前までの大事な過ごし方を伝授いただきました。今、これをやっておかなきゃ! のヒントがいっぱいです。

4月は変化の多い月。子どもの「気持ち」に留意を

――中学受験は、前年の2月から新しい年度と勉強が始まっています。4月以降は、かなり受験勉強に慣れてきた時期でしょうか。

たしかに、2月から受験学年としての授業も始まり、塾を中心とした一週間の勉強の流れにも慣れてきている頃ですね。でも、4月は学校生活に変化があります。クラス替えがあったり、持ち上がりでも先生が変わったり。中学受験組か地元進学組かがある程度わかってきて、大人には見えないところで、学習環境や友人関係も微妙に変化しているかもしれません。

子どもにとって、学校生活のあり方は、生活全体に影響を及ぼす重要なもの。パパママは子どもにさりげない質問をしながら、今の学校生活が楽しいものなのかどうかを確認しておくといいでしょう。ちょうど思春期でもあります。悩みや心配事がありそうなら、親の意見を一方的に押し付ける形ではなく、子どもと一緒に考えてあげるといいですね。学校の環境や友人関係に問題があると、5月のゴールデンウイーク頃に何か気持ちの面で変化があるかもしれません。そのあたりの子どもの様子にも気を配りましょう。

6年生になったら、新学年の担任の先生にある程度受験することを伝えておいたほうがいいかもしれませんね。昨今は多くはいませんが、中には中学受験に批判的な視点の先生も存在するので、担任の先生についての情報収集も、保護者のネットワークの中からできるとよいでしょう。

 受験生の1学期の過ごし方は?

新学期は勉強のモチベーションとしては、上がる時期ですか?

2月の頭など、当初は「やるぞ!」という気持ちだったかもしれませんが、実は4月から7月くらいにかけては、進学塾は特に大きなイベントもなく、変化をつけにくい時期です。したがって、モチベーションも上がりにくく、ダラダラしやすい。特に5月~7月は雨が降り、湿度が多いので体が重く感じるのではないでしょうか。

天王山と言われる夏休みに向けて、「この時期はある程度しかたがない」とすこし大目にみてあげることも大切です。でも、生活のリズムが崩れるとなかなか取り戻せないので、夜更かしになりすぎない、栄養と睡眠をしっかりとって、朝はすっきり目覚めるなどのリズムをキープできるといいですね。特にゴールデンウィークも羽目を外しすぎると、せっかくそれまでつくってきた勉強のリズムが狂ってしまうので、漢字や計算など習慣となっているものは維持しながら、休養を取るようにしましょう。

モチベーションを上げるために、受験までのイメージを共有

中だるみを解消するために、この時期に親子で来年の2月までの受験計画を作ることをおすすめします。今後の塾の特訓授業や進路面談の予定、判定模試や志望校のイベントの日程などをピックアップし、本番までのスケジュールを確認しておきましょう。小学校の行事や課外活動、家族の予定なども合わせてスケジュールを作っておくことで、大まかな流れがイメージできます。

またこの機会にこれまでの学習習慣を見直したり、夏休みや9月以降の勉強の仕方を話し合ってみたりするのもいいでしょう。あくまでもパパママが主導ではなく、最後は自分の意思で決めるように促します。無理なスケジュール、ラク過ぎるスケジュールを立てている場合はアドバイスしてもいいですが、「この時期は毎日朝15分勉強」「夏休み中でも7時に起床」など、具体的な部分は自分で決めていくと実行しやすくなります。計画は作ったら終わりではなく、そのあとも親子でときどき確認しながら、できるだけ決めたことは守る、事情があって守れないなら一緒に作り直すなど、その子に合ったスタイルを見つけていくことが大切です。

 ゲームや習い事はどうする? 最終的には子どもに決めさせるのが理想

受験生にとって習い事やゲームとどう取り組み、どう離れるかは、大事な問題です。ギリギリまで習い事をやりたいというのであれば、そのために勉強時間をどう確保するか、健康管理をどうするかを一緒に話し合い、計画に入れるとよいでしょう。ゲームは友達同士のコミュニケーションにもなっているので、「やめたくない」というお子さんもいると思います。しかし、受験という目的がある以上、本来はそれを自分から友達に伝えるべきです。ゲームや友達とどう付き合うのか、自分で決めていけるといいですね。

5年生のこの時期もモチベーションが上がらない時期です。まだ勉強以外の時間をつくれるときでもありますから、ゴールデンウィークや週末など、思い切って家族旅行に行くのもいいです。6年生になるとそういう余裕は持てないでしょうから、5年生の今の時期にこそ、親子の思い出づくりとともに、興味・関心を広げられたらいいですね。ただし、「旅行の中にも勉強を入れ込もう」と、歴史や文化史跡を訪ねるなどあからさまに「勉強色」をつけると、本人は楽しめません。遊ぶときは遊ぶ、勉強するときは勉強すると、メリハリをつけることが、勉強を長続きさせるコツでもあります。

 春に絶対しておきたいこと、それは学校見学

そして、春の時期に「必ずしておきたい」大事なこと、それは学校見学です。私の塾が提唱する「幸せな受験」でも、「志望校選びこそが大切です」と伝えています。入試も多様化し、それぞれの学校も個性豊かです。お子さんが本当に「行きたい!」と思える学校を見つけるには、できるだけ視野を広げて学校を見ておくことが重要です。コロナ禍が落ち着き、今は多くの学校がリアルに見学ができるので、ぜひ実際に学校を訪れてください。

まずは第1志望候補を3校見つけるのが目標

第1志望にしたい学校を3校見つけましょう。一般的に第1志望校に受かる確率は3割ほどと言われています。つまり第2、第3志望の学校に通うことになるお子さんもたくさんいるということです。子どもは憧れの第1志望校にまっしぐらでいいですが、親は冷静な志望校選びをしなければなりません。知名度はそれほど高くなくても、素晴らしい取り組みをしている学校はたくさんあります。噂や先入観にとらわれず、幅広く検討してみるといいでしょう。6年生になると時間的な制約も多くなるため、5年生のときにできるだけたくさんの学校を見ておくといいですね。

全部の学校にお子さんを連れて行くのも大変かもしれません。学校見学は平日に行われることもありますし、日程が重なることもあります。ですから、パパママが手分けをして参加し、これは、と思う学校に絞ってからお子さんを連れて行くほうが効率がいいでしょう。

あれこれしているうちにあっという間に夏になってしまいます。少し時間の余裕のある春だからこそ、家族との時間を楽しみながらも、これから先々やるべきことに余念のないよう、しっかりと計画を立てていきたいですね。

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お話を伺ったのは

松島 伸浩|花まるグループ・スクールFC 代表
1963年生まれ。花まるグループ常務取締役。教員一家に育つも、私教育の世界に飛び込み、大手進学塾で経営幹部として活躍。36歳で自塾を立ち上げ、個人、組織の両面から、「社会に出てから必要とされる『生きる力』を受験学習を通して鍛える方法はないか」を模索する。その後、花まるグループに入社。教務部長、事業部長を経て現職。のべ10,000件以上の受験相談や教育相談の実績は、保護者からの絶大な支持を得ている。子育て講演会、教育講演会は定員のため抽選になるほどの人気。『中学受験 親のかかわり方大全』『中学受験 物語ですらすら頭に入る よく出る漢字720』(実務教育出版)『算数嫌いな子が好きになる本 小学校6年分のつまずきと教え方がわかる』(カンゼン)など著書多数。

取材・構成/三輪泉

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