9歳以上の男子の1割以上が肥満傾向、脂肪肝と診断されるケースも!医師が教える、幼児期から1日合計60分以上の運動習慣をつけるコツ

2022年11月、文部科学省が発表した『令和3年度学校保健統計』の「身長・体重の平均値及び肥満傾向児及び痩身傾向児の割合」によると、肥満傾向児の割合は男女ともに小学校高学年が最も高く、とくに男子は9歳以上から肥満傾向児が1割を超えています。
肥満は、子どものうちから生活習慣を見直さないと、将来の肥満症やメタボリックシンドローム(以下メタボ)につながることも。
子どもの肥満に詳しい、済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科部長 十河剛先生に子どもの肥満の要因や防ぐコツについて教えてもらいました。

11歳では、男子は12.48%、女子は9.42%が肥満傾向

文部科学省が発表した『令和3年度学校保健統計』による、小学生の肥満傾向児の割合は次の通りです。入学時は男女とも5%台ですが、高学年になると男子は12%台、女子は9%台に増えています。

【小学生男子の肥満傾向児割合】

6歳   5.25

7歳   7.61

8歳   9.75

9歳  12.03

10歳  12.58

11歳  12.48

 

【小学生女子の肥満傾向児割合】

6歳   5.15

7歳   6.87

8歳   8.34

9歳   8.24

10歳  9.26

11歳  9.42

別の病気を調べるために血液検査を行い、脂肪肝が判明する子どもも

なかには「子どものうちは、少しぐらい太っていても大丈夫」「身長が伸びれば、そのうち痩せてくる」と考えるママ・パパもいますが、子どもの肥満は軽視できません。

当院は子どもの肥満治療も行っていますが、受診している子どものなかには、かかりつけの小児科で別の病気が疑われて血液検査をしたところ、中性脂肪が肝臓内に多く蓄積する脂肪肝が判明して、当院を受診するケースもあります。

子どもの肥満は、高血圧、糖尿病などの原因に

子どもの肥満は、大人の肥満と同様に高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな問題を引き起こすリスクがあります。また、中性脂肪が肝臓内に多く蓄積する脂肪肝は、メタボを合併しやすく、放置すると肝炎などを引き起こすこともあります。

小学生でウエストが75cm以上あるときは、小児科で相談

子どもの肥満の目安は、ウエストを測ることでわかります。

小児(6~15歳)のメタボにはいくつかの診断基準がありますが、その1つがウエストサイズです。

小学生でウエストが75cm以上ある もしくは

ウエスト(cm)÷身長(cm)0.5以上

の場合は注意が必要です。前述のように脂肪肝などが心配されるので、かかりつけの小児科で相談しましょう。

肥満症やメタボは、子ども時代の生活習慣が関係している

子どもの肥満対策には、生活習慣の見直しが欠かせません。大人になってからの肥満症やメタボの背景には、実は子ども時代からの生活習慣が大きく関係しています。その1つが運動習慣です。

幼児以上は、1日合計60分以上の運動を毎日続けて

とくに肥満傾向がある子は、体を動かすことが苦手だったりして運動不足になりがちです。1日の運動量は、幼児以上は子どもの年齢に関係なく、1日合計60分以上を目標にしてください。小学校の休み時間に、友だちと20分かけっこをして遊ぶならば、帰宅後、あと40分以上は体を動かす遊びやスポーツをしましょう。室内・屋外は関係ありません。

ポイントは、毎日続けることです。週1~2回、サッカーやスイミングなどの習い事で体を動かすだけでは不十分です。

ウォーキングアプリを活用するなどして、楽しく運動する習慣を

肥満傾向だと、運動が苦手だったり、体を動かすことが嫌いな子も多いです。そのため1日合計60分以上、体を動かすことができないということもあるでしょう。

そうした場合は、ウォーキングでも構いません。ただ歩くだけでは、つまらなくて継続しないと思うので、ウォーキングアプリを活用するなどして、楽しみながら歩く習慣をつけましょう。ママ・パパも一緒に毎日、歩いて親子で健康的な生活習慣に変えられるといいですね。

「運動嫌い」「運動は苦手」とあきらめずに、きっかけを作って

運動が苦手でも、何かスポーツ系の習い事を始めたいというときは、技術の向上を目的とするのではなく、楽しく続けられるものを選びましょう。入会前の体験で、楽しみながら続けられそうか、子どもとよく話し合ってください。

運動習慣を作るにはきっかけが必要です。「体を動かすって楽しい!」と思えると、しだいに遊びやスポーツで体を動かす機会が増えていきます。

「うちの子は運動が嫌いだから」とあきらめずに、楽しく体を動かせるきっかけを作ってあげてほしいと思います。

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記事監修

十河剛(そごうつよし)先生|済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科部長
防衛医大卒。専門は肝臓、消化器、スポーツ医学。日本小児科学会専門医・指導医、日本肝臓学会専門医・指導医、日本消化管学会胃腸科専門医・指導医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。

取材・構成/麻生珠恵

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