「脂肪」の正体。体にとってヒーロー? それとも悪役? 正しい情報と健康との関係性を学ぼう【親子で人体を学ぶ】

「脂肪」と聞くと、太るというイメージをもっている人が多いかもしれません。しかし脂肪は、人間の体にとって大切な役割を果たしています。そこでこの記事では、脂肪の基本知識や、脂肪の役割、健康との関係性などを解説していきます。脂肪について学んでいきましょう!

脂肪の基本:体にはどんな脂肪がある?

まずは脂肪の基本情報を解説していきます。脂肪とはなにかをこの項目でつかみましょう。

脂肪とは

脂肪とは炭水化物、たんぱく質と並ぶ、エネルギー源となる栄養素のひとつです。栄養学では一般的に「脂質」と呼ばれています。ヒトの体にある脂肪のことを「体脂肪」といい、水分の次に多くふくまれています。

食べ物からの脂質がヒトの体内に入ると、おもに小腸で消化され、脂質の種類ごとに複雑な過程を経て体に取り込まれます。

脂質はさまざまな役割を果たしますが、余ってしまった脂質は中性脂肪として体内に留まります。そのため、余ってしまった脂質が多いほど肥満になりやすくなるのです。

脂肪細胞とは?

脂肪細胞とは、脂肪の合成や分解、蓄積をする細胞です。脂肪や糖を蓄えて体温維持を行うことや、内臓を守って正常な位置に保つ役割があります。

脂肪細胞の数は生後から思春期にかけて増加していき、20歳前後で安定し始めるのが一般的とされています。成人後には数が変わらないはずなのに太ったり痩せたりするのは、脂肪細胞の大きさが変わるからといわれています。

皮下脂肪と内臓脂肪の違い

体脂肪には、皮下脂肪と内臓脂肪があります。

皮下脂肪は下腹部、腰まわり、おしりなどの皮膚の下の皮下組織につく脂肪のことです。男性よりも女性のほうがつきやすく「いったんつくと減らしにくい」特徴があります。また外見から脂肪がついているのがわかりやすいのも特徴です。

一方の内蔵脂肪は、胃、腸といった内蔵のまわりにつく脂肪のことです。体のエネルギーが不足した際に素早くエネルギーに変換されるのが特徴で「つきやすく、減らしやすい」脂肪です。外見からは脂肪がついているのかわかりづらく、痩せている人であっても内臓脂肪が多い人もいます。

両者の違いは「脂肪がつく場所」「脂肪の減らしやすさ」「外見からのわかりやすさ」です。

脂肪の役割:なぜ私たちは脂肪を持っているのか?

脂肪は悪役のように思われますが、人間にとって重要な役割を果たしています。どのような役割があるのか解説していきます。

エネルギー源としての脂肪

脂肪、糖質、タンパク質の3つは「エネルギー産生栄養素」といわれています。なかでも脂肪は、タンパク質や糖質のおよそ2倍ものエネルギーを作り出すといわれており、効率のよいエネルギー源です。

脂肪がエネルギー源となる仕組みは、次のとおりです。

中性脂肪が脂肪組織に蓄えられ、グリセロールと脂肪酸に分解される。

脂肪酸はタンパク質と結びついて血液中に放出。

肝臓、心臓、腎臓、筋肉、肺などに取り入れられ、エネルギー源になる。

体温を保持するための断熱材

脂肪は暑さや寒さといった外からの温度を遮断し、体温を一定に保つ断熱材のような働きもあります。よって体脂肪が少ないと、体温調整がうまくできず体調を崩しやすくなったりします。

内臓を守るクッション

内蔵脂肪がついているのは、内蔵のまわりです。内蔵のまわりに脂肪がつくことで、内蔵を衝撃から守るクッションのような役割を果たします。

健康との関係:良い脂肪と悪い脂肪の違い

脂肪には、良い脂肪と悪い脂肪があります。その違いを解説していきます。

体に良い脂質と悪い脂質

体に良い脂質にはリノール酸やα-リノレン酸、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸、エンコサペンタエン酸などがあります。おもに植物性の脂肪や魚油です。たくさん摂りすぎるのはNGですが、適度に摂取することで健康な体づくりに役立ちます。

