
食べる量が少ない、好き嫌いが多い……「食」のお悩み
「3歳の息子は食の進みが悪く、すぐに遊び始めてしまいます。食べさせても首を横に振り、食べないことも……。もっと食べてほしいのに……」
「2歳の終わりころから好き嫌いが多くなり、野菜はほぼ全滅! せっかく作っても残すので、ごはんを作る気にならなくなりました」
「娘が偏食です。保育園では食べるけど、家では食べないものも……。どうやったら食べてくれるのか悩んでいます」
「親子でおいしく食べる」ことを課題に

食事について悩んでいる親御さんはたくさんいて、その多くは課題のハードルが高くなっていることがあるように思います。「あの野菜もこの魚も食べてほしい」「この量は食べてほしい」、そう思う気持ちはよくわかりますが、課題を「おいしく食べる」ことにしてみるのはどうでしょう。
「食が進まない」「好き嫌いが多い」という子に、自宅での食事事情を聞くと、子どもが一人で食事をしていることがあります。食べさせてあげたり、親が近くにいたりするものの、一緒に食べてはいないというケースです。
「食べなさい」というよりも「おいしいね」と言って一緒に食べるほうが子どもが「食べてみよう」という気持ちになることが多いです。食事時はたしかに忙しいですが、食事でお悩みを持っているようなら、調理の時間を短くしても「同じタイミングで一緒に食べる」ことを意識するといいですね。大好きなママやパパがおいしそうに食べていると、子どもは「わたしも食べてみよう」という気持ちになるものです。
食べる以外の「食」を共有してみよう
「食」への意欲の表し方は人それぞれです。食べないけど、皿や箸を並べるお手伝いは好き、という子もいます。そのお手伝いから徐々に食に興味を持ち始めて、少しずつ食べるようになることもあります。このように食に関するお手伝いをしてもらうことはおすすめです。
お手伝いではなくても、テーブルにパンやハムや野菜などを並べて、子どもが好きなものを挟んで食べるなど、「自分で作る」という工程を経験することも大切です。そこで、野菜を挟みたがらなくても、ママやパパが野菜たっぷりのサンドイッチを「おいしい!」と言って食べていると、子どもも「野菜を食べてみようかな?」と思うことがあるかもしれません。
苦手なものを無理に食べさせなくてもOK
味覚は生後3ヶ月頃から10歳頃に発達すると言われており、3歳頃は好き嫌いが顕著になり、味の好みが出てくる頃です。それまでは食べていたのに、食べなくなったら味覚が発達したということ。そこで、例えばニンジンが嫌いな子に、細かくみじん切りにしてハンバーグに混ぜるなどの工夫をすることがありますよね。それでおいしく食べてくれればいいですが、「これにも入っているかも?」と、疑心暗鬼になることもあります。なので、細かくする、すりつぶすなどして、無理に食べさせなくても大丈夫です。
野菜を食べてほしいという背景には、栄養をとってほしいということがありますよね。それなら、苦手な野菜と同じ栄養がとれるものを食べていればいいのです。子どもウケがよく、手軽に食べさせられ、食物繊維も豊富なものと言えば「納豆」。苦労して野菜を刻まなくても、親子で納豆ごはんを「おいしいね」と食べるほうが手間も時間もかかりません。
なかなか寝てくれない……「睡眠」のお悩み

「抱っこひもじゃないと寝てくれないので、寝かしつけが毎回しんどい!」
「なかなか寝てくれないのですが、寝るのが苦手な子っているんですか?」
眠り方、眠りへの入り方も人それぞれ。気長に付き合って
わたしの孫も寝る前に大きな声で毎回泣いていて、他の家族が起きてしまうので、毎回抱っこひもで抱っこをして外を歩きに行っていたという時期がありました。なかなか寝つかないと、親は疲弊しますよね。なかなか寝てくれないと「運動量が足りてないから?」なんて思うこともあるかもしれませんが、寝ないからと言って「●●が悪かったのでは」と、思い詰める必要はありません。
ただ、お昼寝の時間が遅かったり、寝すぎてしまったりすると、夜寝るのが遅くなる原因になるので、お昼寝の時間の調整は必要です。園では14時半くらいまでがお昼寝の時間なんですが、寝つきが遅くて14時過ぎになってようやく寝るということもあります。しかし、そのまま寝かせておくと、夜寝られなくなるので、30分ほど寝てから他の子と同じように起こして、おやつの時間にすることもあります。
お昼寝の時間、スッと寝る子、なかなか寝ない子がいますが、周りが寝るとその場が「寝るモード」に突入し、なかなか寝ない子もウトウトし始めます。寝ることって伝染するんですよね。ご自宅でも家事や親の一人時間などを朝に回して、夜は早めに大人も一緒に寝るようにすると、寝かしつけのハードルが下がるかもしれませんね。
早寝早起きは「早起き」から始める
早く寝かせれば早く起きると思いがちですが、実は逆で、早く起こすことで「早寝早起き」の習慣がついてきます。朝、子どもを起こし、カーテンを開けてなるべく太陽の光に当たりましょう。すると、血中のメラトニン量が増加し、夜は自然と眠くなると言われています。夜寝るのが遅くなってしまっても、翌朝はいつまでも寝かせておかずに、しっかり定時に起こすことで早寝にもつながります。
子育て中はとても忙しく、どうしても親の睡眠時間が短くなることがあります。そんなときは15~30分程度の短い昼寝をするのがおすすめです。子どもと一緒に少しの時間でも体を休めるようにしましょう。昼寝が難しい場合は、先ほども言ったように、行動を朝の時間帯に移すのもいいですね。
我が家だけではない!子どもの「食」と「睡眠」で悩んでいる人はとても多い
「食」も「睡眠」も毎日のことだからこそ、悩んでいる人が多い問題ですよね。宮里先生のお話をお聞きすると、食べさせ方や寝かせ方が悪いのではなく、親も一緒に食べてみる、同じリズムで寝てみるなど、少しの工夫で改善できることもあるかもしれません。
また、うまくいかなくても「今はそんな時期」と思って気持ちを楽にもつことも大切。“極端に寝ない・極端に食べない”ではない限り、あまり悩まずに「いつかは食べる・寝るだろう」と考えて、ママやパパが前向きな気持ちでいることを優先するようにしましょう。
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記事監修
お話を聞いたのは

文京区立お茶の水女子大学こども園園長として園運営に携わり、「つながる保育」を主軸に置いた教育・保育活動を展開。保育の現場や保育者の養成に30年以上にわたり従事。Eテレ「すくすく子育て」などのテレビ番組に出演、「耳をすまして目をこらす」(赤ちゃんとママ社)単著、「はじめてママ&パパの1・2・3歳 イヤイヤ期の育児」(主婦の友社)監修など、著書も多数。
取材・文/本間綾