なぜ小芝風花演じるヒロインは「私の夫と結婚して」と懇願するのか！？
NAVERの人気ウェブ小説を、日韓共同プロジェクトとして、日本で映像化された「私の夫と結婚して」。最初に韓国で実写化された同名ドラマシリーズが昨年 Prime Video で世界独占配信され、熱狂的な支持を集めたことで待望の日本ドラマ化が実現しました。本作はAmazonプライム特典対象作品として全10話構成で、毎週金曜日に2話ずつ、5週にわたり配信されます。
「私の夫と結婚して」という意味深なタイトルを聞いて、どんなドラマを想像しますか？ 一人称が妻ということは確かですが、彼女が一体誰のためにそうお願いしているのか、ドラマの設定が読みとれるまでは全然わかりませんよね。なんだか気になる！ ということで、タイトルとしては大成功かと。
私自身は過去にドラマ化や映画化された、余命わずかな夫が愛する妻のために再婚相手を探すという「ボクの妻と結婚してください。」を想像してしまいましたが、いやいや、全然違いました！ というか、真逆の設定でした（笑）。
主演の小芝風花が演じるのは、お人好しで親友や夫にとことん尽くし続けた挙句、2人の裏切りにより命を落としてしまう主人公の神戸美紗役。死んだかと思いきや、なんと美紗は10 年前の過去にタイムリープしていました！ 美紗はそこで、かつての親友と夫にリベンジをする決意をします。ちなみに、小芝と共にダブル主演を務める佐藤健は、美紗のクールな上司、鈴木亘役。美紗は2度目の人生で亘と深く関わっていくことに。
美紗の親友、江坂麗奈役に、ドラマ「新空港占拠」や映画『胸が鳴るのは君のせい』（21）の白石聖、美紗の夫、平野友也役に、SUPER EIGHTのメンバーで、俳優としても活躍が目覚ましい横山裕。この親友と夫がとことんクズなので、より美紗の復讐心がメラメラと燃えたぎっていきます（笑）。
佐藤健演じる御曹司の視点がよりラブストーリーを盛り上げる
優しすぎる性格の美紗（小芝風花）は、常に自分よりも周りの人々の幸せを最優先させて生きてきました。そんな彼女の幼馴染にして唯一の親友、江坂麗奈（白石聖）は、とことん自己中心的で、自分が優位に立つためには嘘もつきまくるし、美紗のことも平気でおとしめるという最低の人間です。
37歳の美紗は末期の胃癌にかかっていますが、自分の人生を振り返り、楽しいこともたくさんあったし、そこまで悪くなかったんじゃないかと感じていました。そんな中、彼女の夫・友也（横山裕）と麗奈の不倫を知り、挙句の果てに命まで奪われてしまうという悲劇に見舞われます。
怒り心頭、失意のどん底にいた美紗ですが、目を覚ますとなぜか10年前の過去に戻っていました。鏡を見ると自分はまだ若いし、健康体です。そこからの10年をやり直せるのなら、もう「いい人の脇役」ではなく、自分の物語の”主役”として人生を生き直したい！ そう思った美紗は、親友と夫を結婚させ、2人を破滅に追い込もうとリベンジを誓います。
本作はオスカー受賞作『パラサイト 半地下の家族』（19）のCJ ENMと、『愛の不時着』（19）のSTUDIO DRAGONがタッグを組んだ初の日本映像作品ですが、さすがのクオリティーです。第1話の段階で「ここから復讐劇の幕開けです！ もう抜け出せないですから」という気合の一手を感じました。
さらに、第2話がとてもニクくて、単なる安っぽいメロドラマ的な展開とはなりません。もう1人の主役である佐藤さん演じる鈴木亘のバックグラウンドが丁寧に描かれることによって、より美紗の人柄の良さが際立っていくという構造が秀逸。亘目線で語られる美紗がとても素敵です。亘を単なるキラキラ系のオレ様御曹司キャラにせず、内面は恋に臆病な普通の青年だったという点にキュンキュンきます。
いよいよ亘を獲得すべく“恋の狩人”麗奈が始動！
ヒロインが人生を生き直すという予測不能のリベンジ劇と、予想を上回るキュンキュンラブストーリーの両輪で展開される本作。さらにもう1つ、とても心惹かれたポイントは、美紗のように、誠実かつ人のために頑張ってきたという真っ当な人間が、ちゃんと報われていくというストーリーでしょうか？ 嘘をついたり、悪事を働いたりする人たちが、まんまとしっぺ返しをくらっていく感じなので、観ていてスカッとします（笑）。
脚本は、ドラマ『1リットルの涙』（05）や『さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜』（24）、第48 回日本アカデミー賞にて優秀脚本賞（映画『九十歳。何がめでたい』）を受賞した大島里美。韓国ドラマのリメイクではなく、「原作小説をベースに日本の文化や感性に合わせて再構成されたオリジナル脚色作品」とのことですが、いい意味で“日本人あるある”を入れ込んであるので、とても感情移入しやすいです。
監督は『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』（22）などのサスペンスやヒューマンドラマを得意とするアン・ギルホが務めました。ドキドキするスリリングなシーンと、ロマンティックなシーンとのメリハリが効いています。また、人生のドラマにおける主役、脇役というものを、実際のシナリオとしてちゃんとわかりやすく視覚化した演出もナイスです。
第2話では、同窓会で心をズタズタにされ、ずぶ濡れの中、美紗の前に現れ、傘を差してくれた亘。心ときめく胸キュンマックスのシーンが終わったかと思いきや、いよいよ“恋の狩人”麗奈が、亘を獲得すべく動きだしました！ あの手この手を使って、亘を落とそうと動いていく麗奈ですが、美紗はそのやり口を見て、どんな行動を起こすのでしょうか？ 美紗は2度目の人生において、脇役から主役へと成り上がれるのでしょうか？ 3話＆4話も見逃せません！
Amazon Originalドラマ『私の夫と結婚して』は6月27日（金）より毎週金曜日に2話ずつ配信中
原作： LINEマンガ 「私の夫と結婚して」（作者：sungsojak）
監督：アン・ギルホ 脚本：大島里美 出演：小芝風花、佐藤健、横山裕、白石聖、田畑智子、黒崎レイナ、七五三掛龍也、清水伸、安部聡子、津田寛治…ほかこちらもおすすめ
文/山崎伸子