インフルエンザは夏にも流行する?
インフルエンザは、冬に流行するイメージが強い感染症です。夏にも流行するケースはあるのでしょうか? まずは、一般的な傾向について解説します。
一般的には秋から冬にかけて流行する
インフルエンザウイルスは、温度が低く湿度が低い環境で生存率が高まる性質があります。
日本では秋から冬にかけて気温や湿度が低くなり、ウイルスが生存しやすい条件がそろうため、寒い時期に流行しやすくなるのです。
しかし、暑い時期だからといって、ウイルスが完全にいなくなるとは限りません。あくまでも、流行しやすい季節や時期が秋冬であるということです。
秋から冬以外に流行しやすい型もある
インフルエンザには、複数の型があります。中には秋冬以外に流行しやすい型もあり、寒い時期だけに気を付けていればよいわけではありません。
例えば、インフルエンザB型は流行がやや遅く、冬の後半から春先にかけて流行することがあります。
また、2009年に発生した新型インフルエンザの流行時期は春です。季節性ではないインフルエンザの場合、流行する季節が変わる可能性も考えられます。
しかし、ウイルスの特徴として温度や湿度が低い時期に生存率が上がることは変わらないため、暑い時期に流行する可能性は低いでしょう。
出典:インフルエンザウイルスの寿命は湿度で決まる – ウェザーニュース
:福岡県保健環境研究所-インフルエンザについて
夏にインフルエンザにかかる主な原因

本来、インフルエンザウイルスが生存しにくい環境である夏には、インフルエンザにかかりにくいはずです。それなのに、なぜ夏にインフルエンザにかかってしまうのでしょうか? 主な原因を解説します。
冷房の使用によって室内の湿度が低くなっている
インフルエンザは、温度や湿度が低い環境で増殖しやすくなります。外が暑くても、冷房が効いている室内では温度や湿度が低くなりがちです。
冷房をつけることで部屋の温度が下がるだけでなく空気中の水分量も少なくなり、インフルエンザウイルスが増殖しやすい環境になります。
冷房の効いた室内で過ごす時間が長いと、インフルエンザの増殖や感染が起こりやすくなるため、夏でも流行する可能性があります。
夏バテや冷えによる免疫力低下
夏には、気温上昇による夏バテや、冷たいものの食べ過ぎ・飲み過ぎ、冷房の使いすぎなどで免疫力が低下する可能性があります。
体が冷えすぎると、血流が悪くなり内臓の働きが低下することがきっかけで、ウイルスや菌に対する抵抗力が弱くなるのです。
免疫力の低下が起きると、普段なら発症しないような感染症にもかかってしまうリスクがあります。季節外れのインフルエンザ感染も考えられるでしょう。
出典:冷えを放っておくと、からだにどのような悪影響がありますか。 | オムロン
夏に流行するインフルエンザ以外の感染症

