月面着陸の歴史と始まり
月面着陸は旧ソビエト連邦(ソ連、現ロシア)とアメリカが中心となって始まっています。これまでの歴史と、その始まりについて確認しましょう。
ソ連の無人月面着陸
ソ連は宇宙開発に力を入れ、月面着陸にも成功しています。ソ連が行った「ルナ計画」の主な成果は、以下の通りです。
・1959年9月:ルナ2号が月面に到達
・1959年10月:ルナ3号が月の裏側の撮影に成功
・1966年1月:ルナ9号が月面軟着陸に成功
・1966年12月:ルナ13号が月面軟着陸に成功
・1970年9月:ルナ16号が月面軟着陸に成功し、帰還

ルナ計画では多くの無人探査機が月に着陸し、一部は標本やデータを採取して帰還しています。その後も1976年まで無人探査機が打ち上げられていましたが、ルナ24号の月面軟着陸が成功し、帰還したのを最後に計画は途絶えていました。
2023年にはロシアが月面探査のプロジェクトを再開し、ルナ25号を打ち上げましたが、月面に衝突し着陸は失敗しています。
参考:ルナ計画 | 天文学辞典
アメリカの「アポロ計画」による有人月面着陸
アメリカは、ソ連の宇宙開発と同時期に月面探査のプロジェクトを開始しています。月への到達はソ連が先に果たしたものの、初の有人着陸に成功したのはアメリカです。
1966年5月に打ち上げたサーベイヤー1号で、無人月面着陸に成功しています。その後、有人月面着陸を成功させるためのプロジェクトを経て、1969年7月にアポロ11号で有人月面着陸を成功させました。

アポロ11号が月面着陸を成功させた後も、1972年12月までアポロ計画が継続し6回の有人月面着陸を成功させています。
各国の無人月面着陸の状況
現在、月面着陸は各国でプロジェクトが組まれています。無人月面着陸に成功した国の例と現在の状況、今後の予定を確認しましょう。
中国の「嫦娥3号」が無人月面着陸に成功
中国は旧ソビエト連邦とアメリカに続いて、無人月面着陸を成功させています。主な成果は、以下の通りです。
・2013年12月:嫦娥3号が月面軟着陸に成功
・2019年1月:嫦娥4号が月の裏側へ軟着陸成功
・2024年6月:嫦娥6号が月の裏側への軟着陸に成功

月の裏側への着陸はこれまで難しいとされていましたが、2024年にはデータやサンプルを採取して探査機が帰還しており、研究が進んでいます。
また、中国は2030年までに有人月面着陸の成功を目指しています。有人月面探査車の開発も進められているそうです。
参考:嫦娥3号、37年ぶりの月面軟着陸に成功|株式会社アストロアーツ
インドの「チャンドラヤーン3号」が無人月面着陸に成功
インドは、中国に続いて世界で4番目に無人月面着陸を成功させています。
2023年に「チャンドラヤーン3号」が月の南極に着陸し、注目を集めました。月の南極への着陸成功は世界で初めてのことです。

インドは、2040年までに有人月面着陸を行うとしています。2035年には宇宙ステーションを建設する予定です。月面探査だけでなく、将来的には火星や金星の探査も視野に入れていると首相が方針をコメントしています。
参考:世界で4番目に月着陸に成功したインドの「チャンドラヤーン3号」、JAXAとインドの国際共同計画とは? – Yahoo!ニュース
日本の「SLIM」が無人月面着陸に成功
日本は、世界5カ国目の無人月面着陸を成功させています。2024年に「SLIM」が着陸し、データを採取しました。着陸の目標地点との誤差が少ない「ピンポイント着陸」を成功させたことが、SLIMの評価ポイントです。

