充実の授業が公教育でかなう!岡山県総社市は子育てファミリーにとって最高の環境
前編では「英語教育特区」の岡山県総社市で、お子さん3人を小学一年生から特区指定校へ越境入学させているママにインタビュー。学校の印象や、お子さんたちの様子について伺いました。
▼前編はこちら>>
この後編記事では、総社市の教育委員会学校教育課の竹花さんにインタビュー。現在の施策や、「英語教育特区」となって10年目を迎えて見えてきた成果について伺いました。
また、総社市が「英語教育特区」に名乗りを上げた背景には、過疎化対策も見据えてのことだったため、この記事の後半では、総社市の人口増進室の西野さんにもお話を伺って、総社市の人口の変化や移住情報もご紹介していきます。
小学校・中学校の9年間で、一般校より250時間多く英語の授業を展開
――2014年からスタートした「英語特区」も今年で10年目を迎えられました。現在、総社市内で、英語教育特区としての教育を行っている幼稚園・学校を教えてください。
総社市教育委員会学校教育課・竹花さん(以下竹花):「英語特区」の対象幼稚園・義務教育校があるのは、「昭和地区」「池田地区」「新本地区」「山田地区」の4地区です。
どのエリアにおいても幼稚園と小学校と義務教育学校が連携して、一貫性のある特別な英語教育を提供しています。英語特区の対象義務教育校では、小学校と中学校の9年間で、一般の義務教育校より250時間多く英語を学ぶようなカリキュラムが組まれています。
――「池田地区」は「体育・英語特区」、「新本地区」は「音楽・英語特区」となっていますが、これはどのような特区になるのでしょうか?
竹花:2つの地区では英語教育に加えて、それぞれ体育教育と音楽教育にも力を入れています。「池田地区」では、運動を通して体を動かす心地よさを十分感じ、健康に生活する力を育む体育教育のカリキュラムが、「新本地区」では、幼少期から生の楽器演奏に触れるなどして、音楽に親しみ、豊かな感性を育む音楽教育カリキュラムが組まれています。
「昭和五つ星学園」では青山学院大学と提携。スピーチやプレゼンテーションを採り入れた授業も
――なるほど。今回は「英語教育特区」の教育内容について詳しくお聞きしたいので、では「昭和地区」の「五つ星学園」に絞ってお聞きしたいと思います。この学校はどのような学校なのでしょうか?
竹花:「五つ星学園」は、2014年から幼小中一貫教育を進めてきた5校園(総社市立昭和幼稚園・維新幼稚園・昭和小学校・維新小学校・昭和中学校)の愛称です。幼稚園から中学校までが連携して、一貫性のある特別な英語教育を提供することで、豊かなコミュニケーション能力と国際的な視野を育む人材を育成することを目指して教育を進めてきました。
――どの対象園・学校にもALTが常駐して、英語教育を行っているのですよね。授業では特別な教科書を使っているのでしょうか? また、授業料などはどうなっていますか?
竹花:まず、授業料は義務教育ですので一般校と同じく無料です。そして、英語の授業で使っているのは、一般の学校と同じ教科書を使っていますので、学んでいる内容もとくに変わっていません。
ただ、最初に申し上げましたように9年間で250時間多くの時間を英語教育に費やしていますので、その分、ALTを交えてのスピーチやプレゼンテーションの時間を多く取っています。
また、「五つ星学園」に関しましては、当初から総社市と青山学院大学と包括提携を結んで、同大の講師が指導と支援を行っています。
――英語の授業を250時間多く取るということは、ほかの教科の授業時間を削っているのでしょうか?
