〝日本初の古代ザメ図鑑〟執筆者は小学2年生!?【自由研究コンクール図鑑NEO賞】東京都の小2 小森園陽生さんの作品は〝書店に並ぶ日も近い〟と審査員も感激のクオリティ

「小学館の図鑑NEO」と「HugKum」が昨年開催した「小学生の図鑑・自由研究コンクール」。3653件の力作のなかから、東京都の小学2年生、小森園陽生(こもりぞのはるき)さんの古代ザメ図鑑が「小学館の図鑑NEO賞」に輝きました。
小森園さん親子に、自由研究や将来の夢、子育てで心がけていることなどを伺いました。

英語の論文から情報収集した本格的な「古代ザメ図鑑」

 小学館の図鑑NEO賞を受賞した小森園陽生さんの自由研究のテーマは「ファルカトゥス博士の“日本初”古代ザメ図鑑」。

現存しない古代ザメについて、丁寧に描かれたイラストとともにわかりやすく紹介されています。巻末にはたくさんの出典も記載された図鑑で、小学2年生の作品とは思えないほど完成度の高い本格的な図鑑でした。

自由研究コンクールの審査員のひとり、小学館の図鑑NEO  根本徹編集長からは、「〝書店に並ぶ日も近い〟と思わせる完成度。信頼できる情報源からデータを集め、絵や写真をふんだんに使って自然物を対比し、相違点をわかりやすく読者に伝える図鑑の基本に忠実な点を評価した」との選評がありました。

自由研究コンクール「小学館の図鑑NEO賞」の審査をつとめた図鑑NEO 根本徹編集長(左)、受賞者の小森園陽生さん(中央)、陽生さんのお母さん(右)

――なぜ古代ザメの図鑑を作ろうと考えたのですか?

陽生さん:サメが好きで、小学1年生の自由研究では「リンコドン博士のサメ図鑑」を作ったのですが、それを作っているときから次は古代ザメの図鑑を作りたいと思っていました。

――では、この受賞作は陽生さんがつくった図鑑の2巻目なのですね。

陽生さん:そうです。前回は現存するサメの図鑑だったので、今回は古代に存在していたサメの図鑑を作りました。

 ――古代ザメの図鑑は存在せず「日本初」ということですが、どのように情報を集めたのでしょうか?

陽生さんのお母さん:年中さんの頃に美ら海(ちゅらうみ)水族館の「サメ博士教室」をオンラインで受講していたので、その中で古代ザメについて解説してくださった沖縄美ら島(おきなわちゅらしま)財団研究センターの主査研究員、冨田武照先生の講義の録画データを見直すところから始めました。
そこで紹介された研究者がほとんど外国の方だったので、彼らの論文を検索してGoogle翻訳を使って読んだりもしました。

「小学館の図鑑NEO賞」受賞作品といっしょに記念撮影に応じる陽生さん

 

受賞作品「ファルカトゥス博士の“日本初”古代ザメ図鑑」は架空のキャラクターであるファルカトゥス博士がナビゲートする本格的な構成の図鑑

陽生さんのお母さん:サイトの探し方などは私もサポートしましたが、図鑑の内容に関しては自分で決めて取り組んでいました。
小さい頃から小学館の図鑑NEOシリーズをよく読んでいたこともあり、図鑑のなかでキャラクターを作ったのも、図鑑NEOのドラえもんの影響があると思います。

陽生さん:内容が難しすぎてなかなか見てもらえないと思ったので、みんなに興味を持ってもらう工夫をしようと、読みやすいように「ファルカトゥス博士」というキャラクターを作って案内役にしたり、目を引くように付録の年表を作ったりしました。

図鑑といっしょに作成した「付録年表」は〝目を引くため〟の展示効果を発揮
陽生さんが考案した「ファルカトゥス博士」のキャラクター紹介

陽生さん:「ファルカトゥス」は頭の上に突起がある特徴的なサメですが、このキャラクターのモデルは沖縄美ら島財団研究センターの冨田先生です。キャラクター紹介に書いたように、とても優しくて大好きな先生です。
「ファルカトゥス博士」にパソコンを持たせて、図鑑のなかで細かい部分をパソコンで映して表すなど、わかりやすくなるように考えました。

――図鑑を作るのに大変だったことを教えてください。

陽生さん:夏休み中はほぼ毎日ずっと資料集めに取り組んで、1か月半かかりました。古代ザメについての情報が少なく論文を見つけるのに時間がかかったので、図鑑の制作に取り掛かったのが8月11日、途中焦りながら制作しました。

あと、この夏休み中はもう一つ、魚の研究もしていたので大変でした。幽門垂という胃袋と腸の間にある器官の数について調べたのですが、魚屋さんで丸ごとの魚を20種類用意して研究しました。

図鑑作品とは別の魚の研究もしつつ、さらに作成していた「制作日誌」には、メイキングの詳細とデータがぎっしり

――今後やってみたい自由研究の課題はありますか?

陽生さん:小学校に提出する自由研究はすべてサメでいきたいと考えています。次はサメと人間の関係について、昔の人たちはサメとどう関わってきたか調べてみたいです。

小さい頃からいろいろな経験をさせて興味を広げるきっかけを

――サメはいつから好きなのでしょうか?

陽生さんのお母さん:2歳の時です。もともと水族館が好きだったんですが、美ら海水族館に行ったときにジンベイザメの前から離れなくて。尋常ではない様子で、そこからサメが大好きになりました。

自由研究の制作エピソードや小さい頃の陽生さんについて、お互いの記憶を確かめながら話す小森園さん親子

――子育てで心がけていらっしゃることはありますか?

陽生さんのお母さん:「まだ小さいから早すぎる」と考えずに、1、2歳の頃から美術館や博物館に連れて行ったり、音楽の生演奏を聴かせたりどこに関心を持つかわからないと思い、とにかくいろいろなものを見せたり体験させたりしていました。劇や映画なども小さい頃から見せています

サメに出会ってからも、水族館に行くなど本人が決めてやりたいということはなるべくサポートするようにしています。

――普段の陽生さんはどのようなお子さんですか?

陽生さんのお母さん:何かしていないといけない忙しい性格のようです。サメ以外にも、歴史や工作、ピアノなど興味の幅が広いので、なるべく親が口出しをせずに、やりたいことをやらせてあげようと思っています。

陽生さん:やりたいことがたまっていくんです。時間があったらひっきりなしに本を読んでいます。今読んでいるのは『吾輩は猫である』。『三国志』が好きで、これから読みたいと思っているのは『水滸伝』です。

「時間があるときは本を読む」「算数のオンライン動画教材も好き」「工作に熱中するときも」と多才な陽生さん

 

すでにライフワークにもなっているサメについては、同席した図鑑NEO編集長と専門的な話に花が咲いて・・・

将来はサメの研究者に

――将来の夢は何ですか?

陽生さん:サメの研究者です。サメの研究は今日本では難しいと聞いているので海外も考えています。 

陽生さんのお母さん:好きなことを突き詰めてほしいですね。今は子どもなのでいろいろとサポートしていますけど、将来的にはやりたいことを思いきりできるような環境を自分で作っていってほしいなと思います。

「彼の好きなことを応援する過程で私も世界が広がっているので、家族で楽しんだ結果のサメ図鑑だったと思います」と陽生さんのお母さん

小学2年生とは思えない、大人顔負けの語り口でサメの専門的なお話をしてくれた陽生さん。お母さんがお子さんの自主性を尊重しつつサポートされている対応が印象的でした。

将来のことを伺うと迷いなく夢を語っていた陽生さんの今後もとても楽しみです。

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取材・文/酒井千佳

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