SLIMは、設計上過酷な月の環境に耐えるだけの耐久性はないとされていたため、数日間の運用を計画していましたが、予想よりも長期間稼働し、3カ月後に運用終了となっています。
SLIM以外にも、民間企業の「ispace」が月面着陸成功を目指し、無人着陸船を打ち上げました。順調に行けば、2025年6月6日ごろに月面に着陸する計画が立てられています。
参考:“日本初の月面着陸に成功” 探査機「SLIM」運用終了 JAXA | NHK | 月面着陸
アメリカの民間企業による月面着陸の成功例
アメリカでは過去に、NASAによる無人月面着陸、有人月面着陸の計画が進められていましたが、現在では民間企業も無人月面着陸に成功しています。
2024年には民間の宇宙企業「インテュイティブ・マシーンズ」によって、無人月面着陸に成功しました。無人着陸船の名称は「Nova-C(愛称:Odysseus)」です。
2025年には、民間宇宙企業「ファイアフライ・エアロスペース」によって無人月面着陸が成功しています。無人着陸船の名称は、「Blue Ghost」です。
2025年4月時点では、月面着陸に成功している民間企業はアメリカの2例となっています。
出典:米企業が月面着陸に成功 民間企業で世界2例目 開発競争進む | NHK | 月面着陸
「アルテミス計画」とは

有人月面着陸の計画は、さまざまな国が主導しています。中でも「アルテミス計画」には日本も関わっており、注目度の高い計画です。基本的な概要や計画の流れを確認しましょう。
アメリカが主導する有人月面着陸の計画
アルテミス計画はアメリカが主導する有人月面着陸の計画で、さまざまな国が関わっています。
2020年の計画発足当初はアメリカ・日本・カナダ・イギリス・イタリア・オーストラリア・ルクセンブルク・UAEの8カ国がアルテミス合意に署名しました。現在は30カ国以上が署名しており、大規模な計画となっています。
ミッションの1段階目として、アルテミス1は2022年11月~12月に実行され、無人での月周回飛行に成功しました。今後、有人月面着陸を含むミッションが7段階目まで行われる予定です。
月面の開発や滞在環境を整備することが目的
アルテミス計画は、有人月面着陸を成功させるだけでなく、月面の開発や滞在環境を整備することが目標とされています。将来、ほかの惑星の探査を進める上でも月面の開発は重要です。月に拠点を置くことができれば、宇宙開発は進めやすくなるでしょう。
現時点では、2026年4月に有人月周回試験飛行を行い、2027年半ばには女性初の月面着陸が達成される見込みです。
女神の名前を冠したアルテミス計画は、女性初の有人月面着陸を目指していることでも注目を集めています。
月面着陸における課題
無人着陸船での月面着陸、有人月面着陸、どちらの場合であっても、課題は残されています。現在、月面着陸を行う上で、どのような問題があるのか、主な例を紹介しましょう。
着陸成功までに膨大なコストと時間がかかる
月面着陸を行うには、ロケット開発や打ち上げなど、さまざまな工程があります。計画を立て、開発や打ち上げを行うには、膨大なコストと時間が必要です。
特にロケット打ち上げや着陸段階での失敗はまだまだ多く、1回で成功するとは限りません。コストや技術面の問題で、開発がスムーズに進まないこともあります。
計画が延期や中止になることもあり、月面着陸は難しいミッションです。簡単に成功するわけではないため、課題が残っているといえるでしょう。
滞在のための環境整備やスペースデブリの問題などがある
月面着陸に成功したとしても、月は人間が生きていける環境ではありません。特に有人着陸の場合は、環境整備が必要です。
長期の探査や月面の開発を行う上では、宇宙飛行士の健康面やトラブル対策など、さまざまな課題を解決しなければなりません。
また、打ち上げたロケットがうまく軌道に乗らない場合や、運用終了後に回収ができない場合には、スペースデブリ(宇宙ごみ)となってしまう問題も指摘されています。

月面着陸の歴史と今後の展望
人類が初めて月面着陸に成功したのは、1969年のアポロ11号によるプロジェクトによるものです。それ以前にも、無人での月面着陸はソ連とアメリカが行っています。
現在では中国・インド・日本も無人月面着陸に成功しており、アメリカでは民間企業によるプロジェクトが成功するなど宇宙開発は進んでいるといえるでしょう。
現在はアルテミス計画をはじめ、さまざまな国が有人月面着陸のプロジェクトを進めています。今後、有人での月面着陸が行われるのもそう遠い時期ではありません。
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構成・文/HugKum編集部