土屋太鳳 と佐久間大介がマッチングアプリでの恐怖を描く!深すぎる愛が生み出す罪とは?映画『マッチング』【本日公開】

マッチングアプリによる出会いに仕掛けられた恐怖を、土屋太鳳やSnow Manの佐久間大介、金子ノブアキらを迎えて映画化した『マッチング』。途中からとんでもない展開となり、思わずのけぞるサスペンス・スリラーとなっています。

稀代のストーリーテラーが織りなす予測不能なスリラー

©2024『マッチング』製作委員会

映画『ミッドナイトスワン』(20)や現在公開中の『サイレントラブ』の内田英治が原作・脚本・監督を務めたサスペンス・スリラー『マッチング』が 2 月 23 日(金・祝)より公開されました。今や男女の出会いツールとしてすっかりおなじみとなったマッチングアプリを絡めた物語ですが、やはり稀代のストーリーテラーである内田監督の手にかかると、予想外のところへと連れていかれます。

©2024『マッチング』製作委員会

主演は土屋太鳳で、演じるのはウェディングプランナーとしての仕事は充実していながらも、こと恋愛においては不器用で、浮いた話もまったくない主人公の輪花(りんか)役。そして彼女とアプリでマッチングする“狂気のストーカー”永山吐夢(とむ)役を、Snow Manの佐久間大介が、輪花に想いを寄せるマッチングアプリ運営会社のプログラマー・影山剛役を金子ノブアキが務めます。

この設定だけを聞くと、ある程度ストーリー展開を予想してしまうと思うのですが、内田監督が練りに練ったという脚本なので、一筋縄ではいきません。ラブストーリー的な入口から入ったのに、気がつけば、その背後には得体のしれない何かがうごめいているような感じ。そんな空恐ろしい物語にゾクゾクさせられます。

内田監督が犯人を決めずに書き進めた脚本の成果は?

©2024『マッチング』製作委員会

ウェディングプランナーの輪花(土屋太鳳)は、親友で同僚の尚美(片山萌美)の勧めで、マッチングアプリに登録。マッチングした相手の吐夢(佐久間大介)と待ち合わせると、現れたのはプロフィールとは別人のように暗い男でした。さらに、吐夢から「次いつ会えますか?」というしつこい猛アプローチを受け、恐ろしくなった輪花は、取引先でマッチングアプリ運営会社のプログラマー影山(金子ノブアキ)に助けを求めることに。

一方、“アプリ婚”をした夫婦が次々に惨殺されていくという悲惨な事件が発生。やがて輪花の家族や友人などにも、事件の魔の手が忍び寄っていきます。次々と知られざる事実が明かされていく中で、衝撃のラストを迎えますが……!

柔らかい大人の女性から、快活で元気印の女の子まで、柔軟に演じてきた土屋さんですが、今回はどこかやさぐれた感じを醸すヒロイン役にトライ。父親(杉本哲太)と居酒屋で待ち合わせをした輪花が、駆けつけ一杯に「焼酎梅入り、ジョッキで水割り」とオーダーする姿が新鮮でした(笑)。

©2024『マッチング』製作委員会

輪花が「29にもなって、週末の飲み相手が父親なんて」と言いながら、箸で梅干しをつぶす姿がなんともリアル。このシーンで、父娘の仲の良さがうかがえますが、2人のやりとりから、母親が家を出ていってしまっていないという欠落感も漂います。また、それ以外に、本作ではいろいろな登場人物たちが、それぞれに“欠落”している部分があることが次第に明かされていきます。

オリジナル脚本の作品に定評がある内田監督ですが、今回初めてサスペンス・スリラーというジャンルに挑戦しました。内田監督は「結論としては、サスペンスは大変だと感じました。従来撮ってきたヒューマンドラマと比べ、脚本作りに倍ほど時間がかかりました」と苦労を口にしていますが、二転三転する展開はさすが!という印象です。

興味深いのは、内田監督が事件の犯人を決めずに脚本を書き進めていったという点です。そこが功を奏したのか、観る者の予想を覆すようなキャラクター設定や物語となり、前のめりになって引き込まれました。

最終的に描かれるのは「深海のように深い愛」

©2024『マッチング』製作委員会

ある人物が「僕とあなたは運命でつながっています。僕の愛はどんな深海よりも深い」という台詞があります。まぎれもなく愛の告白なのですが、このフレーズは相手との距離感や温度感によって、まったく違う響きのものとなりますよね。

とことんお調子者でラブラブなカップルの間で交わされる場合は限りなくハッピーな展開に向かいますが、本作の場合はその真逆です。よく知らない相手に、そんな重すぎる言葉を口にされたら、ちょっと引きませんか? まさにスリラーとしての醍醐味が満載で、特に中盤からのたたみかけるような流れがかなり刺激的。

やがて、クライマックにおいて、文字通り深海のように深すぎるヘビーな愛が生みだした“罪”があらわになります。

すでに実力派俳優として知られる土屋さんや金子さんはもちろん、アイドルオーラを封印して静謐な演技を魅せた佐久間さんの存在感が光っています。さらに脇を固めた片岡礼子、杉本哲太、斉藤由貴というベテラン勢も、適材適所の役どころでサスペンスを盛り上げる一端を担っているのが、内田クオリティーの作品かと。

©2024『マッチング』製作委員会

またSNS時代となり、顔も素性もわからない人たちとの交流が当たり前となった今だからこそ、いろんな課題も見えてきそう。そんな地続きの恐怖に息を呑む映画『マッチング』は、ありきたりで予定調和な映画では物足りないという方にぜひおすすめしたい映画です。

『マッチング』は2月23日(祝・金)より公開中
監督・脚本:内田英治  原作:内田英治『マッチング』(角川ホラー文庫刊) 共同脚本:宍戸英紀
出演:土屋太鳳 、佐久間大介、金子ノブアキ、真飛聖、後藤剛範、片山萌美、片岡礼子、杉本哲太、斉藤由貴…ほか
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/matching/

文/山崎伸子

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