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SDGsの意識は、子どもたちの方が一歩も二歩も先に進んでいる
SDGsという言葉は、近年あっという間に生活に浸透しましたよね。
SDGsとは
「持続可能な開発目標」のことをいい、17の目標を掲げています。
日本でもSDGsに基づき、子どもたちは学校教育の中で様々なサスティナブル教育を受けています。
日本が提案した、新たな理念「ESD」とは
では、「ESD」はご存知でしょうか?
「ESD」とは
持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development: ESD)という意味で2002年に日本が提案した新たな理念です。
子どもたちの、サスティナブルな社会の作り手となる資質や能力の育成を推進するための教育を指します。
2015年に国連でSDGsが採択されましたが、子どもたちはSDGsの目標達成のため、地域や社会、国や世界の様々な課題に向け、ESD教育に取り組むことになりました。
日本では2020年度から学習指導要領にも盛り込まれています。
親世代もSDGsの情報をアップデートするには?
子どもたちはSDGsを意識した教育を受けていますが、私たち親世代は自分から情報を知ろうとしない限り、持続可能な社会に向けての知識を知ることができません。
しかし、これからの時代は、国も企業も環境や持続可能性に焦点をあてて活動が行われていくようになります。
そこで、SDGsに関連した絵本をもとに、親子でサスティナブルな社会について楽しく知っていきましょう。とくに「持続可能」という観点から環境や消費について考えることのできる「サスティナブル(持続可能な)」な絵本を中心にご紹介します。
環境問題について知る絵本や日常生活でなにができるかを伝えてくれる絵本、アップサイクルとは何かを教えてくれる絵本などを紹介します。
環境問題について知る絵本
「地球温暖化」の現状はどうなっているのか、地球温暖化と二酸化炭素のかかわり、温暖化がホッキョクグマやペンギンをどうおびやかすのか、などを子どもたちに分かりやすく伝えてくれる絵本があります。
SDGs 目標13「気候変動に具体的な対策を」が分かる絵本
『ホッキョクグマくん、だいじょうぶ? 北極の氷はなぜとける』(ロバート・E・ウェルズ さく/せなあいこ やく 評論社)
ホッキョクグマは、北極の氷が溶けだし困ってしまっています。そこから、太陽と温室効果ガスの関係、人間の生活が温室効果ガスを増やす現状、それがホッキョクグマだけでなく世界中の人や動物にどんな災害をもたらすのかを分かりやすく伝えます。温室効果ガスを増やさないために何ができるのか、様々な例も描かれており、親子で「どう生活すればよいかな?」と話し合うヒントにもなります。
『ドラゴン、火をはくのはやめて!』(さく 上野与志 え ヒョーゴノスケ ポプラ社)
こちらも地球温暖化をテーマにしていますが、「温暖化が進みすぎると、子どもたちの未来はどうなる?」と想像させられる絵本です。
ある寒い冬が長く続く国では作物があまりとれませんでしたが、食べるのに困ることはなくつつましく暮らしていました。しかし、王さまはドラゴンに「火を吐いて国をあたためてほしい」と願います。ドラゴンは火を吐き国は温まり、どんどん作物がとれるようになります。国は一時的に豊かになりますが、ドラゴンは火を吐き続け国はどんどん暑くなっていきます。王さまは逃げ出し子どもたちだけが立ち上がってドラゴンのもとに向かうのです。
欲をかいた大人は逃げ、自分たちの未来をかけて子どもたちは立ち向かいます。現代の環境問題に真剣に向き合う子どもたちの姿を想起させるお話です。
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」が分かる絵本
『プラスチックのうみ』(ミシェル・ロード 作 ジュリア・ブラットマン 絵 川上拓土 小学館)
プラスチックごみで汚れてしまった現代の海の姿を描くことで、海洋生物の健康を害してしまう海洋プラスチックごみの問題を問いかける絵本です。
プラスチックごみがうずまく海では、アザラシが、プラスチックごみを食べた魚を食べています。さらに海に放置されたプラスチック製のあみもからまります。それらを捨てた人間の世界もうつしだされます。
海流にのってプラスチックごみが溜まり、巨大なごみだまりとなっている太平洋ごみベルトを舞台に、うずまくプラスチックごみが食物連鎖の中で人間の健康にまで影響をおよぼすことを伝えてくれます。
日常生活でなにができるかを伝えてくれる絵本
ここからは、私たちが環境が資源を守るために、いま、わたしたちにできることを伝えてくれる絵本を紹介します。
SDGs目標12 「つくる責任 つかう責任」が分かる絵本
資源の大切さを考える中でも「食品ロス」問題は私たちの日常に直結するものです。日本の一年間の食品ロス量、522万トン(2020年)のうち家庭で捨てられる食品は半数をしめています。親子で食品ロスについて考えられる絵本があります。
『ぞろりぞろりとやさいがね』(ひろかわさえこ 偕成社)
『ほうれんそうカレー ききいっぱつ』(田中六大 作 田中入馬 監修 佼成出版社)
こちらは、さらに食品ロス問題にふみこんで「賞味期限が長いものを選んでしまう」など、私たちの買い物に対する考えを諭してくれる1冊です。賞味期限が近づいてもだれにも買ってもらえないほうれんそうカレーくんの目線で、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品の問題について考えさせられます。
アップサイクルとは何かを教えてくれる絵本
「アップサイクル」とは、捨てられようとした物に新たな価値を加えて商品を作ること。そうした理念を伝える絵本もあります。
『おじいさんならできる』(フィービ・ギルマン 作・絵 芦田ルリ 訳 福音館書店)
ヨゼフに、おじいさんがブランケットをぬってくれました。ブランケットは古くなりますが、おじいさんの手によって次々と新しい物に変身していきます。おじいさんが「ちくちくすーいすい」と縫うと、ブランケットはジャケット、ベスト、ベスト、ネクタイ、ハンカチ、ボタンと捨てることなく次々と素敵なものに作り変えられます。
SDGs目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」が分かる絵本
電気は私たちの生活に欠かせません。しかし、電力を作るためには環境に大きな負荷がかかることも知られています。そうした問題を普段どう意識していくべきか示唆してくれる絵本があります。
『ちきゅうのための1じかん あかりをけそう! アースアワー』
この絵本は「アースアワー」という1年に1度、春分に近い土曜日の夜8時30分から1時間、世界中の人々が明かりを消すイベントをテーマにしています。
電気は私たちの生活を豊かにしてくれます。しかし、地球のエネルギーは枯渇しはじめています。そうしたなか「わたしたちの生活を存続させるために、生活の中でなにができるのか?」をアースアワーによって考えようと呼びかけてくれる1冊です。
SDGsを学ぶことは、問題に立ち向かう力につながる
現代の子どもたちはSDGsの考えを学び、答えのない問題に立ち向かう必要があります。
SDGsから子どもたちは、世界の問題へ目を向け、「自分は社会に対してなにができるか」を考えるきっかけにもなります。
グローバルな社会では「協働力」がキーワードとなります。一人や一つの国という単位では無理でも、協働してそれぞれの力を合わせて正解のない問題を解決していく力が求められていきます。環境問題をはじめ現代は問題が山積みですが、子どもたちが新しい時代に適していけるよう、生きていく資源に困らぬよう、ともに行動するきっかけとして、今回ご紹介した絵本をもとに親子で語り合っていただければと思います。
文・構成/徳永真紀