身籠もらずに出産できる最新技術「ポッド」で妊娠したら問題は山積み!?『ポッド・ジェネレーション』【12月1日公開SF映画】

近未来を舞台に、持ち運び可能な卵型の「ポッド」で赤ちゃんを育てるカップルを描くSF映画『ポッド・ジェネレーション』。近年加熱するジェンダー問題を軸に、新時代における妊娠、出産、子育てを描く本作からは、絵空事とは思えないリアリティをつきつけられます。

ジェンダー問題だけではなく子育てあるあるも描く人間ドラマ

© 2023 YZE – SCOPE PICTURES – POD GENERATION

近年、すさまじいテクノロジーの進化によって、SF映画の世界観が現実味を帯びてきました。12月1日(金)に公開された1本のSF画『ポッド・ジェネレーション』を観た時も、“近未来”という時代が、文字通り私たちが生きる現代と非常に“近い未来”なんだなと、改めて実感した次第です。本作は、AIが発達した近未来のニューヨークを舞台に、卵型の「ポッド」で赤ちゃんを育てるカップルの物語。

主演は、「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズで知られるエミリア・クラークで、本作では製作総指揮としても参加しており気合十分。共演は『それでも夜は明ける』(14)でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたキウェテル・イジョフォーです。メガホンをとったのは、本作が長編3作目となるソフィー・バーセスで、自身が脚本も手掛けています。

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映画を観る前は、設定からして、女性の視点からジェンダー問題をドストレートに扱った作品かと思い、少し身構えました。でも、着地点はそこだけではなく、AI社会に対する警鐘のメッセージや、命を育てることの尊さを真摯に問うとてもバランスの良い映画になっていました。

また、主人公となる2人に、不妊治療や、同性婚カップルといったバックグラウンドを敢えて設けず(劇中では、少しそういうエピソードも登場しますが)、自然妊娠が可能な世代のカップルにしたことで、より普遍性を帯びた分、多くの方が身近な問題として捉えられる作品になった気がします。

近未来で頼るのは、人間ではなくAIセラピスト!?

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ハイテク企業に勤め、上司から昇進の話も打診されたレイチェル(エミリア・クラーク)。仕事はこのまま続けたいけど、そろそろ子どもも欲しいと考えている彼女は、持ち運び可能な卵型の“ポッド”を使った新しい出産方法を提案する最新テクノロジーに心惹かれます。

一方、彼女のパートナーであるアルヴィー(キウェテル・イジョフォー)は、自然界の多様性を守ろうという考え方の植物学者で、あくまでも自然な妊娠を望んでいます。でも、レイチェルを心から愛するアルヴィーは、しぶしぶ彼女の考えを尊重し、“ポッド妊娠”を選択することに。

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まずは、日常にすっかり溶け込んでいるAIのハイスペックさに驚かされます。自宅ではもはや家族のようにコミュニケーションを取っているし、その日のコンディションや着る洋服のコーディネートまで考えてくれます。

ChatGPTが登場した時、近い将来、こういう世の中が来るんだろうなと想像していましたが、まさにそれが劇中で具現化されていました。カップルの間でポッド妊娠をするかどうかで意見が分かれ、誰に相談するのかと思ったら、友人はもとより、本気でレイチェルが頼ったのは“AIセラピスト”でした。そこがなんともシニカルで、まさに人間の役割をAIが根こそぎ取ってしまうのではないかと、ちょっぴり恐ろしくなりました。

母性を育むのに必要なのはスキンシップ?子育てあるあるが満載

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紆余曲折を経て、ポッド妊娠を選んだ2人。でも、いざスタートするとやはり前途多難な感じです。自分自身の体にみごもるわけではないので、母性を抱けないというレイチェルと、積極的にポッドと一緒に時間を過ごすことで、だんだん愛情が芽生えていくアルヴィー。そこはポッド妊娠に関わらず、きっと子育て経験のある方は、要所要所でうなずけるところがあるのではないでしょうか。

また、ポッドを抱っこひものようなベルトで体に装着して散歩をしたり、仕事場に連れていったりと、いわばスキンシップを図っていくレイチェルたち。だんだんポッド=自分の子どもという感覚が定着していきますが、そんな中で、ポッドが置かれた部屋ではエッチができないとつぶやくシーンでは、思わず笑ってしまいました。

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不器用ながらも、2人が必死に親になろうとする過程は、たとえポッド妊娠という特殊な形であれ、とても共感ができるし、現在子育て真っ只中の方は、過去の経験を思い出したり、子ども絡みの喜怒哀楽をきっと共有できるはず。

ところが後半では、思わぬ事態に遭遇! ネタバレなので詳しくは書きませんが、ドキドハラハラのクライマックスが待ち受けていて、最後の最後まで予断を許しません。果たして2人は、無事に我が子を手にすることができるのでしょうか?


観終わったあと、1つだけではなく、いろいろな感情が沸き立ってくる奥深い作品になっています。そして命が誕生する素晴らしさもきちんと物語に落とし込んであった点が秀逸! おそらくHugkum世代のママやパパは、メインターゲットになる作品じゃないかと思っていますので、ぜひ、ご夫婦で観ていただきたいです。

文/山崎伸子

『ポッド・ジェネレーション』は12月1日(金)より公開中
監督・脚本:ソフィー・バーセス
出演:エミリア・クラーク、キウェテル・イジョフォー、ロザリー・クレイグ、ヴィネット・ロビンソン、ジャン=マルク・バール…ほか
公式HP:pod-generation.jp

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