ピーター・パンとウェンディの2人が主人公!
ご存知のとおり、ネバーランドで繰り広げられる心躍る冒険を描く「ピーター・パン」といえば、幅広い世代から支持されてきた名作ファンタジーですが、今回の実写映画は、ピーター・パンとウェンディの2人を主人公にした点が非常に今日的です。加えてピーター・パンと宿敵フック船長の知られざる過去も描かれることで、単なるヴィランに留まらないフックの人間性も深掘りされていきます。
また、ピーター・パンといえば「大人になりたくない少年」の代名詞にもなっています。でも、本作はこれまでの作品群とは少し毛色が違い、ファンタジーの枠を飛び越えて、今を生きる子どもたちだけではなく、大人たちにも、改めて「大人になるとはどういうことか?」というテーマを提示してくれる快作となっています。
勧善懲悪ではなくリアルな人間ドラマに共感!
タイトルが示すとおり、ピーター・パンに加え、ウェンディの人となりもかなりフォーカスされる本作。ウェンディ役を演じたのは、「バイオハザード」シリーズなどで知られるミラ・ジョヴォヴィッチの娘エヴァー・アンダーソン。すでに母親ゆずりの女優オーラが全開で、登場するなり目が離せなくなりそう。
ウェンディはちょっぴり反抗期に入っているようで「大人になんてなりたくない」と、浮かない表情を見せます。ところがある日、ピーター・パンと出会ったことで、少しずつ人生が輝きだします。特に初めて空を飛んだ時、その楽しさに「想像以上よ!」と大興奮する表情がなんとも愛らしい。
また、ネバーランドの美しいロケーションにワクワクする一方で、そこでの人間模様は、おとぎ話ならではの勧善懲悪ではなく、もっと地続きでリアルな物語として展開されていきます。
フック船長は、『ファンタスティック・ビースト』シリーズのジュード・ロウが演じていますが、彼とピーター・パンの知られざる過去はもちろん、ウェンディとも絡んでいくという巧みなストーリーテリングに「そう来たか!」と驚きました。それぞれのキャラクターのバックグラウンドが描かれていくので、人間ドラマも立体的になり、いろいろな登場人物たちに感情移入できそうです。
大人になることは何よりも大きな冒険であるという深いメッセージ
もともと鼻っ柱が強いおてんばのウェンディですが、ピーター・パンのピンチを果敢に救い、メンター的存在の人物との出会いも経て、どんどん頼もしく成長していきます。ウェンディがネバーランドについて「思ったよりも現実だった」といったような感想を述べる表情も実に頼もしい。
随所に、冒険ファンタジーならではのダイナミックなアクションシーンもあり、過去を織り交ぜた切ないドラマも盛り込まれ、気がつけば感動のクライマックスへ。もちろん後半にウェンディやピーター・パンたちの見せ場もドーンと用意されていますので、そこは観てのお楽しみということで。
そして、ウェンディは気づきます。大人になるのは、何よりも大きな冒険だということを。だから決して人生に対して臆病になってはいけないんだと。もう、人生に不満だらけだった不機嫌なウェンディはどこにもいません。数々の出会いを経て、一皮むけた彼女は、まさに希望に満ちあふれています。
きっと本作を観れば、かつて少年少女だったママやパパはどこか懐かしさを覚えるだろうし、子どもたちが観れば、何事も怖がらずに、前へ進んでいくことのすばらしさをかみしめてくれるはず。ぜひ家族で観て、みんなで盛り上がってほしいです。
監督:デヴィッド・ロウリー
出演:ジュード・ロウ、アレクサンダー・モロニー、エヴァー・アンダーソン、ヤラ・シャヒディ…ほか
公式HP: disneyplus.disney.co.jp/program/peter-pan-wendy
文/山崎伸子