「コミュニティスクール」って何? 何が目的で何ができるの? PTAと比較して解説

コミュニティスクールにより、学校と地域住民が協力して地域に開かれた学校を実現する動きが広がっています。子どもの通っている学校がコミュニティスクールを実施し始めたという人もいるでしょう。
コミュニティスクールがどのような役割を担っているのかを、事例とあわせて紹介します。

コミュニティスクールとは

教育委員会が学校運営協議会を設置した学校のことをコミュニティスクールといいます。コミュニティスクールにはどのような役割があるのでしょうか?  地域との関連性についても解説します。

コミュニティスクールの役割

コミュニティスクールの主な役割は「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」で以下のように定められています。

● 校長が作成する学校運営の基本方針を承認する
● 学校運営に関する意見を教育委員会または校長に述べることができる
● 教職員の任用に関して、教育委員会規則に定める事項について、教育委員会に意見を述べることができる

学校運営の基本方針を承認することに加えて、必要に応じて学校運営や教職員の任用に関して意見できる権限を持っているのが特徴です。

出典:地方教育行政の組織及び運営に関する法律|e-Gov 法令検索

地域住民の学校運営への参画

地域住民が学校運営に参画する制度はコミュニティスクール以外にもあります。その他の制度とコミュニティスクールとの違いは、地域住民の意見の通りやすさです。

学校運営協議会で議題に上がると、学校は説明責任があるためその議題を無視できません。教職員の任用といった人事にも意見ができるため、地域の特色を生かした学校運営につながります。

地域の課題への把握・対応

地域の課題は学校とつながっているものも少なくありません。コミュニティスクールでは、地域のみでの対応に限界がある課題を、学校と連携して把握・対応できるようになるため、根本的な解決の糸口が見つかることも期待できます。

例えば子どもの迷惑行為が課題となっている地域で学校と協働すれば、子どもが適切な支援を受けられるようサポート可能です。多方面から支援を受けることで子どもの迷惑行為がなくなれば、地域の課題解決につながります。

他にも若年層の地域への定着が課題となっている地域では、子どもが地域産業を学ぶ機会を設けているケースもあるそうです。地域の魅力を発信することで、地域へ定着する子どもの増加を目指す取り組みといえます。

コミュニティスクールとPTAの違い

地域住民が学校運営に参画することで、地域とともにある学校を実現するのがコミュニティスクールです。同様に学校に関係する組織にPTAがあります。PTAにはどのような役割があり、コミュニティスクールとはどのような違いがあるのでしょうか?

PTAの目的は社会教育と成人教育

PTAは社会教育と成人教育を目的とした社会教育団体です。

社会教育とは学校教育以外の社会で行われる教育を指します。例えば野外活動や公民館で行われる講座・家庭教育などは社会教育の一環です。

また成人教育とは、保護者や教師などを対象とした教育のことです。子どもの健全な教育のためには、関わる大人が学んでいる必要があることから行われています。

一方、コミュニティスクールの目的は、学校を中心に地域のつながりを強化することや、地域の課題を解決することです。学校と地域との協働を目指している点に、PTAとの違いがあります。

PTAに権限はない

コミュニティスクールとPTAの違いには、権限の有無もあります。

コミュニティスクールに設置されている学校運営協議会は、学校運営や教職員の任用に関して意見できる権限を持っているため、地域住民の意見を反映した学校づくりにつながりやすい仕組みです。

一方、PTAは任意団体によるボランティア活動という位置付けのため、そのような権限がありません。学校運営により積極的に関わりたいと考えていても、PTAでは思うような活動をするのは難しいでしょう。

コミュニティスクールの活動事例

PTAと異なり学校運営に対する権限を持つコミュニティスクールでは、具体的にどのような活動を行っているのでしょうか?  コミュニティスクールの活動事例をチェックしましょう。

児童・生徒の学力向上を目指す活動

児童・生徒の学力を伸ばしたいという思いから、コミュニティスクールで学力向上のための取り組みを行っている事例があります。

保護者や地域住民がサポートしながら、足し算・引き算の暗算の確認や、九九の暗唱の確認、学習プリントの丸付けなどを行う活動です。放課後に行うケースもあれば、学校の授業をサポートしているケースもあります。

また地域の講師や大学生を招き、放課後学習をサポートする活動を行っている地域もあるようです。

学校で学ぶ教科以外の教育を行う活動

子どもたちに必要なのは学校で学ぶ教科だけではありません。国語・算数・理科・社会などの教科以外にも多様な学びを得られるよう、保護者や地域住民が得意分野を生かして、子どもに知識を伝えたり指導したりしているケースもあります。

例えば地域の歴史を伝える活動や、農作業の体験、職場体験、餅つき体験、AEDによる応急手当の講習会などを実施している地域があるそうです。

生活や行事のサポート・環境整備

学校生活や行事のサポートを行っている事例もあります。例えば給食の準備や清掃に不慣れな新入学児童をサポートしたり、家庭科の調理実習やミシンの授業で支援に入ったりする活動です。

また児童・生徒が学ぶ環境を整備するために、学校図書館の蔵書点検や花壇の花植え・プールの清掃などを実施している地域もあります。

より気軽に参加できるよう、ボランティアの負担にならない活動内容で実施するといった、工夫も行われているそうです。

児童・生徒の安全対策

児童・生徒が地域で安全に生活できるよう、保護者や地域住民が見守りを行っている地域もあります。例えば通学路の要所に立って登下校の見守りを行ったり、安全点検を行ったりしています。

また児童・生徒が自ら安全を確保しやすくなるよう、防犯についての講話を実施しているコミュニティスクールもあるようです。

地域全体で安全対策を実施することで、犯罪の抑止につながることも期待できます。

児童・生徒による地域貢献

地域住民が児童・生徒のために活動するだけでなく、児童・生徒が地域のために活動している事例もあります。例えば公園や河川など地域の清掃活動や、夏祭りのボランティア活動、地域の運動会の運営補助、防災訓練への参加などです。

最初は児童・生徒のみで活動していた地域の清掃活動が、数年続けることで地域住民へ広がっていった事例もあります。

[まとめ]学校と地域をつなぐコミュニティスクール

コミュニティスクールとは、学校を中心に地域をつなぐ制度のことです。コミュニティスクールに設置される学校運営協議会には、学校運営や教職員の任用へ意見を述べる権限が与えられているため、他の制度よりも地域住民が学校へ関わりやすい制度といえます。

同じように学校を中心に活動するPTAと似た活動も行いますが、目的が社会教育と成人教育である点と、権限の有無が異なる点です。

コミュニティスクールが行う地域での活動は多岐にわたります。保護者や地域住民が児童・生徒をサポートする活動もあれば、児童・生徒が地域貢献につながる活動を実施するケースもあるそうです。

活動が初めての人でも気軽に参加できるよう工夫している地域もあるため、住んでいる地域での活動内容をチェックして、参加してみるのもよいでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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