円安の影響はここにも!? 中国人留学生が過去最多に並ぶ12万人超え。日本への影響は?【親子で語る国際問題】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は、日本への中国人留学生の数が増えている理由を紐解きます。

昨年の中国人留学生の数は12万3,485人!

近年、日本の大学や語学学校で学ぶ中国人留学生の数が急増しています。日本学生支援機構(JASSO)の調査によると、2024年5月1日時点の中国人留学生は12万3,485人で、前年度比6.9%増となりました。

この数字は、外国人留学生全体の36.7%を占め、国・地域別で見ても中国が最も多いと言えます。過去最多であった、2019年の12万4,436人にほぼ並ぶ勢いで、今後さらに増加する可能性が指摘されています。

なぜ日本への留学を希望しているの?

日本への中国人留学生が過去最多に迫る背景には、様々な要因が複合的に影響しており、今後もこの傾向が続く可能性が高いです。日本は、留学生を受け入れる体制を整えつつ、多文化共生の社会を築く機会と捉えるべきでしょう。

要因1.円安で留学にかかる費用が少なく済むから

まず、要因の大きな一つが円安です。近年、円の価値が下落し、留学費用が他国に比べて割安になっています。例えば、米国の大学では年間数百万~数千万円の費用がかかるのに対し、日本では授業料や生活費を含めても3分の1から4分の1程度とされています。

この経済的メリットは、留学を考える中国の学生にとって大きな魅力です。特に、中国経済の不調により、若者の間でコストパフォーマンスの高い選択肢が求められている今、日本の留学市場は注目を集めています。

要因2.米中対立が激化し、米国に留学しにくいから

次に、米中対立の激化も重要な背景です。近年、米国と中国の関係悪化に伴い、米国への留学が一部の中国人学生にとって難しくなっています。ビザの発給制限や、特定の専攻(特に科学技術分野)での締め付けが強化され、米国留学を断念する学生が増加。その結果、代替の留学先として日本が浮上しているのです。

日本は先進国で教育水準も高く、米国と比べて政治的なハードルが少ないため、選択肢として魅力的です。この流れは今後さらに加速する可能性があり、日本への留学生流入が増えると予想されます。

要因3.就職の可能性が広がるから

中国国内の状況も、留学生増加の要因です。中国では大学入試(高考)が非常に競争的で、限られた名門大学の枠を巡る争いが激化しています。さらに、経済の停滞により若者の就職難が深刻化し、大学卒業後の安定したキャリア形成が難しくなっています。

このような状況下で、海外留学は学歴の向上や国際的な視野を広げる手段として注目されています。日本への留学は、比較的安価で質の高い教育を受けられるだけでなく、卒業後に日本での就職の可能性も広がるため、学生やその家族にとって魅力的な選択肢となっています。

要因4.地理的・文化的に近く安心できるから

また、日本と中国の地理的・文化的な近さも見逃せません。「何かあればすぐ自国に帰れる」距離の近さが再評価されています。飛行機で数時間で帰国できる日本は、心理的な安心感を提供します。さらに、漢字文化や食文化など両国には共通点が多く、留学生にとって適応しやすい環境です。

これに対し、欧米諸国では言語や生活習慣の違いが大きいため、文化的ハードルが高いと感じる学生も少なくありません。日本のアニメやポップカルチャーの人気も、若い世代の留学意欲を後押ししています。

中国人留学生の急増は日本国内の競争を激化させる可能性も

コロナ禍では、渡航制限やオンライン授業の影響で中国人留学生の数が一時的に減少しました。しかし、2023年度から増加に転じ、コロナ前の水準に近づいています。

これは、制限が緩和されたことによる反動的な需要に加え、留学を延期していた学生が一斉に来日した結果と考えられます。特に、2024年度以降も6.9%程度の伸び率が続けば、過去最多を更新する可能性が高いです。

中国人留学生の増加は、日本の教育機関や社会にとって大きな影響を与えます。大学は国際的な多様性が高まり、留学生向けのプログラムやサポート体制の充実が求められるでしょう。一方で、留学生の急増は住居やアルバイトの競争を激化させる可能性もあり、地域社会との調和も課題です。

米中対立の行方や円安の継続状況によっては、さらなる留学生流入が予想され、日本の国際化が一層進むかもしれません。

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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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