コロナ禍の青春時代を過ごした子どもたちの気持ちを今振り返る! 辻村深月の小説を実写映画化『この夏の星を見る』【親子で観たい映画】

直木賞作家・辻村深月の同名小説を、桜田ひより主演で実写映画化した『この夏の星を見る』が、7月4日(金)より公開されました。コロナ禍における学生たちの青春を描いた本作ですが、観終わったあと、満天の星空を見にいきたくなりそうな、珠玉の青春映画に仕上がっていました!

フレッシュな才能がもたらす化学変化に心躍る青春映画の快作

©2025「この夏の星を見る」製作委員会

みなさんは、普段ゆっくりと夜空を見上げたりする時間ってありますか? 日々、仕事や家事、育児、勉強などで忙殺されていると、そういう時間をなかなかとれないという方も多いのでは。映画『この夏の星を見る』を観ると、ふと外へ出て、満天の星空を見たくなります。そう思えるのは、この映画が成功している証(あかし)ではないかと。

©2025「この夏の星を見る」製作委員会

本作では、コロナ禍でいろいろな悩みや葛藤を抱えつつも、天体観測を通して仲間とつながっていく中高生たちの青春が、実に生き生きと活写されています。記憶に新しい約5年前の物語ですが、共感だけではなく新鮮な驚きと感動ももらえました。辻村深月の原作といえば、「ツナグ」や「ハケンアニメ」「朝が来る」「かがみの孤城」「傲慢と善良」など、数多くの作品が映像化されてきましたが、本原作も大スクリーンで観てみたいと思う映像化向きの1作だと思います。

また、東映と東映アニメーションが、世界市場を意識したオリジナル映像企画などを手掛けていくFLARE CREATORS第1弾プロデュース作品となった本作。気合十分の第1作目を託されたのは、大阪芸術大学の卒業制作『ゴロン、バタン、キュー』(2015)で注目された山元環監督や、28歳で「VRおじさんの初恋」(NHK)の脚本家に抜擢され森野マッシュという新進気鋭の若きクリエイターたちでした。本作が商業映画デビュー作となりましたが、学生たちを演じたネクストブレイク俳優たちも含め、みずみずしい才能との出会いにも非常にうれしくなりました。

©2025「この夏の星を見る」製作委員会

加えて、興行収入 20 億円超えの大ヒットとなったアニメ映画『ルックバック』(24)で音楽と主題歌を担当したharuka nakamura が担当している音楽もその素晴らしい才能の1つ。主題歌「灯星」を歌い上げたのは、今をときめくヨルシカのボーカルsuis from ヨルシカで、それぞれの豊かな感性が融合して相乗効果となり、とても豊かな映画になりました。

都会と地方の“コロナ禍あるある”と、制限された中で見出す希望

©2025「この夏の星を見る」製作委員会

新型コロナウィルスが蔓延した2020年のコロナ禍で、茨城県に住む砂浦第三高校2年の亜紗(桜田ひより)たち天文部は部活動が制限され、合宿も行えなくなります。同級生の凛久(水沢林太郎)も「なんでうちらの代なのかな?」とガッカリ。そこで亜紗は、リモート会議を駆使して、同時に天体観測をする競技「オンラインスターキャッチコンテスト」を実施することを提案。それに長崎の五島列島や、東京都心に暮らす生徒たちも参加することになります。

「三密」「濃厚接触」「ソーシャルディスタンス」といったキーワードが連発されるコロナ禍。本作では、茨城、五島列島、都心という離れた3つのエリアで暮らす学生たちの物語が同時進行で展開されていくので、都会と地方における“コロナ禍あるある”のエピソードも生々しく描かれていきます。

©2025「この夏の星を見る」製作委員会

孤独感や疎外感を感じるだけではなく、一番の親友との友情に亀裂が入る者もいて、かなり深刻な事態に。コロナ禍では自分だけではなく、家族や周りの人々のことも考えて、いろんなことを自粛しなければいけなかったことや、時にはいわれのない差別も起こっていたことを改めて思い出しました。「誰も悪くない。みんなコロナが怖いだけ」という言葉に胸がしめつけられます。

そんな中「オンラインスターキャッチコンテスト」にエントリーすることで、一筋の希望を見出し、やがて離れている場所の新しい仲間をも見つけられることに。個々のエピソードが非常に豊かで、それぞれの立場にとても共感できそう。また、トップランナーの桜田さんを軸に、新世代の若手俳優陣の個性も際立っていて、併走していく友情のドラマに胸が熱くなります。

コロナ禍での尊い青春のきらめきを映画館で体感してほしい

©2025「この夏の星を見る」製作委員会

みんなをつないでいく「スターキャッチコンテスト」は“星をキャッチする”という発想自体が最高で、“映える”し実に映画的。これは手作りの望遠鏡でターゲットの星をとらえて点数を競うというもので、星の知識と、望遠鏡を正確かつ素早く操作するテクニックが勝負のカギとなります。でも、探していたのは星だけではありません。自分自身の未来も模索していたのではないかと。1つの夜空は、みんなで共有できるから、星とともに亜紗たちの目もキラキラと輝いていきます!

本作を観て、ふと気づかされたのは、コロナ禍というのはすべてが“暗黒”の時代ではなかったことです。悲しみだけではなく、思考を切り替えることで楽しみや予想外のやりがい、人と人とが違う形で交流できたことの喜びも生まれていたということを、亜紗たち若い世代に教えてもらいました。

©2025「この夏の星を見る」製作委員会

確かにコロナ禍でなければ「オンラインスターキャッチコンテスト」は開催されなかっただろうし、そこで新しい出会いを果たすこともなかったわけです。亜紗たちがマイナスからプラス思考に切り替えたことで、それぞれに青春を謳歌していく姿が実にまぶしい。また、好奇心をもって行動する大切さもかみしめます。こういう映画こそ、親子で観ていただけたら、アフタートークもきっと弾むのではないかと。ぜひ週末は、大スクリーンで、亜紗たちと共に夜空を共有してみてください!

『この夏の星を見る』が、7月4日(金)より公開中
監督:山元環 脚本:森野マッシュ 音楽:haruka nakamura
原作:辻村深月「この夏の星を見る」(角川文庫/KADOKAWA刊)
出演:桜田ひより、水沢林太郎、黒川想矢、中野有紗、早瀬憩、星乃あんな、河村花、和田庵、萩原護、秋谷郁甫、増井湖々、安達木乃、蒼井旬、中原果南、工藤遥、小林涼子、上川周作、朝倉あき、堀田茜 近藤芳正、岡部たかし…ほか
公式HP:https://www.konohoshi-movie.jp

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©2025「この夏の星を見る」製作委員会

文/山崎伸子

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