調査対象:全国47都道府県の教育関係者
調査期間:2025年5月20日~6月30日
調査機関:小学館のWebメディア「みんなの教育技術」
有効回答数:5412人(小学校:4628人、中学校:373人、特別支援学校:141人、高等学校:73人、義務教育学校:62人、教育委員会:19人、中等教育学校:8人、その他:30人、無回答:78人)
※本アンケートでは、回答者の負担軽減のため設問を任意回答としています。そのため、設問ごとの有効回答数は異なります。
驚くべき勤務時間の実態
平均11時間勤務が当たり前の現実
アンケート結果で最も衝撃的だったのは、先生たちの勤務時間の長さです。出勤してから退勤するまでの平均時間は11.17時間、中央値は11時間となりました。

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さらに詳しく見ると、8割を超える先生が10時間以上働いており、4人に1人が12時間を超えて勤務しています。これは法定の勤務時間を大幅に上回る状況が、日常的に続いていることを意味します。
先生方からは次のような声が寄せられています。
「寝る、入浴以外の時間をすべて仕事しているのに、授業準備等が間に合わないため毎日すべてがつらい。土日=休日という概念が存在しないくらい仕事が多い」(20代・男性)
「子どものためなら頑張れると思って残業しているが、保護者の理不尽なクレームに何分も対応していると、過ぎた時間の無駄さ加減に心底疲弊します」(30代・女性)
「行事を精選したいと訴えても管理職からOKが出ない。なりたい職業に就いたはずなのに『辞めたい』と思うくらい仕事がさばけない」(40代・女性)
「年中、忙しく、多様な児童や保護者、世代間ギャップを感じる若手職員とのコミュニケーションなどストレスがたまる一方で、65歳まで延長された定年退職まで続けられる自信がない」(50代・男性)
休憩時間がほとんど取れない現実

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労働基準法では45分以上の休憩時間が定められていますが、実際に45分以上の休憩を確保できている先生は、全体のわずか1.5%でした。
65.6%の先生が「ほとんど休憩を取れない」と回答し、「15分未満」を含めると85%近くの先生がまともな休憩を取れていません。
休憩が取れない理由として、以下のような声が挙がっています。
「子どもがいる時間は子どもから目が離せないので休憩ができない」(30代・男性)
「電話、来客、メール、調査回答、教員からの相談など、間髪入れずに業務が入ってくる」(50代・男性)
「誰も休憩していないから、休憩しようという気にならない」(40代・女性)
特に深刻なのは、休憩が取れないことで「トイレに行けない」という声が非常に多く、膀胱炎を繰り返している先生もいるという現実です。
見えない「隠れ残業」の実態

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アンケートによると、半数以上が週3日以上の持ち帰り残業をしており、約9割が休日にも業務を行っています。
「空き時間も生徒対応、昼休みは給食指導、休んでいる先生の自習対応などに追われて、授業準備ができる時間は朝か放課後のみであり、帰宅後に持ち帰らないと終わらない」(40代・女性)
時間外勤務が発生する要因として、8割以上の先生が「1日の業務量がそもそも8時間以内にできる設定ではないため」を選択しました。さらに、89.4%の先生が複数の要因を選択しており、問題の複雑さと解決の難しさがうかがえます。

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「つらい」と感じる瞬間
勤務時間の長さ以外で「つらい」と感じるときについて聞いた結果、最も多かったのは「保護者から理不尽なクレームを受けているとき」で約4割を占めました。そのほかにも下記に挙げるようなさまざまな要因がストレスとなっていることが見てとれます。
教育の本質から離れた業務への疲弊
- 「目的のはっきりしない会議に参加しているとき」や「教材研究の時間が取れず十分な授業準備ができないとき」といった、教員として本質的でない業務への疑問を訴える声も。
「『これって教員がやるべきこと?』と疑問をもちながら、時間を奪われるとき。『生徒の成長』につながらない業務だなと感じるとき」(30代・性別無回答)
家庭が犠牲になることへの罪悪感
教育にたずさわる仕事をしている一方で、家では一介の保護者であるという先生もいます。教師としての児童・生徒への責任感と、家族としてのわが子への思い、その葛藤に悩む声もきかれました。
「自分の子どもにかけてあげられる時間が少ない。登校の付き添いや宿題を見てあげたり、手の込んだ料理を作ってあげたりしたいけれど、できない」(40代・女性)
「一歳の子どもがいるので育児時間の取得をして、放課後1時間だけ早く帰っています。わが子の迎えに行かなければという思いと、もっと学校で仕事を終わらせたいという思いがせめぎあい、日々つらいです」(30代・女性)
孤独感と相談できない環境
教科別やクラスごとの責任制のなかで、ほかの職員や先生たちに相談できず、ひとりで問題解決に悩む様子も見られます。
「つらいと感じるのに、助けてと言えないとき」(20代・女性)
「本当に必要な情報共有をする時間ができず、結果、問題を一人で抱えやすくなってしまう。相談したくても、管理職も含め余裕のある教員が誰も存在しない」(年代不明・女性)

