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子どもは「汗っかき」ではなかった! 実は大人の6割しか発汗能力がない
「子どもは汗っかき」というイメージをお持ちではないでしょうか? 実はこれは大きな誤解なのです。大阪国際大学名誉教授の井上芳光医学博士によると、思春期前の子どもは大人より汗腺のサイズが小さく、その働きも未熟なため、同じ体表面積当たりの発汗量は大人の約6割しかないとのこと。
子どもは未熟な発汗能力を補うために、頭部や胴体などの皮膚に血液をより多く集め、体の表面から熱を外に逃がす生理的特性を持っています。しかし、気温が皮膚の温度より高い環境では、皮膚に血液を集めて体の表面から熱を逃がすことができず、発汗だけが熱を逃がす手段となります。

そのため、発汗能力が未熟な子どもは体に熱がこもりやすい状態になり、熱中症のリスクが高まるのです。
さらに、子どもは身長が低く、地面からの照り返しの影響を受けやすいため、大人より約7℃も高い環境にさらされることになります。
6月からすでに危険! 子どもの熱中症は意外と早い時期から発生している
熱中症は真夏の問題だと思っていませんか? 実はそうではありません。サントリー社とウェザーマップ社が行った調査によると、2024年5月〜9月の東京における「こども気温」換算での猛暑日(35℃以上)を算出したところ、5〜6月だけでも計14日(5月は3日、6月は11日)あることがわかりました。

さらに驚くべきことに、こども家庭庁の統計によれば、熱中症による救急搬送人員数のうち、子どもが占める割合が最も多い月は5月(約20%)となっています。
つまり、大人が「まだそれほど暑くない」と感じる初夏の時期でも、子どもたちは「こども気温」の影響で、すでに熱中症リスクの高い環境にいるのです。
救急医に聞く! 子どもの熱中症を防ぐ3つのポイント
救急専門医の藤田正彦先生によると、子どもの熱中症を未然に防ぐためには、「観察」「水分補給」「暑さから逃げる」という3つのポイントを意識することが重要だそうです。
①「観察」:熱がこもっていることを見分けるポイントは「顔の赤さ」
子どもは自分の体調についてうまく表現ができない場合も多いため、普段から近くにいる親御さんが、子どもの様子を注意深く観察することが大切です。体に熱がこもっている(深部体温が高い)ことを見分ける指標の一つは、「顔が赤くなっているか」です。
「顔が赤い」「耳が熱い」「急に静かになる」などの様子が見られた場合は、無理をさせず、風通しのよい日陰や屋内でしっかりと休憩を取ることが、熱中症の重症化を防ぐ鍵となります。
②「水分補給」:スポーツドリンクなどで、水分と塩分をこまめに摂ること
汗で失われる水分や塩分の摂取が、熱中症対策の基本です。特に、発汗を伴う暑い環境では、水分だけでなく塩分(ナトリウム)などの電解質も失われるため、スポーツドリンクのような”電解質を含む飲料”の活用が効果的です。

水分補給は、喉が渇いてからでは遅く、“30分おきに100〜150ml ずつ”を目安にこまめに摂ることが推奨されています。特に子どもは遊びに夢中になってしまいがちなので、30分ごとに休憩し、水分補給を行う習慣づけをしましょう。
③「暑さから逃げる」:湿度が低く、ひんやりと感じる日陰を選ぶこと
体から熱を逃がすためには、涼しい場所で「暑さから逃げる」ことも大切です。日陰での安静を推奨しますが、日陰でも地面に近いことで高温状態になることもあります。日陰だから安心というわけではなく、少しひんやりと感じるような、気温が低いところで休むようにしましょう。
炎天下や高湿度の環境では、“15〜20分に一度は日陰や屋内で休憩を取ると決めておく”、というのも予防策として有効です。この目安は、子どものスポーツ医療や運動現場でも広く推奨されているものであり、熱中症の予防に効果的とされています。

藤田先生は「特に③『暑さから逃げる』ことは、熱中症対策において気がつきにくい点と言えると思います。実際に、熱中症で搬送された子どもの親御さんに話を伺うと、『しっかり水分補給をしていたのに、熱中症になってしまった』とおっしゃることが多いと感じます。水分補給だけ行っていても、熱中症対策は不十分であるため、体に熱がこもらないよう『暑さから逃げる』行動をセットで行うように心がけましょう」と指摘しています。
サントリーの「こども気温」啓発活動が本格化
サントリー食品インターナショナルは、「GREEN DA・KA・RA」ブランドの熱中症対策啓発活動の一環として、2023年から「こども気温」と称した子どもの熱中症対策に関する啓発活動を行っています。
「こども気温」プロジェクト開始から3年目となる今年は、子どもならではのリスクに着目し、子どもの熱中症対策として、水分補給に加えて、暑さから逃げる行動の重要性を啓発していくとのことです。

また、新たに東京都と連携し、5月から環境局の「熱中症対策ポータル」で「こども気温」に関する情報発信を行うほか、7月には東京都の後援を受け、親子向けの「こども気温」啓発イベントを予定しているそう。子どもをもつママパパのみなさんは、この機会にあらためて子どもの熱中症対策について学んでみてはいかがでしょう。
詳しくはこちら>>サントリー「こども気温」公式サイト
「こども気温」を知って、早めの対策を
子どもは私たち大人が思っている以上に、暑い環境で過ごしています。彼らは身長が低いために地面からの照り返しの影響を強く受け、さらに発汗能力も未熟なため、体に熱がこもりやすい状態にあるのです。特に6月頃の大人にとっては「まだ真夏ほど暑くない」と感じる時期から、子どもたちは熱中症のリスクにさらされていることを忘れないようにしましょう。
お子さんと外出する際は、「観察」「水分補給」「暑さから逃げる」という3つのポイントを意識し、子どもの熱中症対策に取り組みましょう。子どもたちの安全で健やかな夏のために、「こども気温」を知ることから始めてみませんか?
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文・構成/HugKum編集部