【不登校経験者への調査から】「いわれて傷ついた言葉」「励みになった言葉」157件から考える、当事者との向き合い方

学期のはじめや長期休暇明けにわが子が不登校になった、不登校のサインが見られるようになった、という保護者もいるかもしれません。親自身が不安になって、余計な言葉を子どもにかけてしまい、かえって問題を悪化させてしまう事態は避けたいところ。
そこで今回は、HugKumが不登校の実態に関する調査を独自に行い、自分自身やわが子に不登校の経験をもつ200人以上の人たちに、周りから言われて励みになった言葉、傷ついたり不愉快になったりした言葉についてきいてみました。膨大な数になりましたが、可能な限り掲載します。ぜひ、生の意見を参考にしてみてください。

子どもを追い詰める「避けたい言葉」とは

不登校に至る経緯は人それぞれ、励まされる言葉や傷つく言葉もそれぞれに異なると考えられます。しかし一方で共通点も存在するに違いありません。

HugKumでは、アンケートに回答してくださったメルマガ会員のなかから、不登校の経験がある200人以上の方たちに「不登校期間中、周囲にかけられた言葉で、傷ついたり不愉快な気持ちになったりしたネガティブな言葉は?」と聞いてみました。

回答の中に少数含まれていた「なし」は除外し、重複した回答はまとめました。長さにばらつきがある回答は見やすさを優先してキーワードを抽出し、直感的に理解できるように整理しました。その上で、ジャンルごとに分類しています。

今回の調査では、自分自身が不登校を経験した当事者としての回答、およびわが子が不登校を経験した保護者としての回答が入り混じっています。あらかじめご了承ください。

【調査概要:調査期間/2025年4月18日~5月7日 調査対象/小学生のお子さんをもつHugKumメルマガ会員 480人】

社会的な圧力や正論の押しつけ

  • みんな行ってるんだよ(女性/鹿児島)
  • 学校に行かせないと将来大変、困ることになるという論調(女性/千葉)
  • 学校に行かないとどうなるか(女性/東京)
  • やっぱり行かないといけない(女性/埼玉)
  • 明日は絶対に行きなさい!(女性/長野)
  • 学校に行かないとどうするの?(女性/長崎)
  • あと1日休んだら留年だよ(女性/東京)

いじめや学校内での出来事に関する不適切な対応

  • 嘘つき、よそ者、根性なし(女性/大阪)
  • 自分自身の身体の大きさが人より大きかったゆえの容姿いじりの言葉(男性/東京)
  • いじめにあう理由(女性/福井)
  • いじめの原因と考えられる行動(女性/青森)
  • 担任の子どもへの問題ある言動をなかったことにされた(女性/福島)
  • いじめの張本人である担任に、「学校に来ると具合が悪くなっちゃうんだろうね〜」と言われた(女性/京都)
  • いじめにあっているときに親や教師に言われた言葉(女性/東京)

親や家族からのプレッシャー・無理解

  • 先生に言うほどのことじゃない(女性/愛媛)
  • なんで来ないの? という質問をされたとき、はっきりと理由が述べられなくて、そんな自分に傷ついた(女性/兵庫)
  • お母さんはあなたしかいないんだから(女性/佐賀)
  • あなたの(不登校の)せいで体調や気分が悪くなったから病院に行ってくる(女性/神奈川)
  • 親から学校には行くべきだと言われた(女性/神奈川)
  • 自分から行けばいいのよ(女性/千葉)
  • 親が無関心(男性/埼玉)

学校や教育関係者からの無理解・一方的な言動

  • 学校に行かないと将来苦労するよ(女性/千葉)
  • 学校に行かない理由を説明できないことの苦しさ(女性/千葉)
  • 学校に行かせないと困る(女性/東京)
  • 校長からは、担任の子どもへの問題ある言動をなかったことにされた(女性/静岡)
  • なんで来ないの?という質問をされたとき、はっきりと理由が述べられなくて傷ついた。理由がハッキリわからないことも苦しかった(女性/東京)
  • 体調が悪化しているのに、担任から「林間学校だけは行こうよ」と自宅に来て粘られた(女性/大阪)
  • 太ったことをカウンセラーに相談したら、「そこまで太ったわけではないでしょう?」と決めつけられた(女性/神奈川)
  • 一方的に学校に行くようにすすめられ、話も聞いてくれなかった(女性/鳥取)

社会的な孤立感

  • 自分自身が浮き上がって感じる孤立(女性/福岡)
  • 近づいてこないでほしい!(女性/千葉)
  • 「学校=行くべき場所」という前提を保護者や教師が持っている(女性/東京)

印象的な言葉が並びました。「学校=行くべき場所」という前提を保護者や教師が持っているため、学校に行かないと困るという言葉が、ネガティブな感情を子どもに与えるケースが目立ちます。

