小学5年生が撮影、編集から製本まですべて自分で手がけた世界で一冊の昆虫図鑑のクオリティが圧巻!いまハマっているのは虫のLINEスタンプづくり【自由研究コンクール】

美しい写真と丁寧な編集が目を引く、当時小学5年生だったH・Kさんの自由研究『昭和公園にいる昆虫』。昨年、「小学館の図鑑NEO」と「HugKum」が開催した「小学生の図鑑・自由研究コンクール」で審査員特別賞を受賞しました。暑い日も公園に通って昆虫を探し、自分で撮影してパソコン編集もした作品は、書店に並ぶほどのクオリティ。その制作時には心が折れそうになるハプニングもあったそうで、それを乗り越えて完成させたHさん、そしてお母さんにお話を聞きました。

審査員特別賞【図鑑部門】大好きな昆虫を見つけて、撮って、一冊の図鑑に

暑い日でも何度も公園へ通い、種類に縛られない昆虫図鑑を作った、H・Kさんの「昭和公園にいる昆虫 」。図鑑の中の写真はすべて自分で撮影し、写真の編集、パソコンでの原稿執筆やデザイン、製本ももちろん自分で。その完成度はまるで商品のようです。今後、日本や世界の昆虫へと図鑑のテーマが広がっていくことも期待されました。

――公園にいる虫をテーマにしたきっかけ、理由を教えてください。

Hさん 3年生のときに知り合いからクワガタをもらって育てていました。育てながらたくさん写真を撮ったのですが、4年生のときにその写真で写真集を作ったんです。そこで、5年生になって今回はそこから発展させたいなと思ったので、近くの公園にいる虫の図鑑を作ろうと思いました。

現在は6年生になったHさん。

――もともと虫が好きなんですか?

Hさん 年中さんくらいから好きです。

Hさんのお母さん それまでは電車オタクで、電車一筋だったんですけど、幼稚園で昆虫好きのお友だちができて、そこからパタッと切り替わりました。そこからは虫にどんどんのめり込んでいって、今はあんなに好きだった電車の名前もほとんど覚えていないみたいです。

4年生のときに作ったクワガタの写真集。写真の構図、レイアウトのセンスが見事。

――写真がすごく上手ですが、なにで撮りましたか?

Hさん 全部スマホです。アゲハ蝶の卵は1mmなので、小さすぎてなかなかスマホのピントが合わなくて、そのときはお父さんにカメラを借りました。

Hさんのお母さん 構図などを意識して撮ったのはクワガタの写真集が初めてでした。当時も編集まで本人がやりました。

――写真を撮ったあとの作業はどんな風にしましたか?

Hさん 文章の打ち込みや写真の構成を組み立てて本体を作るときには、お父さんからゆずってもらったパソコンの PowerPoint で編集をしました。写真自体はスマホで編集までしたり、タイムラプスで撮ったのをスクショして、切り出したりもしています。

Hさんのお母さん 写真の切り抜きや配置も全部自分でやっていて、私はさわっていないです。ルビの振り方がわからなかったみたいで、漢字の上にすごく小さく文字を作って配置したり、自分なりに工夫していました。

タイムラプスで撮影して切り出したナミアゲハの成長のページ

ナミアゲハの成長が説明付きでよくわかる

Hさん このページは、家にお父さんが買ってきたレモンの木があって、外に置いていたら、卵を産みに来てくれたので撮影しました。羽化するタイミングを見たかったけど、なかなか羽化しなかったから、タイムラプスで撮影して画像を切り出しました。このときは夜も虫かごの隣で寝ていました。

Hさんのお母さん 羽化が始まったのは深夜1時くらいでしたが、そこからすごく時間がかかったんですね。羽化の瞬間、本人はぐっすり寝入っちゃったタイミングで、残念ながら起きられませんでした。

完成間近でデータが消失するハプニングを乗り越えた!

――自由研究では大変なことはありましたか?

Hさん 夏休みが終わる1週間前に、パソコンで作ってた自由研究のデータが全部消えちゃってもうすぐ完成するところだったのに。写真のデータはあったけど、それ以外は消えちゃってショックでした。

――それはショックでしたね、気持ちを切り替えて、頑張ってやり直したんですか?

