【手塚治虫✕浦沢直樹「PLUTO」約60年前の原作が現代とリンクしている超快作!】未来ある子ども世代にこそ絶対見てほしい。親子で語るべきアニメ作品!

手塚治虫✕浦沢直樹という稀代の人気漫画家による人気コミックをアニメーション化した「PLUTO」(Netflixで配信中)。「鉄腕アトム」から令和の時代にアップグレードされた本作は、今を生きる私たちに、いろんなことを問いかけてきます。

手塚治虫からバトンを受け継いだ浦沢直樹快心の1作

「PLUTO」はNetflixにて世界配信中

優れた作品は時代を超えて輝き続けますが、形を変えつつも、しかるべきタイミングを選んで蘇り、再び脚光を浴びることも多いです。Netflixで配信中のアニメーション作品「PLUTO」も、そういうバックグラウンドで世に放たれた1作ではないでしょうか。令和5年、気がつけば各地で戦争が起こり、世界情勢が揺れている今、本作は私たちに何を訴えかけているのでしょうか?

マンガの父・手塚治虫の代表作「鉄腕アトム」の一遍「地上最大のロボット」が、「20世紀少年」、「YAWARA!」、「MONSTER」などの人気漫画家・浦沢直樹と、長崎尚志のプロデュースによって蘇った「PLUTO」(小学館ビッグコミックス刊)。「地上最大のロボット」の連載が始まったのは1964年ですから、手塚先生の時代を先読みする力は、もはや予知能力の域に達しているように思えます。

「PLUTO」はNetflixにて世界配信中

浦沢さんが手掛けた「PLUTO」は手塚治虫文化賞マンガ大賞をはじめ、“漫画界のカンヌ”と称されるアングレーム国際漫画フェスティバルのインタージェネレーション賞を獲得するなど国内外で高い評価を獲得。2015年には舞台化、2018年には再演も行われ、日本はもちろんイギリス、オランダ、ベルギーと欧州ツアーも敢行されました。

そして、日本初のTVアニメ「鉄腕アトム」の放送から60年となる2023年、「鉄腕アトム」の制作スタッフにも名を連ね、「呪術廻戦」、「チェンソーマン」などを手掛ける気鋭のスタジオMAPPAの創設者でもある丸山正雄の手によって、待望のアニメ作品「PLUTO」が誕生。まさに時代に呼ばれた作品となりました。

エンタメを通して考えていきたい戦争の虚しさ

「PLUTO」はNetflixにて世界配信中

時代は、人間とロボットが共生する近未来。高性能なロボットが次々に破壊される事件が起きる中、調査を担当したユーロポールの刑事ロボットであるゲジヒトは、犯人の標的が大量破壊兵器となりうる自分を含めた7人の世界最高水準のロボットであると確信します。

時を同じくして「ロボット法」に関わる要人が次々と犠牲となる殺人事件が発生。本来、ロボットは人間を傷つけることはできないと設定されているにも関わらず、殺人現場には人間の痕跡が全く残っておらず、ロボットの仕業ではないかと疑われます。

「PLUTO」はNetflixにて世界配信中

2つの事件の謎を追うゲジヒトは、その標的の1人で、世界最高の人工知能を持つロボット・アトムのもとを訪れます。まるで本物の人間のように感情を表現するアトムと出会い、ゲジヒト自身にも変化が起きていく中で、事件を追う2人は、世界を破滅へと導く史上最悪の“憎しみの存在”にたどり着きます!

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻に、パレスチナのイスラム組織ハマスの奇襲攻撃、その報復とされたイスラエル軍のガザ地区への軍事作戦と、気がつけば毎日のように戦争報道を目にします。そんな中、平和な日本で生活している私たちは、ついそんな惨状に目を背けたくなりがちかと。でも、昨今の国際情勢を見ていると「対岸の火事」なんて言ってはいられません。

「PLUTO」はNetflixにて世界配信中

では、今後未来を担っていく子どもたちに、何をどう教えていけば良いのでしょうか? 「PLUTO」を観ていると、改めてそのことを考えさせられました。

劇中では正義をかざす“平和の使者”という言葉が出てきます。その響きは善意に満ちていますが、必ずしもそうとは限らない気がします。そもそも誰しもが立場によってそれぞれ違う正義を持っています。だからこそ己の信念のもと、または国の信念のもと、その正義を立証しようと戦うわけですが、そこは現実も「PLUTO」が描く世界観も同じでした。

「PLUTO」はNetflixにて世界配信中

戦い終わった焦土で、ある人物が「果たして破壊すべき相手は何なのか? 憎むべき相手は誰なのか?」「子どもを殺すことが正義なのか?」と問うシーンに心をえぐられました。これって、まさに今、現実に起こっている戦争に対して、多くの人が悶々としながら抱いている疑問そのものじゃないですか?