わが子にかけたい言葉

では逆に、子どもたちを勇気づけたポジティブな言葉は、どんな言葉なのでしょうか。

【励まし・肯定の言葉】

  • 大きな一歩進んだね!(女性/神奈川)
  • 生きてるだけでもいいやん(男性/和歌山)
  • ゆっくりで大丈夫。自分のペースで(女性/福岡)
  • 人生いろいろ(女性/東京)
  • 無理に通学しなくても、良いんです。そのままで良いんです(女性/東京)
  • 学校がすべてじゃないよ(女性/福岡)
  • あなたが悪いわけではないよ(女性/愛知)
  • 十分がんばってるよ(女性/大阪)
  • 気持ちが楽になる方を選んでみよう(女性/兵庫)
  • 子どもを育てるのは学校ではなく、親だから(男性/静岡)
  • 気持ちが落ち着いてから考えようね(男性/岐阜)
  • 焦らないでね、と励ましてもらえたときです(女性/山梨)
  • 「流れに逆らわず、生きたらいいよ」という母の言葉(女性/新潟)
  • 行かないことより、どうしたいかを大事にしていこう(女性/東京)
  • しょうがないよ。まだ1年生だし(女性/東京)
  • 一緒にがんばろう(女性/神奈川)
  • 悪くないよ(女性/千葉)
  • あなたは一人じゃないよ(女性/栃木)
  • 自分が思ってるほど気に病まないで(男性/山口)
  • 優しいから怖くない・いつも勉強教えてくれてありがとう(女性/広島)
  • 大好きだよ(女性/京都)
  • みんなそれぞれ(女性/秋田)
  • あなたの味方だからね(男性/東京)

【共感・寄り添い】

  • 今はお休みした方が良いってことかな。ずっとがんばってたもんね(女性/東京)
  • つらいって、どうしたらいいんだろうね。こういうサポートがあるよ(女性/東京)
  • うちの子も嫌だって言ってるし、先生にも相談してるけど何もしてくれないよね(女性/東京)
  • お母さんもきついですよね(女性/群馬)
  • 「行きたくなかったら行かなくていい」と母が言ってくれた(女性/広島)
  • 待つしかないけれど話はいつでも聞いてあげられる(女性/徳島)
  • 何も言わずそばにいてくれたり、否定せず話を聞いてくれた(女性/秋田)

【支え・待つ姿勢】

  • 皆が待ってるよ(男性/北海道)
  • 待ってるねとお友達が言ってくれた(女性/京都)
  • 放課後の遊ぶ約束。「来ないとさみしいなぁ」(女性/神奈川)
  • 「待ってたよ」と言ってくれたのがうれしかった(女性/東京)
  • 待っているよ(男性/東京)
  • 「みんなが待ってるよ」と担任の先生(女性/東京)

【具体的な行動・支援】

  • 美味しいものを食べに出かけた(女性/奈良)
  • 空手の先生に「体格を活かして戦え」と言われた(男性/山口)
  • 「早くおいでよ〜」と気を遣われなかったのがありがたかった(女性/神奈川)
  • 「今日も遅かったなぁ。待ってたで」(女性/大阪)
  • 「遅い」と言わず「よく来ましたね」と迎えてくれた(女性/東京)
  • 「お母さんもよくがんばって来ましたね」と言ってくれた(女性/千葉)
  • 校長先生が「安心できる環境を作る」と約束してくれた(女性/神奈川)
  • カウンセラーが家での過ごし方を一緒に考えてくれた(男性/東京)
  • 「午後から学童に来ていいよ」と先生が言ってくれた(女性/石川)
  • 顧問が「みんな○○が好きだからなあ!」と声をかけてくれた(女性/東京)
  • 「今日は寒いですね」などの何気ないメール(女性/静岡)
  • 学校の話をせず手紙をくれた友人(女性/愛知)

【周囲の配慮・気づき】

  • 「最近来ないけど大丈夫かな」と○○くんが心配していたと聞いた(女性/東京)
  • 隣のクラスの先生も知っていてくれた(女性/神奈川)
  • 近所の人がいつも変わらずニコニコあいさつしてくれた(女性/東京)

【先生・カウンセラーの言葉】

  • お子さんは悪くありません。担任が悪いので指導します(女性/東京)
  • 休むことで頭の整理をしている。必要な休みです(女性/千葉)
  • 今はいろんな選択肢がある。学校にとらわれなくてもいい(女性/東京)
  • 先生からの励ましの言葉(女性/福岡)
  • (スクールソーシャルワーカーの)素直でまっすぐ、優しいお子さんに育ってるよ。大丈夫(女性/神奈川)

【印象的だった言葉・気づき】

  • 「もう五月病だ」と友達が言っていた(女性/東京)
  • 「祇園精舎の鐘の声…」平家物語の冒頭が心に残った(男性/岐阜)

【支援の姿勢・思いやり】

  • 私が話を聞いてあげるね(女性/千葉)
  • 一緒に考えよう(女性/千葉)
  • 成功体験で自信をつける(女性/神奈川)
  • 自分のことをもっと大事にしていい(女性/熊本)
  • ゆっくり休んだら?(女性/秋田)
  • 休んでもいいよ(女性・男性/東京)
  • 今は休むときなんだね(女性/東京)
  • 自分のペースでいいよ(女性/静岡)