Hさんのお母さん 半日は何もできないぐらい落ち込んで、楽しみにしてた予定もあったんですけど、それどころじゃなくて。このままじゃ終われないねってやり直して。

――それでもいい加減にやらないで、丁寧に仕上げたんですね。

Hさん 2回目は思っていたよりも早く作れて、前よりもいいものができました

――大変だったことをバネにして、いい作品にしたんですね。公園に行ったり、虫を見つけたりするのは大変じゃなかったですか。

Hさん バッタは結構すぐに見つけられます。でもセミは木の高いところにいるから、鳴き声は聞こえても見つけるのが大変でした。ミンミンゼミやアブラゼミはたまたま下の方にいたのを撮ったけど、クマゼミなどあきらめたのもあります。

――去年もすごい暑かったと思うけど大丈夫でしたか?

Hさん 暑かったです。

Hさんのお母さん 行ったら満足するまで帰ってこなかったです。基本的に1人で行っていましたが、私はHの弟が一緒に行きたいというときは付き添うこともあります。また、おじいちゃんが近くに住んでいるので、おじいちゃんに付き合ってもらったこともありました。

普通の図鑑には名前の由来があまり載っていないから、調べて入れることに

――今回調べてみて、意外だったこと、新しい発見はありましたか?

Hさん 普通の図鑑はあまり昆虫の名前の由来が書いてないから、それを載せたいと思いました。いろいろ調べて作って、特にショウリョウバッタの名前の由来が意外でした。

――お気に入りの写真やページはありますか?

Hさん タマムシのページです。なかなか出会えないのに、たまたま死んでいるのが落ちてて、写真が撮れました。うれしかったです。

アブラゼミの写真もお気に入りです。木の下の方にアブラゼミがいて、何枚も撮ったら太陽がいい感じになりました。

「太陽がいい感じになった」という、普通の図鑑にはないカッコいい雰囲気の写真のアブラゼミも。

――今年の自由研究のテーマは決まりましたか?

Hさん 弟が5歳になって、最近ひらがなを読めるようになってきました。でもカタカナと漢字はわからないから、お母さんにふりがながふってある図鑑を買ってもらっていたんですけど、それまでは「これなんて読むの?」って聞いていたから、そういう子でも楽しめるように写真を大きくして、もっと昆虫の種類を増やして、「昭和公園の図鑑2」を作りたいと思っています。

――弟さんのために優しいですね。写真はどうしますか。もう1回撮り直す?

Hさん 使えるのは使って、この間撮っても名前がわからなくて載せていない昆虫もいるし、去年見つからなくて撮れなかった虫もいるので、それを撮りたいです。

――2冊目だからクオリティも上がりそうですね。

Hさんのお母さん 今見ると、この写真は色をいじりすぎたかなとか、今だから気づけることもあったみたいです。

過去の自由研究。2年生のときに制作したギラファノコギリクワガタを見ながら書いたイラスト(左)と、図鑑の昆虫の写真をプラバンにトレースして制作した標本風の作品(右)

――普段は虫以外でハマってることはありますか。

Hさん LINEスタンプを作れると聞いたので調べると、LINEスタンプを作れるアプリを見つけました。それで自分で撮った写真を使って、虫のスタンプをつくりました。

――そういうのがあると聞くと、お母さんに聞くより自分で調べるんですね。

Hさんのお母さん 私は「こういうの作れるらしいよ。子どもたちが小さかった頃の写真を使ったスタンプを作って」って言ったら、そこから虫のスタンプにも飛躍して。

――難しそうだなと思わず、できそうだなって進んでいけるのがすごいですね。

Hさん やってみて、難しかったらやめたと思うけど。スタンプはまた作りたいです。

――すごい! どんどん発展しているんですね。次の自由研究もスタンプの新作も楽しみにしています。

Hさん作のLINEスタンプ

親は干渉しすぎないように「好きで一生懸命やるなら、それが何かに繋がるだろう」

ただ写真を撮ってまとめるのではなく、写真の構図にもこだわり、気になることを調べて記載したりして、自分らしい図鑑を作り上げたHさん。最後の最後にトラブルがありながらもあきらめず、よりよい作品に仕上げた気持ちの強さも感じられます。そんな自由研究をお母さんはどう支えたのか、また子どもの好きなことをどう応援しているのかを伺いました。

――今回の自由研究をどんなふうにサポートしていましたか?

