お話を聞いた方 鎌倉市長 松尾崇(まつおたかし)さん
1973年9月6日 鎌倉市生まれ。西鎌倉幼稚園、西鎌倉小学校、鎌倉学園、日本大学を卒業後、日本通運(株)で勤務。その後、鎌倉市議、神奈川県議を通算8年間勤め現職。家族は妻と娘3人。趣味はジョギング・山登り・スノーボード
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観光客の傾向は、近年はSNSの影響で若者と外国人が話題の場所に集中して来訪
――新聞やテレビなどの報道では、多くの観光客がいま鎌倉に訪れているようですが、いったいどのくらいの人数にのぼるのでしょうか?
松尾崇市長(以降松尾):鎌倉市は昔から多くの観光客の方たちに訪れていただいていますが、直近20年で見ると、最高では一年間で延べ2000万人を超えることもありました。コロナ禍でいったん少なくなりまして、コロナ後の現在は、延べ1200万人となっています。
また、コロナ禍前とその後で、鎌倉市を訪れる観光客の方たちの特徴には変化がある気がします。コロナ前はどちらかというと高齢者の方が市内のハイキングコースを歩くパターンが多かったのですが、コロナ後は若い年齢層と外国人の方たちが市内の観光スポットを局地的に訪れるパターンが増えた気がします。人気があるのは、鎌倉高校前からの海岸線沿いや、市街の鶴岡八幡宮、小町通りなどです。おそらくアニメ作品やSNSの影響が大きいのではないかと思います。
特典付きの「パーク&ライド」と「鎌倉フリー環境手形」を展開中
――そんな状況の中で、「オーバーツーリズム」に関しては、どのような取り組みをなさっているのでしょうか?
松尾:神奈川県の南東部に位置する鎌倉市は、東西8.75㎞、南北5.20㎞。約40k㎡の比較的小さな街ですが、鎌倉駅周辺をはじめとする特定の場所に観光客が集中するため、交通安全の確保をすることが重要な課題でした。そこで、観光客が集中する鎌倉高校前や鎌倉駅東口、八幡宮前の交差点、小町通りに交通誘導員を配置して、交通の安全を図っています。
また、これはかなり以前から行っていることですが、交通渋滞の緩和を目的として自家用車で鎌倉へ訪れる方たちに向けて「パーク&ライド」を推進しています。具体的には、鎌倉地域の周辺にある4カ所の駐車場に車を駐車してもらい、江ノ電などの公共交通機関に乗り換えて目的地に向かってもらうようにして、「歩く観光」と「分散型観光」をお願いしているんです。利用の方には、駐車料金の割引と江ノ電の1日フリー切符などの特典を設けています。
また、それに加えて、「鎌倉フリー環境手形」も販売しています。これは、鎌倉地域内の観光スポットを広くカバーした5つの路線バスと指定区間を運行する江ノ電が1日自由に乗り降りできるフリー切符で、自動車交通量を削減して、交通環境の改善を図る目的で販売しています。
「パーク&ライド」と「鎌倉フリー環境手形」を利用された方は、約70カ所ある協賛店や寺社などで割引や粗品進呈の特典も受けることができる(大船を除く)ようになっているのですが、どちらも交通渋滞の緩和に成果をあげています。
さらなる交通渋滞の緩和を目指して、この10月からは「鎌倉へ公共交通で来てください」と呼びかける広告も展開しています。
言葉がわからなくても意味がわかるピクトグラムで迷惑行為をアピール
――観光客が集中する場所にピクトグラムを設置して、マナーの向上を図っているとお伺いしました。
松尾:ピクトグラムの設置は、公共の場におけるマナーの向上を促して、良好な環境の保全や快適な生活環境を維持することを目的として設置したものです。「車道において立ち止まるなど車両の通行の妨げになるような方法で撮影を行うこと」や「山道など通行用に提供されている場所から、その場所の外へ立ち入ること」などマナーに反する行為を、言語ではなくピクトグラムで視覚的に表わすことで、日本語がわからない人でもそれを理解してもらおうとして設置しました。
なぜなら、外国の方も悪いことをしようと思って訪れているわけではなく、日本ではどんな行為が迷惑となるのかを知らない人が多いんですよね。ピクトグラムはそれを伝えるために設置しました。効果は徐々に表れていますが、課題はまだたくさんあります。今後も、日本の文化を伝えることには注力していきたいと考えています。
「鎌倉観光公式ガイド」【鎌倉市観光協会 | 時を楽しむ、旅がある。~鎌倉観光公式ガイド~ トップページ 】や、観光パンフレットなどは日本語以外の言語にも対応した情報を掲載していますので、ぜひご覧いただきたいですね。
鎌倉市が目指しているのは、誰もが「住んでよかった、訪れてよかった」と思える、成熟した観光都市の実現です。後編では、アジア初にして日本で初めて鎌倉・由比ガ浜海水浴場が取得した「ブルーフラッグ認証」や「クリーンアップかまくら」、市庁舎に隣接する「ビオトープ」などについて話を伺いました。
https://hugkum.sho.jp/654405
文・構成/山津京子