肯定・共感・寄り添い・支えといった言葉が並んでいます。これらの前向きな言葉に目を通すだけで、温かい気持ちになってきます。

わが子が不登校になったとき、「登校が普通」という基準がある限り、レールから外れた印象を受けてしまいがち。レールからわが子が外れた、普通じゃない状態になったと思えば、親の側がパニックになってしまっても不思議ではありません。

そうなると、肯定・共感・寄り添い・支えの視点からの声がけは難しくなるはず。その意味で、なによりも不登校に対する周囲の認識のアップデートが求められているのかもしれません。

不登校を通じて生じた考え方や価値観の変化とは

最後に、不登校に対する大人の側の認識をアップデートするべく、不登校経験者たちの言葉にあらためて目を向けてみます。

「(わが子や自分自身が)不登校を経験して、考え方や価値観にどのような変化がありましたか?」との問いに、前向きで柔軟な視点の言葉が集まりました。

もちろん不登校に何らかの考えるべき要素や、対応しなければいけない問題が含まれていると当事者が認識している場合は、時間が経って振り返ってみても、ネガティブな要素しか心に残っていないという方、いまだにつらさを引きずっているというコメントも一部にありました。

しかし、不登校に対して、ネガティブなイメージとは異なる、多角的な視点に富んだコメントのほうが圧倒的に多く集まっていました。

【不登校への価値観の変化】

学校がすべてではない

  • 学校に行かなくても生活できる(女性/千葉)
  • 勉強より元気が大事(女性/福岡)
  • 学び方はいろいろある(女性/千葉)
  • 行かないのも選択肢(男性/東京)

子どもの心と体を優先

  • 無理に行かせなくていい(女性/東京)
  • 休むのも命を守ること(女性/鹿児島)
  • 親は子を守る役目もある(女性/愛媛)

がんばるの意味が変わった

  • がんばり方はいろいろ(女性/千葉)
  • 流れに任せる方が楽(女性/神奈川)

【親の気持ちの変化】

登校だけが正解ではない

  • 無理強いは逆効果(女性/愛知)
  • 通うのが当たり前じゃない(女性/千葉)
  • 休んでも悪くならない(女性/千葉)

見守る大切さ

  • 見守るしかできなかった(女性/福岡)
  • 子どもを信じるようになった(女性/新潟)
  • 安心した顔を見て気づいた(女性/東京)

自分を責めすぎない

  • 怒らず受け入れるように(女性/神奈川)
  • 親のせいじゃないと思えるように(女性/東京)
  • 詰め込みすぎも良くない(女性/奈良)

【原因・背景への理解】

いじめや人間関係

  • いじめはある(女性/長崎)
  • 合わない人とは距離をとる(女性/大阪)
  • 大人の対応も問題(女性/神奈川)

理由を説明できないケースも

  • 理由がなくても登校できない(女性/東京)
  • ちょっとしたことで不登校に(女性/神奈川)

病気や特性が関係するケースも

  • 起立性調節障害と診断された(女性/東京)
  • 自閉スペクトラムで支援級へ(女性/福岡)

【不登校からの学び】

自分の気持ちに素直でいい

  • 逃げてもいい(女性/福岡)
  • 耐えるだけが正解じゃない(女性/千葉)
  • 焦らなくなった(女性/東京)

共感する力が育つ

  • いじめられる側の気持ちがわかる(女性/神奈川)
  • 弱さに気づいた(女性/長野)

新しい視野が広がった

  • やりたいことが見つかった(女性/大阪)
  • 居場所は他にもある(女性/東京)
  • 自分で決める力がついた(女性/群馬)
  • 社会では集団行動がすべてじゃない(女性/青森)
  • 学校に行かない時間にも価値がある(女性/福井)

いかがでしょうか。もちろん、コメントの中には、

嫌になっただけ(男性/東京)

その当時は辛かったし、何も言えないのが虚しかった(男性/奈良)

いまだに自分の中で不登校からの単位不足で中退はしなきゃよかったと後悔があります(女性/千葉)

といった、不登校に対する辛い記憶や悔いの気持ちが語られた内容もありました。

一方で、157件にのぼるコメント全体を見渡すと、不登校を1つの経験として多面的に評価したり、時間の経過と共に見方が変わったりしたと述べる声も数多く寄せられました。これらは「不登校=ネガティブ」という固定観念を大きく覆す言葉の数々ではないでしょうか。

わが子が不登校になったり、不登校のサインがある場合、保護者としてどのような声をかけるべきか。当事者に対して思いやりにあふれた言葉を選択するためにも「不登校とは何か」をはじめ、多様な視点から見つめ直すといいのかもしれません。上記のコメントがそのヒントになれば幸いです。

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構成・文/・坂本正敬

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