Hさんのお母さん サポートできることが何もなくなって、朝何時に起こしてって言われて起こすとか、熱中症にならないように首につけて涼しくなるリングとか保冷剤を持たせたり、そのくらいですね。

――データが消えてしまったときは、なにか声がけをしましたか?

Hさんのお母さん 楽しみにしてたイベントや夏祭りに気分転換に行こうと言ったんですけど、行かないって。その後自分で立ち直って、切り替えていました。

――普段はどんなお子さんですか?

Hさんのお母さん 性格的には昔からまじめで何事にも一生懸命。人に対してというより、自分に対して負けず嫌いですね。パソコンやスマホの操作が得意で自分で調べてやっています。

――子育てについては普段どんなことを大切にされてますか?

Hさんのお母さん 1人目なので、ちっちゃい頃はいろいろ気にしていましたが、「この子の人生はこの子のものだな」と思うようになってからは、自分でやるって決めたんだから頑張ってって。あまり干渉しすぎないようにしています。

特に1人目だと、あれしてこれしてって道を作りがちでしたが、これだけ好きで一生懸命やるなら、それがきっと何かに繋がるだろうと。

子どもが好きなことの情報だけは集めるように。今年は「昆虫活動」の「昆活」に協力

――お子さんが好きなことをどう支えていますか?

Hさんのお母さん 情報だけは集めてこようと思っています。どうしても昆虫って時期が限られていて、秋冬になると息子自体もオフシーズンになりますが、春になるにつれてまたむくむくと興味がよみがえるんです。

「今年も好きなんだな」とわかれば、昆虫のイベントを探したり、図書館に行ったら昆虫の本を探したり、昆虫のグッズを買ってみたり。イベントは本人に提示して、行きたいと言えば申し込んで、一緒に行けるところは行っています。

今年は6年生なので、親子で一緒に出かけられるのも最後かなと思っていて。以前は土日にサッカーをやっていましたが、この自由研究をやっているときにサッカーよりも昆虫をやっていたくらいなので、今は土日のサッカーはやめました。今年は「昆虫活動」の「昆活」に協力しようかなと思って、昆虫イベントに一緒に出かけようかなと思っています。

――将来どんな人になってもらいたいですか?

Hさんのお母さん 好きなことをやってるときの生き生きしてる顔が好きなので、好きなことをやってほしいなっていうのと、この自由研究の際も道に動けなくなった蝶がいて、それをすっと助けているのを見て、そういう優しい気持ちはずっと持っててくれたらいいなと思います。

――ご自宅でも虫を飼育しているそうで、家族でお子さんの”好き”を楽しんでる感じがします。

Hさんのお母さん そうですね。本来、私は「私のスマホには昆虫の写真を入れないで!」というほど虫が嫌いなんですけどね(笑)。子どもがアンパンマン好きになったらアンパンマンが可愛く見えちゃう、みたいなのと同じ感じで、虫に対しても少しずつ……以前よりは免疫がつきました(笑)

虫嫌いなお母さんの帽子にオナガサナエが止まった決定的瞬間も写真に収めました。

すべてを自分でやりきる力、あきらめずに頑張る力で美しい図鑑が完成!

この図鑑を見てまず驚くのは写真の美しさ、そして見やすく整えられたページの構成です。これをすべて自分でやったこと、さらに完成間近で一からやり直したという頑張る力にもびっくりしました。さらに、図鑑にとどまらず、今ではLINEスタンプに応用するなど、興味を持ったことに対しての行動力も素晴らしく、Hさんの今後の活躍が楽しみになりました。そのかげには、子どもの興味の種をそっと提示する、お母さんの優しいサポートもありました。

今年も開催!『自由研究コンクール』

昨年も多くの方にご応募いただいた『自由研究コンクール』を今年も開催いたします! 本コンクールでは、「図鑑部門」「自由研究部門」「自学ノート部門」の3部門で作品を募集します。
優秀作品には豪華賞品も!  応募要項をチェックして、皆さんの作品をぜひご応募ください。

自由研究コンクールのページはこちら>>

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取材・文/長南真理恵 撮影/五十嵐美弥

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