インフルエンザとは違い、夏に流行しやすい感染症もあります。主な感染症の特徴や、症状について確認しましょう。
手足口病
手足口病は、口の中や手のひら、足に小さな水疱ができる感染症です。発熱を伴うこともありますが、38℃以下が多いとされます。
主にエンテロウイルスとコクサッキーウイルスが原因で発症し、子どもに多い病気です。一般的には2歳以下の乳幼児がかかりやすいといわれるものの、小学生でも流行するケースがあります。
流行のピークは7月下旬ごろです。子どもが多い場所では、感染者との接触が多くなり感染の可能性も高くなります。
出典:手足口病 | 厚生労働省
咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱は、過去にプールでのタオルの貸し借りなどで発症するケースが多かったため、プール熱とも呼ばれる感染症です。現在はプールでタオルを共用することは少なくなったため、プールに入ったからといって感染する可能性が高くなるわけではありません。
アデノウイルスを原因とする感染症で、子どもに多いことも知られています。症状は咽頭痛や結膜炎、高熱などです。首のリンパ節の腫れや、頭痛・腹痛などの風邪症状が現れることもあります。
6月から流行し始め、7~8月にピークを迎えるため、蒸し暑くなる梅雨の時期から警戒が必要です。予防のためには、手洗いや洗顔用のタオルを専用のものにするなど、感染者との接触を減らすことが大切です。
出典:咽頭結膜熱|厚生労働省
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、高熱と、口内やのどの奥にできる小さな水疱が特徴の感染症です。風邪と同じように、のどの痛みを伴うこともあります。
主にコクサッキーウイルスが原因で発症し、乳幼児に多い病気です。基本的には数日で回復に向かうため、風邪と同じように経過を観察し、症状に合わせた治療を行うことになります。
5月ごろから感染者が増え始め、7月ごろに流行のピークを迎えます。8月ごろには少なくなり、9~10月以降は感染がほとんどなくなるため、梅雨から夏の初めに注意が必要です。
伝染性紅斑(リンゴ病)
伝染性紅斑は微熱や風邪のような症状が出てしばらく経つと、両頬が赤くなり発疹が現れる感染症です。発疹は頬に現れた後、体や手足にも広がっていきます。
風邪のような症状が出てから発疹が現れるまでは1週間から10日ほどかかるため、すぐに伝染性紅斑だと判断するのは難しいかもしれません。
頬の赤さから、リンゴ病とも呼ばれます。ヒトパルボウイルスB19を原因とする感染症で、子どもに多いことも特徴です。毎年流行する感染症ではありませんが、5月ごろには感染が見られ、夏に流行のピークを迎えます。
出典:伝染性紅斑 |厚生労働省
夏のインフルエンザを予防するコツ

夏の暑い時期でも、インフルエンザにかかる可能性はゼロではありません。特に、冷房の効いた室内で過ごしている場合や、体の免疫力が下がっているならかかりやすくなるでしょう。予防するにはどうすればよいのか、コツを紹介します。
部屋の湿度を上げる
冷房を使っている場合、加湿器などで部屋の湿度を上げると、インフルエンザウイルスの生存率が下がります。ウイルスの増殖を防ぐことで、夏にインフルエンザにかかるリスクも抑えられるでしょう。湿度が上がればのどもうるおい、乾燥によるのどの炎症も起こりにくくなります。
ただし、高温多湿な環境は、カビの原因にもなるため注意が必要です。湿度は40〜60%程度を意識し、加湿器は定期的に清掃しましょう。
手洗い・うがいを心掛ける
手洗いとうがいには、ウイルスを洗い流す効果があります。インフルエンザにかかりにくくするために、しっかり行いましょう。
手洗いは、流水で汚れを落とした後、石けんをつけて泡立てます。手のひらだけでなく、手の甲・指の間・爪の間・手首にもしっかり石けんを行き渡らせましょう。
最後に、流水で泡を洗い流し、清潔なタオルやハンカチで水分を拭き取れば、手の汚れは落ちていると考えられます。
手洗いをした後は、口内に水を溜めて吐き出すブクブクうがいをしてから、のどの奥を洗い流すガラガラうがいをしましょう。手洗いとうがいによって、風邪やインフルエンザの予防につながります。
アルコール消毒で感染予防を強化する
インフルエンザウイルスには、アルコール消毒が有効です。手洗いができない環境ではアルコール消毒を行うことで、ウイルスを不活化できます。
もちろん、手洗いと併せて、アルコール消毒を徹底するのもよいでしょう。
ただし、アルコールは手が荒れる可能性もあるため、自分の肌に合うかどうかのチェックや、過度に使いすぎないことも大切です。
手洗いとアルコール消毒をうまく使い分ければ、感染予防に役立つでしょう。
出典:手洗い・うがいの方法|インフルエンザの情報ならインフル・ニュース
:インフルエンザはアルコール消毒で予防できますか? |インフルエンザ
インフルエンザは夏でも感染する可能性がある
インフルエンザは、通常寒い時期に流行する感染症です。しかし、近年は冷房が効いている室内にいることも増え、温度や湿度の低下でインフルエンザウイルスが増えることも考えられます。
夏だからといって、絶対にかからないわけではありません。また、ほかの感染症にかかりにくくするためにも、普段から感染対策をしておきましょう。湿度の管理や、手洗い・うがい、アルコール消毒などによって、感染対策ができます。
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構成・文/HugKum編集部