扶養控除とは?
扶養控除について聞いたことがあっても、どのようなものかよく分からない人もいるのではないでしょうか? まずは簡単に、扶養控除の対象になる税金や申請方法について見ていきましょう。
一定の要件のもと一定の額を差し引くこと
扶養控除は、納税者の負担を軽減するための制度です。一定の要件のもと、課税所得から一定の額を差し引くことを指します。
例えば、子どもや親を養っている人は、そうでない人に比べて経済的な負担が増します。そのため扶養している人数が多いほど、納税者の負担を軽減する仕組みになっているのです。
子どもの扶養控除は「所得税」と「住民税」が対象になります。
所得税は国税の一種で、会社からの給料や事業で稼いだお金にかかる税金です。住民税は地方税の一種で、居住している地域の公共サービスをまかなうための費用にあてる税金になります。
里子や都道府県知事から養育を託された子どもも対象です。
「年末調整」や「確定申告」で申請
扶養控除の申請は「年末調整」か「確定申告」で行います。
年末調整は、源泉徴収された所得税の過不足を調整するための手続きです。例外もありますが、会社員やパートで働く人など給与所得を得ている人で、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人が対象になります。
「確定申告」は、年末調整の対象とならない人に限らず、所得がある全ての人が対象です。年末調整の対象者でも、給与所得以外の所得合計が一定額を超える人や、住宅ローン控除の対象となる人などが確定申告を行います。
詳細については、会社の担当者や専門家に確認しましょう。
扶養控除の対象となる年齢と控除額
では、何歳の子どもが扶養控除の対象になるのでしょうか? 対象年齢と併せて、控除額についても紹介します。対象外の子どもが受けられる手当も確認しましょう。
16歳以上が対象、控除額は年齢で異なる
「所得税」「住民税」ともに、その年の12月31日時点で「16歳以上」の扶養家族が扶養控除の対象です。控除額は年齢によって変わります。
・16歳以上19歳未満:「控除対象扶養親族」
控除対象扶養親族の所得税の控除額は「38万円」、住民税の控除額は「33万円」です。
・19歳以上23歳未満:「特定扶養親族」
特定扶養親族の場合は、所得税が「63万円」、住民税が「45万円」になります。特定扶養親族の控除額が多いのは、大学・専門学校進学などで納税者の負担が大きくなると考えられているためです。
ただし、実際に子どもが学生である必要はありまん。
参考:
No.1180 扶養控除|国税庁
扶養控除の見直しについて(22年度改正) : 財務省 (mof.go.jp)
16歳未満は「児童手当」の対象
16歳未満の子どもは「児童手当」の対象になります。児童手当は、手当を支給することで養育する人の負担を減らすことが目的です。
15歳の誕生日後の最初の3月31日まで支給されますが、支給額(月額)は年齢で異なります。
・3歳未満:「一律1万5000円」
・3歳以上小学校修了まで:「1万円」(第3子以降は「1万5000円」)
・中学生:「一律1万円」
児童手当は子どもが出生したら自動的に受け取れるものではなく、居住地の市区町村で申請をする必要があります。支給されるのは、申請した月の翌月分からになるため、早めに申請するようにしましょう。
参考:
児童手当制度のご案内:子ども・子育て本部|内閣府
扶養控除の見直しについて(22年度改正) : 財務省 (mof.go.jp)
児童手当制度の概要|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
16歳以上の子どもが扶養控除を受けるための要件
16歳以上の子どもであれば、誰でも扶養控除の対象になるわけではありません。対象になる要件を紹介しますので、当てはまるかチェックしましょう。
生計を一にしている
一般的な「扶養」の意味は、自力で生活できず養っているという意味ですが、税法上では「生計を一にしている」ことが要件の一つです。
これは、納税者と同居している必要があるという意味ではなく、別居でも該当します。
例えば、都内の大学に入学し親元を離れて1人暮らしをしている子どもの場合です。親が学費や生活費を仕送りしている場合は、生計を一にしていることになります。
ただし、仕送りをしていることを証明できる書類が必要になるため、金融機関の通帳のコピーなどを用意する必要があります。
年間の合計所得金額が48万円以下
子どもの年齢によっては、アルバイトで収入を得ている場合もあるでしょう。扶養の要件を満たすには、年間の合計所得金額が「48万円以下」である必要があります。
所得金額は「収入金額」ではありません。例えば、アルバイトで給与を得ている場合は、収入金額から「給与所得控除額」を引いたものが所得金額になります。
給与所得控除額は収入金額によって決められており、162万5000円までは「55万円」です。つまり所得金額を48万円以下にするためには、収入金額を103万円以下にする必要があります。
青色事業専従者や他の人の扶養親族でない人
事業従事者として給料をもらっていないことが要件の一つです。父親である納税者が個人事業主で、子どもがその事業を手伝い給料を得ている場合などは対象外になります。
また、扶養控除は重複して受けることはできません。そのため、他の人の扶養親族として控除を受けていないことも要件になります。
例えば、離婚後に子どもと別居していても養育費や生活費を払っている場合は、生活を一にしていることになり、扶養控除の対象になります。しかし、元配偶者が子どもの扶養控除を受けている場合は、控除することができません。
離婚に際して、事前に扶養控除について話し合っておくことも大切でしょう。
子どもの扶養控除に関するQ&A
子どもの扶養控除に関して、よくある疑問をまとめました。分からない点や気になる点を確認して、スムーズに申請ができるようにしましょう。
所得が48万円を超えた場合や就職した場合は?
子どもの年間合計所得金額が48万円を超えてしまうと扶養の対象外になり、税金が高くなります。
夏休みなどでアルバイトの時間が増えると、気付かないうちに収入が多くなってしまうことも珍しくないため、注意しましょう。
また、年の途中で子どもが就職した場合は、12月31日時点の状況で判断されます。
例えば、年が明けた時点では扶養対象であっても、年の途中で就職し、その年の合計所得額が48万円を超えた場合は対象外になります。
子どもが複数いる場合は?
扶養控除の対象となる子どもの人数は、納税者1人につき何人までという決まりはありません。
扶養控除は納税者の負担を軽減するためのものなので、扶養している人数が多いほど、控除額も増える仕組みになっています。
子どもが複数いる場合は、人数に合わせて控除額が増えます。例えば、要件を満たす17・20・22歳の3人の子どもがいる場合は、「164万円(38+63+63万円)」が所得税の控除額です。
共働きの場合は、どちらの扶養にすべき?
法律上、重複しない限りどちらの扶養親族としても問題はありません。しかし、16歳以上の子どもがいる場合は、収入の多いほうの扶養にしたほうが節税につながります。
16歳未満の場合は、収入が少ない人の扶養にすることで住民税が非課税になる場合もあります。ただし、企業によっては「家族手当」が受けられないこともあるでしょう。
このように、どちらの扶養にしたほうがよいかはケースバイケースのため、自治体や専門家に相談するのがおすすめです。
忘れずに扶養控除を申請しよう
要件を満たす16歳以上の子どもがいる場合は、所得税と住民税が扶養控除の対象になります。大きな節税につながるので、年末調整や確定申告で忘れずに申請しましょう。
子どもの年間合計所得金額が48万円を超えると対象外になってしまうため、きちんと子どもと話し合うことも大切です。共働きの場合は、どちらの扶養にしたほうが節税になるのかを確認した上で、申請する親族を決めましょう。
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構成・文/HugKum編集部