では、どうすればいいのでしょうか? 持論を言えば、今、日本で暮らす私たちは「戦争ほど虚しい行為はない」ということを、未来を担う子どもたちをはじめ、多くの人に訴えかけていくことしかないのかなとも思っています。でも、実際には、平和ボケをしている私たちが、そこを言葉で説明することってなかなか難しいことかと。だからこそ、「PLUTO」のようなエンタメを通して、いろんなことを考えるきっかけを持つことって、とても必要な気がしています。

ロボットと人間が共存する社会の問題点と課題とは?

「PLUTO」はNetflixにて世界配信中

本作で描かれる「ロボットと人間が共存する社会」ですが、実際に現在、人手不足をたくさんのロボットが補っているのは周知の事実です。個人的には、2022年11月に公開された、まるで人間のように自然な対話形式でAIが答えるチャットサービス「ChatGPT」の登場は、かなりエポックメイキングな“事件”でした。私はライターですが、自分の仕事の一部を、近い将来、ロボットに奪われるなと、空恐ろしくなりましたから。

アトムは最高の人工知能を持ったロボットですが、いわゆる子ども向けのアニメ作品「鉄腕アトム」とは違い、「PLUTO」におけるアトムは人間にどこまでも近い生々しさがありました。

「PLUTO」はNetflixにて世界配信中

アトムだけではなく、ゲジヒト、ウランといった主要キャラクターたちは、人間よりも人の心を持っているような存在として描かれているので、観ている私たちは彼らに感情移入していくのではないかと。実際にロボット同士の愛情や友情も丁寧に紡がれていて、その未来は決して絵空事には思えませんでした。

ネタバレに気をつけて話しますが、劇中に登場するロボットたちが「人間を傷つけない」という前提で作られているという設定が非常に巧いと思いました。実際にロボットたちは人間たちに“尽くす”存在で、いわば“人間ファースト”の社会ですが、果たしてそれでいいのか?と、疑問を呈しています。

「PLUTO」はNetflixにて世界配信中

また、戦争についてのロボットと人間の捉え方の違いも、印象深かったです。人間は戦争を繰り返してきました、いや、現在進行形で“繰り返しています”が、そこは紛れもなく現実です。劇中で、戦争が終わるとモニュメントを作る理由について「人間たちが戦争の記憶を忘れてしまうから」と言うくだりに、ドキリとさせられました。

戦争だけではなく、震災を含め、自分が忘れたいと思っている記憶を忘れたくなるのは、残念ながら人のさがです。でも、ロボットは記憶チップを抜きさらないと忘れない。そこの設定が絶妙で、いろいろな複雑な想いが込み上げてきます。

「PLUTO」はNetflixにて世界配信中

「神が選択するのは、人間かロボットか?」という究極の問いかけに息を呑む本作。全編、観終わった方は、一体本作からどんなメッセージを受け取るのでしょうか?

ちなみに「PLUTO」は13+のレーティング作品となっていますが、私個人としては、親子で観ていただきたい秀作だと思っています。そういえば、メガヒットした『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のレーティングもPG12でした。もちろん「PLUTO」は小さなお子さん向けの作品とは言えませんが、分別のある年齢となったティーンエイジャーには、心からプッシュしたいです。

ネット配信作品があまた溢れている昨今、娯楽にふりきったライトな作品も良いのですが、こういう重厚な作品こそ、若い世代に観てもらい、広い視野で物事を見る目を養ってほしいです。今という時代の危うさを感じとったり、自分で考える力を身につけたりしていただきたいし、観終わったあとで親子でいろんな話をしてほしいと、心から願いします。

文/山崎伸子

「PLUTO」はNetflixで配信中
原作:「PLUTO」浦沢直樹×手塚治虫 長崎尚志プロデュース 監修:手塚眞 協力:手塚プロダクション(小学館 ビッグコミックス刊)
監督:河口俊夫 クリエイティブアドバイザー:浦沢直樹
声の出演:藤真秀、日笠陽子、鈴木みのり、安元洋貴、山寺宏一、木内秀信、小山力也、宮野真守、関俊彦…ほか
Netflix作品ページ:www.netflix.com/pluto 公式HP:pluto-anime.com

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