目次
過度に運動が苦手なことと手先の不器用さが特徴のDCD
DCDは、発達障害の一種で、主な特徴は、過度に運動が苦手なことと手先が不器用なことです。たとえばボタンが留められない、はさみが上手に使えない、字を書くのが苦手、自転車に乗れない、スキップができない、縄跳びできないなどです。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害と併存しているケースが多いと言われています。
SNSで偶然知ったDCD。ウノくんにすべてが当てはまる!
ウノは幼稚園のときも小学校に入学してからも、ずっと「運動オンチ」と思われていました。私も、少し発達障害を疑ったことはあったのですが、ウノの個性と思っていました。誰からも受診を勧められたことはありませんでした。乳幼児健診でも受診は勧められませんでした。
でも小学4年生のとき、偶然SNSでDCDのことを知りました。運動が苦手、字が上手に書けない、手先が不器用などウノにすべてが当てはまります。思い立ってDCDの記事を書いた記者の方にDMを送ったところ「保健室の先生なら相談先をご存じでは」というアドバイスをもらい、すぐに小学校の養護教諭に相談に行ったのです。
DCDを疑い、養護教諭に相談
DCDは発達障害の一種ですが、まだ広くは知られていません。でも私がラッキーだったのは、ウノの小学校の養護教諭がDCDのことを知っていて受診を勧められたことでした。もし保健室の先生がDCDのことを知らなかったら、今も親子で苦しんでいたと思います。
専門医を紹介されたのは、DCDを疑っていることを伝えたから
受診のときは医師にDCDのことを私から伝えました。医師は「なんでDCDのことを知っているの?」と聞いてきました。私がSNSで知った記事と日常のウノの様子を話すと、DCDに詳しい小児科医の古荘純一先生を紹介していただきました。
後から知ったのですが、DCDは小児科医でも、知見がないことが多いのが現状だそうです。患者サイドから「DCDではないですか?」と伝えないと、診断されにくいようです。ウノは、WISC(ウィスク)という知能検査や専門医の問診を行い、小学5年生のときにDCDとわかりました。WISCはADHDやASDとの併発を確認するためで、DCDの診断は問診によって行われます。
小学5年生でDCDと診断。悶々としていた気持ちから解放される
検査の結果を聞いたとき、私は「ウノが、人一倍運動が苦手だったり、不器用だったりしたのはDCDだったからなんだ! だったらウノをサポートする方法を考えてあげないと!」という前向きな気持ちにすぐになれました。DCDとわかるまでは、誰かに相談しても「そういう子いるよね!」「男の子だから…」と言われたりして、ずっと悶々としていたんです。
使いやすい鉛筆タイプのシャーペンにするなど、学習用具を見直す
古荘先生からは「療育は就学前の子が多いことと、東京は療育の現場は限られていて、今の住まいからは遠方になるので通うのは現実的でない」と言われて、療育には行きませんでした。
そこでまず私がしたのは、学習用具の見直しです。ウノは字を書くのが苦手です。小学校では筆記用具は鉛筆と決まっていますが、担任の先生に相談して、ウノにとって使いやすい鉛筆タイプのシャーペンの使用をお願いしました。芯は折れにくい太さの0.9mmを使っています。使いやすいようで、ウノから「赤鉛筆もこれにして!」と言われて買い足しました。
「もっときれいに書きなさい!」と叱った自分を反省
ウノは、黒板をうつすのも苦手です。そのため小学校で使っているタブレットでノートをとってよいことになりました。ほかにも黒板をうつすのが苦手な子がいるようで、ウノの小学校ではそうした子にはタブレットでノートをとることを認めています。
DCDと診断される前は、「ノートをきれいにとりなさい」「ゆっくりでいいから、きれいに書きなさい」と先生から何度も注意を受けていたし、私自身も宿題を見て「もっときれいに書きなさい!」と叱ったことがあります。でも、これはウノにとってはとてもつらいことだったんです。当時のことを振り返ると、ウノ、ごめんね~という気持ちでいっぱいです。
漢字は、とめ・はねなどが曖昧。大きなマスで少しずつ練習
ウノは塾に通っていて、漢字テストがあるのですが「とめ」「はね」などが曖昧で、塾の先生から赤ペンで直されてばかりいます。そのため大きなマスのノートで少しずつ練習しています。ウノにとっては、大きなマスのほうが書きやすいのです。
今春、中学1年生になった息子。DCDを自覚して周囲にSOSを出しやすくなりました
ウノは、2024年4月から中学1年生になりました。中学校になって初めて制服を着たのですが、制服はブレザーです。ウノは手先が不器用なので、Yシャツの袖口のボタンが留めにくくて苦戦しています。でもウノとは「DCDだから無理! と初めからDCDを言い訳にしないようにしようね」と話しています。苦手なことでも、ちょっと工夫すれば自分でできるようになることもあります。
また最近、ウノはまわりの人にSOSを出せるようになりました。DCDとわかって、自分の特性を理解したからSOSが出しやすいんだと思います。自分が苦手なことは「一緒にやってくれる?」「もう少しゆっくりやってくれる?」と頼んだりしているようです。
DCDとわかってから、息子に寄り添えるようになりました
もし「うちの子もDCDかも…」と思い、受診をするときは先ほども話しましたが、こちらから「DCDではないでしょうか?」と医師に伝えたほうがいいようです。DCDは広く知られている発達障害ではないので、医師も「DCD」と言われないと疑わないことがあると聞きました。
私は、ウノが小学校に入学する前、発達障害を疑ったことがあったのですが、そのときは受診するのが怖くて、病院に行けませんでした。診断名がつくことが怖かったんです。でもDCDとわかってから、ウノに寄り添えるようになりました。ウノも自分の特性を理解することで「なんで僕だけできないの?」というジレンマから解放されて、気持ちがラクになったようです。
ウノくんの幼少期の様子はこちらの記事を
オチョのうつつさんの著書はこちら
ただの運動オンチと思っていた息子のウノくんは、実はDCDだった!幼児期の様子からDCDの診断を受けたあとまでのエピソードをマンガで描く親子の成長物語。DCDの解説も収録。オチョのうつつ/著、古荘純一/ 監修 1760円(合同出版) 詳しくはこちら
DCDの専門家・古荘先生の記事はこちらから
取材・構成/麻生珠恵