※本記事では「保育所」を通称の「保育園」と表記します。
ここを見落とさないで! 保育園選びのチェックポイント4選
(以下、近藤敏矢さん談:)厚労省などが示している基本的なチェックポイントを一通り押さえた上で、注意したいポイントをご紹介します。見落としがちなこともありますので、ぜひ基本のチェックリストを補完する形で参考にしてみてください。
1.幅広い選択肢から情報収集しているか
できるだけ早い段階から情報収集を始めてください。
子どもを預けられるサービスには、保育園以外にも認定こども園、小規模保育事業、幼稚園、認可外施設、ベビーシッターなど複数あります。保育園にこだわり過ぎず、幅広く最適なサービスを探しましょう。
また施設種別ごとに手続きや窓口、締め切りが異なりますし、同一種別でも施設ごとに雰囲気や保育内容は異なるため、入念にリサーチを。そして必ず現地にて自分の目と肌で確認してください。
2.苦情解決の仕組みは整っているか
保育園は社会福祉法第82条にて、苦情解決の仕組みの整備が義務付けられています。
園内に苦情解決責任者、受付担当者、第三者委員が掲示されているか、第三者委員は信頼できる組織団体か、手順・記録が公開されているか、誠意があり透明性の高い運営になっているかを確認しましょう。

3.子育てをお互いに助け合える環境はあるか
保育園は公的サービスの一種ですが、防災でよく指摘される「自助・共助・公助」の中では「公助」にあたります。
保護者の子育ては「自助」。そして「自助」と「公助」の間には、近隣が互いに助け合って子どもを守り育てる「共助」が大きな役割を果たします。
保育園にまつわる主な「共助」は、同じ保育園に通う他の保護者同士で助け合うこと。よって他の保護者の雰囲気やその家庭の保育園までの距離といった子育てをお互いに助け合える環境や、保護者同士をつなぐ行事などがあるかの確認も大切です。
4.「業務締結」の視点~経営状況やコンプライアンスはどうか
よく勘違いされることですが、保護者は「保育の受け手ユーザー」、保育園は「保育のサービス提供者」ではありません。入園は、大切なお子さんの生活を支える重要な「契約」行為です。「家族」という大切な事業を支えるために、一部業務を外部委託する視点で、「保育園」を事業組織として確認することも大切です。
「経営状況は? コンプライアンスは? 理念は? リスク管理は? 事業継承は?」
会社が取り結ぶ契約的な視点から見つめ直すと、これまで気づかなかったことが見えてくることもあります。
見学時に保育園側と話をするときのポイント

(近藤さん:)見学の際には、ぜひ保育士や職員、園長などと直接会話をしてみてください。
日々の生活リズムや持ち物を具体的に確認しましょう。特に、お昼寝用布団の準備や使用済みおむつの持ち帰りの必要性などは必ず確認を。そして卒園までの費用内容と金額、行事時の時間負担も忘れずに確認しておくとよいです。アレルギーや発達に特徴のある場合は、包み隠さず丁寧に説明し、園での対応状況を聞きましょう。
また職員については、質の高い保育のために一定の経験年数は重要です。しかし保育は職員の個人プレーではなく、全員での協力で成り立つものです。そのため経験年数も含め、性別や年代などが多様な構成になっていることも大切なポイントです。
保育士ご自身の子育て経験や、結婚出産時の園での就業規則等も、保育に影響を与えます。働きながら子育てを行う保護者の立場や気持ちに寄り添ってもらえるかどうかを、話の中から感じ取ってください。
認可外保育所の選び方の注意点
(近藤さん:)認可外保育所は、認可保育所と何がどう違うのかと気になる方は多いでしょう。保育内容は、認可の有無よりも施設ごとの差異のほうが大きいので、保育の質は同程度と思ってもらってかまいません。特徴的な保育内容のため、結果として認可外を選択される方もいます。
ただし、認可保育所と認可外保育所とでは制度が異なるため、手続き、特に費用の面では注意が必要です。
また、認可施設では複数の認可施設の同期間利用が基本的に不可ですが、認可外施設であれば利用可となる場合もあります。里帰り出産時にやむをえず地元近くの認可外保育所を利用するなど、保護者の都合により、一時的に認可外の施設利用が想定されるためです。
認可外施設の充足状況は、地域により大きな差があります。保育を希望する地域で、保育施設がどの程度充実しているか、定員にどの程度の空きがあるのか、注意を払いながら情報収集に努めてください。

まとめ~最良の保育園入園のためにアンテナを高くして
(近藤さん:)社会的に待機児童問題はほぼ解決されたものとされ、報道でも取り扱われることはなくなりました。しかし一部地域では相変わらず、入所の難しい状況は残っています。
また出生数の減少に伴い、経営が困難となった保育園が閉園となり、今後、新たな入所問題が生じかねない傾向が出てきています。
日頃から保育園の情報にアンテナを高くしていただき、大切なお子さんにとって最も良い保育園に入園できるよう、できることから早めに対応を進めてください。
また今回ご紹介したチェックポイントを取り入れるとすれば、保活はただの“保育園選び”にとどまらない有意義なものとなるでしょう。公的サービスや共助の考え方など、幅広い視点、手法、知識が得られると思います。それらは今後、大きな強みになると思います。転勤や引っ越し等で再度、保活をせざるを得ない状況になったときも役立つでしょう。
『ここが変だよ、保育園』

こちらの記事もおすすめ

お話を伺ったのは

社会福祉法人みなみ福祉会理事長。保育園や子育て支援拠点等を運営する中で、保育現場の実情と制度のギャップを可視化し、保護者や社会に伝える活動を行っている。著書に『ここが変だよ、保育園』や『親が知らない保育園のこと』がある。
構成・文/石原亜香利