スゴロクを楽しみながら基本的人権について学べる!【自由研究コンクール小学8年生賞】に輝いた「人権スゴロク」は、小5の長岡杏珠さんの力作!

「小学館の図鑑NEO」と「HugKum」が開催した「小学生の図鑑・自由研究コンクール」で「小学8年生賞」の【自学ノート部門】を受賞した『人権スゴロク』は、東京都の小学5年生長岡杏珠さんの作品です。今、法律や人権にとても興味があるという杏珠さん。人権という難しいテーマをどうやったらみんなに興味を持ってもらえるか、楽しんでもらえるかと試行錯誤して作ったのが「人権スゴロク」です。人権という難しいテーマを選んだ経緯や、将来の夢などを長岡さん親子に伺いました。

法律に興味を持ったきっかけはリーガルドラマ

ーー「人権」を自由研究のテーマにした理由はなんですか?

杏珠さん:小学3年生のときに学校で自主学習というのを教わり、いちばん最初に作った作品が新聞風にした「法律の世界」でした。ただそれはその年の自由研究の提出には間に合わなくて出せなかったので、今回は「人権スゴロク」を提出しました。

法律に興味を持ち、東京高等裁判所を見学。
小学4年生のときに作った「法律の世界」。

ーーもともと「法律」に興味があったんですね。

杏珠さん:私は将来、弁護士になりたいと思っています。そもそも法律や人権に興味があり、みんなに知ってほしいという思いがありました。法律や人権は難しいイメージがあるので、遊びながら学ぶためには、こうやってスゴロクにした方がわかりやすいかなと思ったんです。

ーー弁護士になりたいと思ったのはどうしてですか?

杏珠さん:母がよくドラマを見ていたので一緒に見るようになったんですが、その中でも弁護士が出るドラマが面白いと思っていました。それで父が、裁判をテーマにした漫画やこども六法などを買ってくれたことで、もっと興味が湧きました。学校が舞台のストーリーだと特に読みやすかったです。

杏珠さんのお母さん:小学2年生くらいからですかね。問題を解決するストーリーが好きみたいです。

杏珠さんのお父さん:学校でもよく仲裁に入ったりするようですし、もともとそういう気質があるんだと思います。

お父さんが買ってきてくれた漫画や小説など。

ーー弁護士になるのは大変だと思いますが、今そのために何かしていますか?

杏珠さん:例えば「こども六法」を読んでクイズを作ったり、間違えやすいところに色つけしたりなど、読んだことを理解しやすいよう、自分なりにノートにまとめています

ーー法律に興味がある中でも、今回「人権」に特化した理由はありますか?

杏珠さん:人権は、弁護士が困っている人を助けるときの土台となるものです。「人権を理解していないと人を守れなくない?」と思ったので、まずそれを完璧に理解したいと思ったんです。

学校で何か嫌なことがあったときにも、人権を守るという視点で考えたら、大体のトラブルを解決することができます。例えば憲法で保障された「学問の自由」がありますよね。授業で誰かがうるさかったときに、「みんなが勉強できる空間を作らなきゃいけないから静かにして」って言える。そんなふうに身近な問題が解決しやすくなったんです。

ーー騒いでいた子も、そう言えば納得してくれる?

杏珠さん:うーん、納得しているかどうかはわからないです(笑)。

見る人に興味を持ってもらう工夫が大事

ーー「人権スゴロク」を作る上で大変だったところと、楽しかったところを教えてください

杏珠さん:大変だったことはふたつあります。まず、私の友達にも興味が湧きやすいようなコマを作るということ。そのために、学校など身近でありそうなことを考えました。もうひとつ、ひとコマひとコマ全部に絵を描くために、絵でも説明がしやすい内容を考えるのにも苦労しました。

楽しかったのは、家族で「これはこうしたらいいんじゃない?」など、アイデアを出しあって完成させていったことです。

ーー友達や家族にも協力してもらいながら作ったんですね。

杏珠さん:はい。作っている途中や、できあがってからも家族みんなで実際に遊んでみて、検証しました。

ーーきちんと検証しながら作っているのがすごいです。

杏珠さん:スゴロクで遊ぶ人が途中で飽きないよう、「1回休み」や「○コマ戻る」などの項目も付け加えました。

ーー色もとてもカラフルに塗ってあって、ビジュアル的にも楽しいですよね。

杏珠さん:「みんな違って、みんないい」というのが、私がずっと考えているテーマなので、それを表すにはいろんな色や形を使うのがいいかなと思いました。

ペンはタイトルや枠など強調したいところで使って、色鉛筆は少し控えめな部分で使って、大事なところはマーカーで線を引く、といったように工夫しました。

ーー考えてからできるまではどのくらいかかりましたか?

杏珠さん:1週間くらい…?

ーーえ? そんな短期間ですか?

杏珠さんのお父さん:自由研究コンクールの締め切り日を知ってからの期間が1週間くらいしかなくて。でも前年に自由研究で「法律の世界」を作ったことでの蓄積があったおかげで、それをスゴロクに落とし込むというところだけだったので、何とか短期間でできたんじゃないかと思います。

ーー中でもやはり時間がかかったのはコマの内容でしょうか。

杏珠さん:はい、コマがいちばん大変でした。でもコマの内容は最初にきっちり決めて書いたので、ほとんど変えることはなかったです。絵があまり具体的じゃないなと思ったところを描き足すとかはありました。

あと、コマの順番を決めるのに悩みました。スゴロクはスタートが小学校入学から始まって、中学年、高学年、卒業と進むようにしていたので、違和感がない流れにしないといけなかったからです。

ーー特にお気に入りのコマはありますか?