悪い脂質には、トランス脂肪酸があります。トランス脂肪酸とは、構造中にトランス型の二重結合をもっている不飽和脂肪酸のことです。食品ではマーガリンやショートニング、ファストプレッドなどにふくまれています。これらを使った食品を摂りすぎると、善玉(HDL)コレステロールを減らし、悪玉(LDL)コレステロールを増やしてしまいます。

食事から摂る脂肪:飽和脂肪酸やトランス脂肪酸

食事から摂る脂肪(脂質)のおもな構成要素が「脂肪酸」です。この脂肪酸には、大きく分けて4つの種類があります。

・飽和脂肪酸:エネルギー源となりやすく、体内で合成できる脂肪酸。肉や乳製品などに多くふくまれる。

・一価不飽和脂肪酸:常温で液体の脂肪酸。エネルギー源にはなりにくい。オリーブオイル、アボカド、菜種油などに多くふくまれる。

・多価不飽和脂肪酸:体内で合成できない必須脂肪酸を含む脂肪酸。青魚の魚油、植物油、えごま、くるみなどに多くふくまれる。

・トランス脂肪酸:健康面にはマイナス要素が多い脂肪酸。マーガリン、ショートニングなどにふくまれる。

食事で脂肪を摂取する場合には、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸がおすすめです。ただし、適度に摂ることが大切です。

脂肪の管理:健康的な体を目指すためのポイント

健康的な体づくりのためには、脂肪とうまく付き合うことが重要です。食事や運動面などと脂肪の関係を見ていきましょう。

適切な食事の選び方

食事から脂質を摂ることは大切ですが、摂りすぎると健康面に悪い影響を与えます。ですから脂質の目標量を把握しておきましょう。

脂質は、食品によってふくまれる量が異なるため、気をつけておきたいところです。とくにスナック菓子やチョコレート、洋菓子などには多くふくまれていることが多いので、過剰摂取にならないようにしてください。

なるべくトランス脂肪酸は避け、良い脂質を摂るよう心がけましょう。

運動と脂肪の関係

脂肪は、運動することで落とすことができます。ただし皮下脂肪は、食事を気をつけつつ運動も合わせて行わないとなかなか落としにくいものです。

脂肪を落とすために有効なのは、ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳といった有酸素運動です。有酸素運動は、筋肉を動かすときに血糖や脂肪がエネルギーとして使われます。そのため、脂肪を落とすのに効果が期待できると考えられています。

日常生活での脂肪の取り扱い

日常生活をする上で、以下のような脂肪の取り扱いを心がけましょう。

●体脂肪を把握し、肥満にならないようにする

体脂肪率は、体重に占める体脂肪の割合のことです。体脂肪率を知ることで、肥満度が把握できます。

体脂肪率による肥満度は次のとおりです。

【男性】
20%以上 軽度肥満
25%以上 中等度肥満
30%以上 重度肥満

【女性】
30%以上 軽度肥満
35%以上 中等度肥満
40%以上 重度肥満

※参照元:体脂肪率(日本赤十字社)

●食事から脂質を摂取するときには脂質の目標量を目安に

食事から脂質を摂取するときには、脂質の目標量を目安にします。摂取量を減らしたい場合には、肉よりも魚を取り入れるようにしたり、蒸す・茹でるなどの油を使わない調理法などで工夫しましょう。

●有酸素運動で脂肪を増やさない

有酸素運動を生活に取り入れ、脂肪を増やさないようにすることも大切です。

脂肪とうまく付き合おう!

脂肪は体についてしまうとやっかいなイメージがありますが、エネルギー源となったり、体温を調節したり、内蔵を守るクッションになったりと、重要な役割を担っています。食事で良い脂質を摂取し、有酸素運動などを取り入れて、脂肪とうまく付き合っていきましょう。

こちらの記事もオススメ

9歳以上の男子の1割以上が肥満傾向、脂肪肝と診断されるケースも!医師が教える、幼児期から1日合計60分以上の運動習慣をつけるコツ
11歳では、男子は12.48%、女子は9.42%が肥満傾向 文部科学省が発表した『令和3年度学校保健統計』による、小学生の肥満傾向児の割合...

小学館の図鑑NEO[新版]人間 (DVDつき)

文・構成/HugKum編集部

編集部おすすめ

関連記事