「園に預けるときに子どもが泣いても罪悪感を感じる必要はありません」仕事と育児の両立の秘訣とは? 【文京区立お茶の水女子大学こども園・宮里暁美先生の子育て相談室】

お茶の水女子大学の教授であり、文京区立お茶の水女子大学こども園園長も務めた宮里暁美先生に、幼児期の育児のお悩みについてお話を伺う短期連載。4回目は「乳幼児の育児と仕事の両立」について。園との付き合い方や休みの日の過ごし方など、働くママやパパからのお悩みに答えてもらいました。

乳幼児期に子どもと過ごす時間が短いと、発達に影響あり⁉

「1歳の娘は8時から17時までを保育園で過ごし、平日は家で過ごす時間が2~3時間ほど。これってかわいそうなこと?」

「乳幼児期に子どもと一緒にいる時間が少ないと、発達に影響を及ぼすのでは、と不安に……」

親子の時間を大事にする気持ちがあれば短くてもOK。親子の時間の中で子どもの心が育っていく

保育園では、さまざまな個性を持った子どもや異年齢の子どもと接することができたり、自宅にはない遊び道具があったり、戸外でのびのびと遊んだりしてとても豊かな時間を過ごすことができます。

同時に、子どもの育ちに欠かせないのはおうちで過ごす時間です。安心できる大人がそばにいる「自分の居場所」で過ごす時間は、何ものにも代えられません。

ママやパパがいる「家庭生活」だからこそできることはたくさんあります。時間が短いことを気にするのはやめて、園の送り迎えの時間や休日を大事に過ごしてほしいと思います。親子の時間は、一緒に遊ぶ時間だけに限りません。園の帰りに一緒に買い物をしたり、お風呂で今日あったことを話したり、普段の何気ない生活を子どもとともに過ごすだけでも十分なのです。

保育園や幼稚園との上手な付き合い方がわかりません

「息子は4月から保育園に通っていますが、先生と話す時間もあまりなく、どんな関係性を築けばいいかわかりません」

園には子どもだけでなく、親も通っている感覚を持ちましょう

子どもが通っている園に対して親御さんが興味を持ってもらっていると、園生活がより楽しくなってきます。

「こんな遊具で遊んでいるんだ」「きれいなお花が咲いているな」「あの先生はいつも元気いっぱい」など、どんなことでも構いません。親御さんが園に興味や関心を寄せることで、子どもに前向きな気持ちが伝わり、園に来るのが楽しくなるのです。

まずは園に信頼を寄せることが大切なので、笑顔であいさつを交わす、疑問に思ったことを聞いてみる、時間を見つけて先生と話してみるなど、親子で園に通っている気持ちで接してもらえるとうれしいですね。

登園のときに毎朝泣くので罪悪感があります

「娘は保育園の送りで毎朝号泣……。行きたくないのかと心配になります」

「仕事前の保育園の送りで泣かれると、朝からぐったり。預けることに罪悪感すら感じてしまいます」

園に着いたら先生に任せて大丈夫! 安心して通園してOK

毎朝の登園で泣かれてしまうと、ママやパパも不安に感じることがありますよね。しかし、ママやパパが仕事と家庭の両立をすることは、社会を成り立たせる上でも重要なこと。子どもが泣いてしまうことがあっても、先生から「しばらくするとケロッとしてます」「遊び始めると泣きやむんです」などと言われているようなら、その言葉を信じて安心して預けて大丈夫です。

わが子が泣く姿を見ると「これは心の傷になってしまうのでは」と思って、かわいそうに感じるかもしれませんが、園にはお友達がいたり、おうちにはないおもちゃがあったり、楽しいことがたくさんあります。そして、そのような環境で過ごす時間は、子どもの成長に必ずつながっていきます。

中には「普段は悲しい思いをさせているから、休みの日はお出かけを!」と張り切るご家庭もありますが、子どもにとって園生活はとても刺激的でドキドキするもの。休みの日だからといってあまり頑張り過ぎず、たまにはおうちでのんびりして、親子でリラックスするのもいいですよ。

おうちでの親子時間がバタバタで何もしてあげられない

「保育園から帰るとバタバタで、何もしてあげられません。短い時間でも充実させられたらいいのに」

1日10分、1冊でもOK! 親子で絵本タイムを設けてみましょう

読書アドバイザーの児玉ひろ美先生は「絵本は大人が読むことで完成する」と仰っていましたが、本当にそうだと私も思います。絵本を読んでいる時間は、親子で一緒に物語を体験できる時間なので、ぜひ習慣にしてほしいですね。

寝る前に絵本を読むのもいいですが、眠くなってしまったり、つい億劫に感じてしまったりしがち。ですので、時間帯はいつでも大丈夫です。「一冊読んだらお風呂に入ろうか?」などと、行動を切り替えるタイミングで読むのもいいですね。その日によって「今日は10分」「今日は2冊」などと事前に子どもと話して読んであげるようにしましょう。

絵本を読んでいるとき「これはなんだろう?」「かわいい顔をしているね」など、途中で止まったり、戻ったりしながら、内容を楽しむことも大切です。聞く力、理解する力、想像力を育むことができますし、文字に親しむこともできます。そして、大きくなってからも「この絵本は幼いときに読んでもらった」と、いつまでも子どもの中に記憶されることになるでしょう。

園に通うことで子どもも親も成長する

園生活での学びは子どもの成長に欠かせないということがよくわかりましたね。そして「子どもを園に通わせている」のではなく、「親子で、家族で、園に通っている」という気持ちでいることが、子どもの通園をよりよいものに。

子どもの園生活が楽しくなるよう、前向きな気持ちでサポートし、おうちに帰ってからの時間も大切に過ごしていきたいですね。

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記事監修

お話を聞いたのは

宮里暁美先生 お茶の水女子大学特任教授

文京区立お茶の水女子大学こども園園長として園運営に携わり、「つながる保育」を主軸に置いた教育・保育活動を展開。保育の現場や保育者の養成に30年以上にわたり従事。Eテレ「すくすく子育て」などのテレビ番組に出演、「耳をすまして目をこらす」(赤ちゃんとママ社)単著、「はじめてママ&パパの1・2・3才 イヤイヤ期の育児」(主婦の友社)監修など、著書も多数。 

取材・文/本間綾

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