【発達障害の思春期女子】制服とムダ毛処理、中学生になったら気をつけたい「身だしなみポイント」を療育アドバイザーが解説

発達障害の女の子の支援キャリア20年の藤原美保さんは、「放課後等デイサービスLuce」を10年近く運営し、発達障害の女の子とその保護者をサポートしてきました。2022年5月からは障害のある子が保護者と共に利用できる脱毛サロンを主宰されています。 サロンでは作業療法士、公認心理師が施術の際に保護者から包括的な相談に対応しているそうです。長らくLuceで「性教育プログラム」の一環として身だしなみ療育を中心に行ってきた、藤原さんに、中学校の通常学級、支援級に進学する発達障害の女の子の保護者が見落としがちな身だしなみについて教えていただきました。

触覚過敏の子が気を付けるべき制服着用ポイント

中学校への進学は環境の大きな変化が伴います。制服での生活は発達障害の子にとって、慣れるまでに時間と工夫が必要になる場合があります。

生地の素材が大丈夫かどうか

特に触覚過敏のある子にとってはスカートの「素材」は注意が必要です。特に腿のあたりに過敏さがある子は多いです。
スパッツを下に履くなど素材についてもチェックし、春休みの間に対策を考えてあげてください。

不器用な子の場合は着用時の「動作」に気を付けたいです。動きが粗野な子の場合、足が開いてしまう事もあるため、スカートの下にはスパッツを履く習慣づけておくことです。練習可能な子の場合はスカートとズボンと用意しTPOに合わせて使い分ける事がおすすめです。

更に制服は夏服と冬服があり、それぞれの素材が違うので、衣替えの時にも気をつけてあげてください。春休みに制服の着脱を練習し、その制服を着てお家から学校まで歩かせてみましょう。

セーラー服ならば、下着の丈にも気を配って

特にセーラー服は上着の丈が短いので、空いた部分から手を入れる子がいます。その影響で身体が斜めになるなど、不自然な歩き方になる事があります。下着の丈の長さは長めのものを用意してください
おすすめは家で数時間制服を着用し、行動すること。学校での動きをある程度予測できます。着衣が乱れる可能性や、制服のファスナーのスライダー部分をやたら触るなどの常同行動の傾向を観察し、対策が練られるものは対応しておきましょう。

スライダーを触ることが辞められない子には、物理的に触らせないようにするしかないので、マジックテープなどに変える事です。同時に、触るものを移行できる子の場合はブレスレットや指輪、など、その子のセンサリーニーズ(感覚欲求)に応えるセンサリーグッズを持たせるなど、双方からのアプローチが必要です。

リスク回避のために、ムダ毛の処理はしておいた方が無難です

第二次性徴期である思春期は、ホルモンの分泌の変化によって見た目の変化が顕著になり、違いが目立ってしまうと、それを攻撃されたり、からかいの対象になったりします。からかいの対象になった子は、それにより、自己肯定感が下がってしまうことにつながりかねません。

6月には衣替えとなり、夏の制服は半袖になります。保護者はわき毛の処理はまだ早いと思っているかもしれませんが、本人は自分からは見えないので手を上げたりすると他の人から見える事が解らないのです。

早い子は小学校高学年からわき毛が生えてきます。特に、毛の処理は、他の生徒との関係や本人の自尊心に影響を与えることがあります。典型的な発達の女の子の場合、自分が毛深い事を「イヤだ」と感じ、手足も剃っている子が多いです。

実際にあったケースですが、わき毛が生えて見えているのをクラスの男の子達からバカにされ学校に行けなくなってしまった子もいます。学校側はその男の子を注意しましたが、彼女は傷つき保護者はその対応に翻弄される事となりました。
本来、毛を剃るか剃らないかは本人がどうしたいかで済む問題ではあります。しかし、思春期という時期を考えると周囲の子との関係性も考慮し、本人が傷つく余計なリスク要素は取り除いておくことが無難です。

抜毛に固執する特性のある子の対策には脱毛が最適

無頓着とは反対に、毛の存在に過敏になってしまう場合もあります。「抜毛」も多い相談です。授業中に手や腕、指の毛が気になり、ずっと抜いているという子がいます。激しい子の場合、肌がざらつき毛穴が炎症起こしてしまうケースもあります。こだわりレベルになるとかさぶたをはがして抜こうとする子もいるので注意が必要です。

本人が抜毛をやめられないのは障害特性ですので変えることはできません。自分ではやめる事が出来ないので、物理的な支援としては脱毛することがおすすめです。ご家庭で出来るのは、肌が荒れないように保護者が炎症を止める薬を塗る、保湿をしっかり心がけるしかありません。

危険なのは、「これくらいはわかるだろう」という親の思い込み

発達障害のお子さんには、典型的な発達の子が当たり前にしているであろうことに支援が必要です。危険なのは「このくらいわかるだろう」という思い込みです。
思春期は周囲の子も変化します。友人と思っていた子との関係性の変化もこの時期に多くなります。発達障害の子は自分では気づかない、解らない事が多い為、自尊心が低下しやすいのです。
親はつい学習が関心事になりやすいですが、友達との関係性や動作や下着、ムダ毛の処理など身だしなみにも目を向けてあげていただきたいと思います。

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記事監修

藤原美保さん|(株)スプレンドーレ代表

健康運動指導士、介護福祉士、保育士、公認心理師。株式会社スプレンドーレ代表。

発達障害の女の子の性教育や身だしなみ教育に力を入れてきた、放課後等デイサービスLuceを2022年3月まで運営。2022年5月から、障害のあるお子さんと保護者が通う事ができ、施術中に療育相談を受けられる美容・脱毛サロンLuceを運営。発達障害のお子さんの療育アドバイザーとして相談や療育コンサル、発達障害のお子さんへのオンラインでの性教育を行う。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(エッセンシャル出版)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。

YouTubeで「子どもの対応おたすけチャンネルMamma mia」を配信中

イラスト/本田亮

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