「子育てに落ち着く時期は来ない」フランス在住・3児の母が10年以上続ける母娘旅の極意、子連れ旅のコツ【フリーアナウンサー・中村江里子さん】

「子どもが小さいうちは、旅行なんて無理!」そんなふうに思ってしまうママも多いはず。
フランスで3人の子どもを育てている、フリーアナウンサーの中村江里子さん。仕事と育児の傍ら、忙しい日々を送りながら、お母さまとの母娘旅を10年以上続けています。
その様子を紹介しているのが、著書『次、どこ行く? 星野リゾートをめぐる母娘旅(扶桑社)』。今回は、20年以上のフランス生活で培われた価値観と、母娘旅の気づきを通して、子育て中のママでも無理なく楽しめるヒントを伺いました。

「落ち着いてから」じゃなくて、今できる形で

—— お子さんが小さかった頃は、どう旅行していたのですか?

中村江里子さん(以下・同):“母娘旅”の第一弾は長女が10歳、息子が7歳、次女が4歳のときでした。母娘旅は日本滞在中なので、パリにいるときよりもさらにオーガナイズが大変。

ほぼ同い年の子どもがいる妹に頼んだりもしましたが、1泊とはいえ3人を見てもらうのは大変なので、次女だけ連れて行ったり……。当時、上の2人は小学生だったので、預けやすかったのです。

母も仕事をしていますから、日程を合わせたりもちろん、準備は大変です。だからこそ、一緒にいられる時間を濃密に過ごしたいという思いがあり、実際に旅はその都度、愛おしい時間となっています。

中村江里子さん

最近は母娘旅に限らず、いつもとは違う時間の流れとなる“旅”は思い立ったときにするべき!! という思いが強くなっています。

「いつか落ち着いたらゆっくり行こう」と思っても、子育てに“落ち着く時期”なんてないですよね?(笑)。だから「できるときに、できる形で行こう!」と行動にうつすのが大事だと思っています。

—— 「できるときに、できる形で」では、どんな旅をされましたか?

先日は私が大阪で仕事があり、妹が母を誘って、みんなで大阪へ行きました。滞在先は別ですが、私が仕事の準備などをしている頃、母と妹は水族館に行ったり、温泉に入ったり2人で楽しんでいたみたいです。万博会場での仕事でしたので、仕事終わりには母、妹と合流して会場内で過ごしたんですよ。

母は万博に行きたいと思っていたようですが、行くタイミングが見つからなかった……ところが私がそこで仕事をするということになり、まさに絶好のタイミングが訪れ、一緒に過ごすことができました。

行けない理由を探すのではなく、行けるように準備をしたり、行動を起こしたりすること。それが、好きな人たちと旅をするときに大切なことだと思っています。

—— お母さまが一緒にいて、けんかになることは?

ないですね。子どものときからけんかをしたことがありません。キャラクターも違いますし、今は大人同士、じっくりと話ができます。

とはいえ母娘旅の撮影中は、どうしても私は仕事モードでテキパキしたい!! 母は旅そのものと撮影自体を楽しんでいて少々のんびりムード。「もう、ママ、急いで!!」などと私が急かしてしまう場面は多々あります(笑)。

子どもが小さいうちは、今もですが……とにかくやることが多く、常に時間との闘い。ゆっくり話したいのに、食事したいのに、常にバタバタ。そんな中で仕事を兼ねているとはいえ、母と2人の時間を持てることは最高にうれしいことで、いろいろな話をしました。

旅先だけでなく、日本に帰国したときには子どもたちが寝てからおしゃべりタイム。軽い近況報告のはずが止まらなくなって、あっという間に日付が変わってしまっていることも。最近は母が先に寝てしまうことも多いですが(笑)。

ぜんぶ一緒にやらなくていい

—— 旅先で、やりたいことが違ったらどうしていますか?

私がアクティビティの山歩きに行って、母は部屋でのんびりお茶を飲んでいることもあります。食事のときに「山歩き、最高だった」「お茶もおいしかった」って話すだけで十分なんです。

旅に限らず、”何かを絶対に一緒にやらなきゃ!! ”なんてことはないのです。一緒に楽しめることもあれば、それぞれがやりたいこともある。旅先でだってひとりの時間を持ちたい人もいる。

それぞれが楽しく過ごした時間を、一緒のときに報告しあって共有して……、そんな過ごし方が素敵だなあと思います。

—— フランスならではの価値観ですね。「団体行動」が重視されている日本では、一緒に過ごさなきゃと思ってしまいます……

日仏ということに限らず、結婚をして”自分の”家庭を持つと、それぞれの生活スタイルになります。リズムや考え方、それこそ掃除の仕方や片付けの仕方だって、変化をしてきます。

お互いに大人ですから、相手に合わせることはできます。でも母娘だって、興味の対象が違うときもありますよね。嫌なのに無理に合わせて一緒に何かをするのではなく、それぞれが楽しむ時間を持つということは、”尊重”でもあると思います。

もしストレスになってギスギスしてしまうのであれば、それぞれの時間を持つという手もあります。例えば「陶芸は一緒にやろうね。でも、私が泳いでいるときはママはスパに行くのはどう?」と提案してみたり。

最近は母も高齢なのでいろいろと心配で私がくっついて回っていますが(笑)。

それも私がやりたくてやっていることなので、楽しいですよ!!

