地元の漁業が抱える問題を解決したい
今西奏大くんの自由研究のタイトルは「くいしんぼう博士の大挑戦!! 海の未来をワクワクさせよ」。興味を持った深海魚を発端とし、地元鹿児島の漁業や未利用魚のフードロスの問題に切り込んでいます。
驚きなのは、小学3年生でありながら、大学教授をはじめとした専門家へのインタビューや、企画書を市役所に提出するなども自分でこなす、半端ない行動力。研究の内容や普段の生活について、今西さん親子にお聞きしました。
たくさん獲れるのに、捨てられてしまう深海魚
- – 深海魚を題材に選んだのはなぜですか?
奏大くん:南さつま市のイベントに参加したとき、深海魚を食べたらとてもおいしかったので興味を持ちました。深海魚は図鑑で見て知っていましたが、食べられることは知りませんでした。また、外国にいるものだと思っていたので、鹿児島の海にいることにも驚きました。そこで深海魚を広めるために頑張っている人をたくさん見て、「これは絶対に広めないといけない」と思ったのがきっかけです。
深海魚をもう一度食べてみたくなり、ある日エビを獲る漁師さんのところに行きました。そこでは、タカエビを獲るための底曳網でたくさんの深海魚が混獲されていて、その多くが食べられるのに捨てられてしまう未利用魚であることを知りました。それで、このフードロスの問題を解決したいと思いました。
深海魚はおいしい! 食べて鹿児島の漁業を支えたい
奏大くん:捨てられてしまう深海魚を食べることなら、くいしんぼうの僕でもできます。そこで、色々な深海魚の料理に挑戦してみました。調理法は、深海魚の研究をしている大学の先生やスーパーの店員さんから教えてもらいました。小さな魚の中には小骨が多く気になるものもありましたが、おすすめメニューを試してみると、おいしく食べられました。
奏大くん:今はあまり食べられていない深海魚も本当は料理できておいしく食べられることをみんなに知ってほしくて、ワークショップを企画し提案もしました。深海魚に値段がつくことで、鹿児島県の水産業を支えることにつながってほしいと思っています。
百聞は一見にしかず! 大学教授やスーパーの方への取材依頼も自分で
- – 奏大くんが書いた企画書のクオリティの高さにびっくりしました。 仕上げるまでにはどんな苦労があったのでしょうか。
奏大くん:自由研究を進めるときには「論より証拠、百聞は一見にしかず」をモットーに、自分の目と耳で直接確かめることを心がけました。
どこに取材すればよいかわからない場合は、母から「あそこなら答えられるのでは?」とヒントをもらっています。大学教授など、深海魚を流通させようとしている人達に取材依頼の手紙を送ったのですが、その手紙の文章を書くのに苦労しました。
また、スーパーの鮮魚売り場で見学や取材のお願いをしたときは緊張しました。自分が誰で、どんな取り組みをしていて、何をお願いしたいか、というように、伝えたいことを3本の柱にまとめることを教わり、お店の前で母と3回練習をしてから話しかけました。
目標から逆算して、日本語検定や英検の取得も
とても大人びている奏大くん。普段の生活や、今がんばっていることなどを教えてもらいました。
- – 奏大くんの性格や得意なことは何ですか?
奏大くんのお母さん:奏大は大人相手にも尻込みせず、グイグイいける性格。取材のアポイントメントは、小学1年生のときから自分でとっています。また、自由研究のレポートを数十ページ書いても、途中で気になることがあれば、修正する姿には感心しています。
得意教科は、理科と国語と英語だと思います。色々な文献を読むために日本語検定3級を取得したり、世界中を冒険するために英検準2級を取得したりと、学ぶことが好きなのですね。帰宅後も、自分から進んで勉強に取り組んでいます。
- – 今、頑張っていることは何ですか?
奏大くん:今は、空手やそろばん、公文、ロボットづくり、テニス、建築を習っています。また、宇宙少年団 鹿児島分団に入っていて、かごしま国体・かごしま大会のオープニングで水ロケットを飛ばしました!
習い事以外では、鹿児島県のこども環境大臣をつとめた経験から、環境問題を解決するためには何ができるかを常に考えています。これからも解決策を考えて、発表していきたいと思います。
- – 将来の夢は何ですか?
奏大くん:将来は、鉱物を探す探検家になりたいです。岩山を登り、きれいな鉱物を採取したいと思っています。鉱物を探すとき、相棒のロボットが欲しいので、今ロボット教室に通っています。
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自分の将来の夢から習い事を選んでいる奏大くん。将来がとても楽しみですね。
子どもに正解を押しつけず、まずは意見を聞くように
今西さん親子にインタビューしていると、お子さんとお母さんの仲のよさが伝わってきました。親子関係についても聞いてみました。
- – 親子喧嘩をすることはありますか?
奏大くんのお母さん:親子で言い合いすることはなく、奏大が小さいときから、食べ物以外の気は合っています(笑)。
奏大くん:お母さんの意見を聞くと、いつも「なるほど」と思います。よき相談相手でもあります。
- – お子さんと接するときに心がけていることはありますか?
奏大くんのお母さん:子どもに寄り添い、趣味嗜好を観察・分析し、誘導をしています(自分でもストーカーみたい、と感じるときもあるのですが)。子どもが少しでも興味を示したら、家に本を置いたり図書館に行ったりしています。ただ、正解を子どもに押し付けないようには気を付けています。つい、ああしろこうしろと言いたくなってしまいますが。まずは意見を聞くように心がけています。
他には、ネガティブな出来事があっても自己肯定感を上げるように話し合い、普段から考える習慣を身に付けさせるようにしていますね。
親子で一緒に楽しむことが大切
インタビューでは、奏大くんの頑張ったことを謙遜せず、堂々と認めているお母さんの姿が印象的で、これが奏大くんの自己肯定感の高さにつながっていると感じました。
また、奏大くんの自由研究をママとパパも一緒に楽しんでいることが感じられました。パパも市役所へのインタビューのために有給休暇を取得したり家事をしたりと、頑張っているとのこと。両親が協力的だと子どものモチベーションもあがり、自由研究を通して成長する姿が見られそうです。次の自由研究は、ぜひ親も一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか?
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取材・文/峯あきら