年代別に見える異なる課題
さらに、アンケートの自由記述からは、年代によって異なる課題が浮き彫りになりました。
20代:理想と現実のギャップ
「授業力をつけたいのに、授業準備に時間がさけずにそれができない。そんな自分を責めてしまう。意味がないと思う仕事への反発」
教育への情熱を持って教職に就いたものの、理想的な授業を行うための時間が確保できず、自分を責めてしまう傾向が見られます。
30代:家庭との両立の困難
「自分の子どもを迎えにいくために定時退勤した後、子どもを寝かしつけたあとで自宅で残業、時短勤務扱いだが実際には7時間働いている」
子育て世代として、自分の家庭と仕事の両立に深刻な悩みを抱えている様子がうかがえます。
40代:心身の疲弊が限界
「職員間のコミュニケーションのストレスや、他の教員のフォローが自分に回ってくることなどによる心身の疲弊の限界」
中堅としてさまざまな責任を負う一方で、心身の疲弊が限界に達している状況が見えます。
50代:制度不信・無力感
「長年変わらない体制に疲弊し、体力的に65歳まで勤務を続けるのは困難」
定年延長に対する不安や、長年変わらない教育現場への無力感を感じている傾向があります。
先生たちがそれでも先生を続ける理由
「子どもの成長」が最大のやりがい
一方で、「これがあるから教員はやめられない!」という問いでは、「子どもの成長」という言葉が約7割の回答に見られました。
「子どもたちが授業を通してわかる喜びを感じたり、行事を通して大きく成長したりする姿を見ることができたとき」(40代・女性)
「生徒が授業中の話し合い活動などで友達と活発に話し合ったり『なるほど!』『それすごい!』などと盛り上がったりしているのを見るとうれしくなる」(20代・女性)
「『先生に担任してもらえてよかった』と感謝してもらったとき。教え子と再会して当時の思い出を語り合えたとき」(30代・男性)
子どもたちの成長こそが、先生たちの働く原動力となっていることがわかります。
保護者としてできること

このような現状を踏まえ、私たち保護者にできることを考えてみましょう。
理解とサポートの気持ちを持つ
・先生たちの忙しさを理解し、緊急でない連絡は時間を考慮する
・学校行事や活動に積極的に協力する
・家庭での子どものサポートを充実させる
感謝の気持ちを伝える
・先生たちの忙しさを理解し、緊急でない連絡は時間を考慮する
・学校行事や活動に積極的に協力する
・家庭での子どものサポートを充実させる
コミュニティでの支援
・PTA活動などを通じて学校運営をサポートする
・地域全体でお子さんたちを見守る体制づくりに参加する
具体的な行動例としてまとめると
- 連絡帳や電話での相談は、本当に必要なものに絞る
- 学校からのお便りやメールをしっかり読み、基本的な情報は自分で確認する
- お子さんの宿題や持ち物の準備を家庭でしっかりサポートする
- 学校行事には可能な限り参加し、お手伝いできることは積極的に協力する
- 先生への感謝の気持ちを、お子さんを通じて、または直接伝える
- 理不尽なクレームではなく、建設的な意見交換を心がける
[まとめ]学校と家庭が手を取り合い助け合える環境を
今回のアンケート結果は、現在の教育現場が抱える深刻な問題を浮き彫りにしました。
年代を問わず、それぞれが異なる課題を抱えながらも、「子どもの成長」という共通の喜びを支えに教育活動を続けている先生たち。しかし、外部支援も十分ではなく、根本的な業務量の見直しが求められている状況です。
私たち保護者がこの現実を理解し、できる範囲で学校や先生たちをサポートしていくことが、結果的に子どもたちのより良い教育環境につながるのではないでしょうか。
先生たちが本来の教育活動に集中できる環境づくりのために、まずは理解から始め、そして具体的な行動につなげていけたらいいですね。子どもたちの笑顔と成長のために、学校と家庭が手を取り合って歩んでいけることを願っています。
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構成・文/HugKum編集部