竹花:いいえ。ほかの教科は教育指導要領にある通り、一般校と同じ授業数を行っています。一般校より多い250時間という英語の授業に関しては、総合的な学習の時間を使って授業を行っています。
オーストラリアの姉妹校との交流やホームステイ事業、英検講座など、授業以外にもさまざまなアプローチ
――国語や算数など、他の主要教科もしっかり学んだ上での英語教育なんですね。英語教育に関連して、ほかに特徴的なことがあれば教えてください。
竹花:授業ではありませんが、オーストラリアの姉妹校と手紙や絵、写真、習字などを定期的に送るという、文字や作品を通して交流をしています。学園の生徒さんたちは英語でメッセージを書いて送っているのですが、オーストラリアの生徒さんたちも日本語を添えて送って来てくれるんです。こうした交流を続けることで、生徒たちは皆、オーストラリアの生徒さんたちに親近感が湧くようで、とても楽しんでいます。
また、総社市が行っている海外ホームステイ事業の参加選考で、「昭和五つ星学園枠」を設けています。選考は作文と面接で行われているのですが、今年は12名参加中、3名が「昭和五つ星学園枠」として参加しています。ホームステイにかかる費用は、半分を市が負担しています。
英検対応の講座を設けているのも「昭和五つ星学園」ならではのものです。それと、幼稚園では英語のイベントを行っています。ハロウィーンやクリスマスに、ALTの先生方と英語で触れ合っています。
英語に高い興味をもつ子どもが多数。話す力・伝える力も身につく印象
――さまざまなアプローチで、英語を学べるのですね。「英語教育特区」となってから10年が経ちますが、これまでの経験を通しての実感や成果があれば教えてください。
竹花:これは「昭和地区」の小学校の先生にお聞きしたことなのですが、幼稚園で英語を学んできた子どもと、学んでこなかった子どもとでは、英語に対する興味が異なって、英語に触れてきた子どものほうがより英語に興味があるそうです。また、英語特区の中学校から一般の高校へ進学した生徒の感想として、「英語の授業が楽に感じた」という声も耳にしています。
ほかにも、英語特区以外の小学校から旧昭和中学校へお子さんを入れた保護者の方からの感想なのですが、生徒たちが「しっかりと話す印象がある」というご感想もありました。これは、私の個人的な意見ですが、英語の授業でスピーチやプレゼンテーションをする機会に恵まれているため、話す力や人に伝える力が身についているのではないでしょうか。
就園・就学は全国どこからでも可能! 10年間で総社市への注目度もアップ
――お話をお聞きしていると、無理なく自然に子どもたちが英語に触れ、楽しく学んでいる様子が目に浮かびます。学区外からの就園・就学も可能なんですよね。
竹花:総社市の教育特区の学校園は市内だけでなく、総社市外および全国からの就園・就学を受け付けています。ぜひ、ご興味があればお問合せいただけたらと思います。
現在、教育特区の対象校に通う生徒の41.6%が総社市外や市内の学区外から通学をしている子どもと、就園・就学のために総社市へ転居してきた家庭のお子さんです。(令和6年10月1日現在)3年前は約3割程度でしたので、このデータを見る限り、注目度がアップしている気がします。
――「英語教育特区」に名乗りを上げたのは、過疎化対策も考慮してのことだと聞きましたが。
総社市人口増進室・西野さん(以下西野):はい、「英語教育特区」に名乗りを上げた背景には、総社市から海外に羽ばたく人材を育てたいという想いもありましたが、「英語特区」になることで注目を集め、過疎化や少子化対策になればという想いもありました。
――この10年間で人口増加の兆しはありましたか?
西野:学区内の人口のみについて言うと回復しているわけではありませんが、自然減を加味し、英語特区校での学区外からの生徒数の割合が増えていることを考えると、総社市へ移住したいという志願者は増えているのではないかと思われます。
総社市は‶ほどよく田舎で、ほどよく都会〟のまち
――総社市のホームページなどを拝見しますと、自然も豊かで五重塔などがあって風情がありますね。
西野:五重塔は備中国分寺のもので、総社市のシンボルです。市内には、日本100名城の「鬼ノ城」をはじめ、寺社仏閣や古墳があって歴史が感じられます。また、緑も多く、美しい川が流れ、平野が広がっています。
その一方で、総社市は岡山市と倉敷市に隣接しているだけでなく、市内にJR伯備線と桃太郎線と井原鉄道の3路線が通っていてアクセスもいいんです。日常生活に必要な買い物は市内でできるので、‶ほどよく田舎でほどよく都会〟なんです。
――子育て支援に関してはどのような状況でしょうか?
西野:市内には、子連れで遊べる公園やスポットも多数ありますし、親子の交流ができる「つどいの広場」や「子育て支援センター」も設置されています。公立幼稚園では給食がスタートしていますし、中学生は給食が無料となっています。
この7年間で115世帯、320人が移住の相談に来ていただいていまして、相談後に移住もしくは定住しています。都会に比べると不動産価格が手ごろなので、倉敷市や岡山市からの転入組も多いんですよね。2023年のデータでは、人口転入数は県内1位でした。
1日3000円で1~13泊できる「お試し住宅」も用意していますので、興味を持たれた方は、ぜひ一度足を運んでいただけたら幸いです。ご相談はいつでも受け賜わります。
――土地勘のある地元周辺からの転入者が多いということは、本当に住みやすい町なんだと思います。しかも、英語教育が幼稚園から無料で受けられるなんて、本当にうらやましいです! 今日は本当にありがとうございました。
前編はこちらから>>
岡山県総社市 「英語特区」に関する情報→「英語特区」はじまりました
移住に関するお問合せ→移住・定住
文・構成/山津京子