思い出に残っているのは「星のや軽井沢」

—— 印象に残っている旅先はありますか?

同じ場所に二度訪れたということもあり、“星のや軽井沢”でしょうか。一番最初の母娘旅が軽井沢で、昨年の母娘旅で10年ぶりにまた行くことになりました。

母はその頃、長年介護していた犬を亡くして、悲しみから抜け出せないでいました。自分の体よりも犬のことを必死にやっていた数年間だったので、「頑張って行ってみない? 気持ちも変わるし!」と、一緒に帰国していた次女と共に訪れました。

10年前との違いは、あんなに何度も温泉に入っていた母が、今回は疲れすぎていて、温泉に行けなかったこと。でも、今回は思いがけず母娘3世代の旅となり、母はずっとうれしそうにニコニコしていました。

一方で、私はいつもの悪い癖で、ついつい母に「ママ、早く着替えて! スタッフさんたちが待ってるから急いで!」と急かしてしまったんです。すると、スタッフの方が「お母様は私がお連れするから大丈夫ですよ」と優しく声をかけてくださり、また次女も母をケアしてくれました。

このようなさりげない親切や、必要なときに手を差し伸べてくれるシーンに出合うことが多くて。たった一泊の旅行なのに、母はチェックアウトのときに感激して涙ぐんでしまい、スタッフの方ももらい泣きしていました。

何度でも訪れたくなる場所ってありますよね?

私たちにとっては”星のや軽井沢”がまさにそんな場所の一つになりました。

ちょっとでも不安なことは「予約の前に確認する」

—— 星野リゾートの中で、子連れで行きやすい場所は?

リゾナーレはアクティビティが多く、ファミリー向けです。食事も選択肢がありますし、スタッフの方々も子どもの対応に慣れていて安心できますね。

星のや軽井沢は、特別な空間で非日常をゆったり過ごすことができます。アクティビティも豊富で、動きやすいのも特徴。“界”は温泉旅館なので、朝晩のお食事が大人向けとなってしまいますが、お子さん連れの方は事前にご相談されたらよいと思います。

我が家の子どもたちは和食の朝ごはんや懐石料理だといただけないものも多いので、洋食に変更は可能かどうか、事前に問い合わせをしました。

—— 数々のご経験から、子連れ旅行のコツを教えてください。

少しでも不安なことがあったら、事前に旅先に確認しておくことです。

小さな子どもを連れての旅行は、移動だけでも大変ですよね。不安な気持ちで出発したくないですし、旅先でも気を使うことばかりとなってしまっては楽しめません。

だから出発前に不安要素をできるだけ減らしておくことが大事だと思っています。予約の前に、食事や気になることがあったら、宿に前もってメールや電話をしておく。

そのお返事が「心配なくいらしてくださいね」なのかあまり感じのよくない対応なのかで、おのずとどうするべきか見えてきますよね。

せっかくの旅なのですから……私たちだって存分に楽しみたい!!

—— 対話を大事にする、フランスらしい考え方だと感じました。

もちろんどこへ行くのにも子連れの旅の準備は大変ですし、旅先でげっそりしちゃうくらい疲れることもあります(笑)。でも、思い切って出かけると大変だったことも、楽しかったことも、後で必ず笑って話せる思い出になるはず。

あと、旅ではないのですが、子どもたちが小さいとき、長女6歳、息子3歳、次女0歳のときから、年に1~2回、3人を連れて日仏の往復をしていました。

毎回、「もうこのまま倒れたい」と思うほど疲れていましたが、あのときの小さなさまざまな出来事が、今ではただただ楽しく蘇ってきます。「また、あんな時間を過ごしたい」と思うほど。

どうぞ素敵な旅を!!!

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「ふだん忙しくて、なかなかゆっくり話せない。そんな母とのおしゃべりもふたり旅ならではの楽しみです。母と一緒に過ごした星野リゾートの滞在経験が、旅先選びのお役に立てたらうれしいです!」(中村)
中村江里子さんのパーソナルムック『セゾン・ド・エリコ』の人気連載「母娘で楽しむ小さな旅」をもとに加筆再編集。星野リゾートブランドの特徴を目的別に構成しています。
星野リゾートにいつか泊ってみたい、またはリピーターで次はどこに行こうか迷っている、そんな方々に役立つ内容です!

お話を伺ったのは

中村江里子

1969年生まれ。フジテレビのアナウンサーを経て、フリーのアナウンサーとなる。2001年にシャルル・エドワード・バルト氏(化粧品会社経営)と結婚し、生活の拠点をパリに移す。現在は17歳、14歳、10歳の3人と子どもの母親でもある。パリと東京を往復しながら、テレビや雑誌、執筆などで幅広く活躍中。2014年10月扶桑社ムックでパーソナルライフスタイルマガジン「セゾン・ド・エリコ」創刊、他著書も多数。

取材・文/綾部まと



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