杏珠さん:私はダンスをやっているので「ダンスで自由の思いを表現! 人を傷つけない限り、自由に表現することが大切(表現の自由)」のコマが好きです。

ーー「人権スゴロク」をやる人に感じてほしいことや、考えてほしいことはありますか?

杏珠さん:人権の問題は日常のすぐそばにあるということ。人権を守れば毎日笑顔で過ごせるし、笑顔で過ごせればトラブルや戦争とかもなくなっていくんじゃないかなと思います。

文「舞」両道、将来の夢は“踊れる弁護士”!

ーー普段はどんなことをしていますか?

杏珠さん:学校の休み時間はだいたい読書をしています。学校から帰ってからは塾とダンスの習いごと。ダンスを5歳から習っていて、週3回は習っていない日も練習をしています。

杏珠さんがダンスをする様子。

ーー文武両道ですね。将来は「踊れる弁護士」になるのでしょうか!?

杏珠さん:はい、将来の夢にもそう書いています。文「舞」両道がテーマです(笑)。

ーー楽しみですね! 次に自由研究をするなら、どんなテーマに挑戦してみたいですか?

杏珠さん:やっぱり人権に興味があります。いろいろ調べていたら、国連が「人権を守ろう」という取り組みをしていると聞いたので、どんな取り組みをしているのか、どのようなところで行われているのか、など具体的な部分を調べてまとめ、自由研究として出したいなと思います。

ーーまたみんなで楽しめるような形でできるといいですね。今日持ってきてくれた日本地図のパズルも、杏珠さんが作ったものですか?

杏珠さん:これは日本地図のパズルのようなものなんですけど。県のピースに川や平野も書き込んだので、この川があるのは何県? とか、クイズもできます。

都道府県を覚えるために作った日本地図。

ーーピースがバラバラなことで、県の形も覚えやすくていいですね。これは何がきっかけで作ったんですか?

杏珠さん:私はやっぱり社会が好きなんですね。中でも都道府県が好きなので、自分で覚えるために作ったんです。

杏珠さんのお母さん:遊びながら覚えるのがいいんじゃない? って。

杏珠さん:「勉強しよう!」とはあまり思わないけど、遊びながらなら覚えられるかなって。県の形に自分で切っていくことでも覚えられました。おかげで今、都道府県は完璧です!

負けず嫌いで、自己修正能力が高いところが長所

ーー法律に興味を持つ以前は、どんなことに興味のあるお子さんだったんですか?

杏珠さんのお母さん:ダンスですね。とにかく体を動かすことが好きでした。

ーー自由研究をサポートする上で、ご両親が大変だったことや気をつけたことはありますか?

杏珠さんのお母さん:期間が短い中でも、何度も修正をしたり、実際に遊んでみたりして、粘り強く最後まで取り組んでいるなと自分の娘ながら感心しました。

杏珠さんのお父さん:一回のめり込むと黙々とひとりでやるのがすごいなと。根っこが負けず嫌いで、3つ上の兄といつも張り合っているんですよ。兄は常に妹より先のことをやっているので、一生懸命負けないように喰らい付こうみたいなところがあるんです。社会が好きなお兄ちゃんに負けたくないからやっているみたいなところもひとつのきっかけだと思います。

3つ上のお兄ちゃんに負けまいと勉強を頑張る杏珠さん。

ーーこれから自由研究を決めようという小学生にアドバイスはありますか?

杏珠さん:まずは楽しみながら作ること。そしてどうやって興味を持ってもらうかを考えたときに、やっぱり遊びながら学べるものがいいのかなと思います。

あとは自分が今興味のあるものが何かを考えてみるのもいいかも。私は人生ゲームが好きだから、そこから派生してスゴロクに決めました。

杏珠さんのお父さん:掛け合わせることって大事かもしれないですね。テーマが人と似たようなものでも、それを何かと掛け合わせることによって、オリジナリティが生まれるのかなと思います。娘の場合、それが「人権」×「人生ゲーム」だったんですね。

ーーすごく参考になりそうです。最後に、お子さんの「好き」を伸ばすために心がけていることを教えてください。

杏珠さんのお母さん:本人が見たい、知りたいと言ったことは、なるべく一緒に見たり、調べたりするようにしています。

杏珠さんのお父さん:私も勉強するときは楽しみたい派で、漫画などで知識を得てきたタイプなんです。娘に資料を探すときは、必ず事前に本の内容のレベルを確認して「これなら娘の理解力に合いそう」と思ったものを購入しています。

「娘本人の前では言いづらいけど…」と杏珠さんをべた褒めするご両親。

娘は自己修正能力が高いんだと思います。ダンスでも、最初はできなくても「じゃあどうやったらできるようになるかな」と自分なりに考えて、この訓練をしたら、この筋トレをしたらいいんじゃないかと、ちゃんと考えた上で実行するんですよ。それで、実際できるようになるんです。

杏珠さんのお母さん:あと吸収力がすごいです。ダンスクラスで自分よりうまいお姉さんがいると、そのお姉さんをずっと見て吸収しているんです。だから、ランクが上のクラスに入ったほうがすごく上達するんですよ。

そういったやり方が勉強にも応用されているし、親から見てもすごく努力家だと思います。

楽しみながら学ぼうとする姿勢が表れた自由研究

なんでも楽しみながらやれば覚えられると考え、それを実行していく杏珠さんのやる気と行動力は本当に素晴らしいと思います。ぜひ「踊れる弁護士」をめざして頑張ってほしいですね!

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取材・文/苗代みほ 撮影/五十嵐美弥

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