動物との距離の近さに驚き!
今回は、ツェルマットとグリンデルワルトという2つの村に滞在し、近隣でハイキングを楽しむ6泊8日の旅。三世代なので無理のないよう、また天気が悪いことも考えて、余裕のある日程にしました。
どちらの村にも、ロープウェイや鉄道で気軽にアクセスできるハイキングコースがたくさんあります。

ハイキングコースを歩いてると、カランカランとカウベルの音。目をやると、登山道のすぐそばで牛が草を食む姿が。娘はカウベルといえばまず思い浮かぶのは楽器のようで、「これが本当のカウベルか!」と感心していました。
日本では動物園や牧場でしか見られないような光景も、スイスでは当たり前です。

牛のフンが登山道に落ちていることもありますが、それも自然の一部。ハエが日本より多いことにも「牛が多いからだね」と母。
ゴンドラに乗っていると野生の鹿が見え、みんなで動物探しに夢中に。犬と一緒にハイキングを楽しんでいる人が多いのも印象的でした。

そんな豊かな自然環境に育まれているだけあって、チーズをはじめとする乳製品のおいしさも格別。
スイス料理はチーズフォンデュやラクレットなどチーズやジャガイモを使った料理が多く、小さな子どもが食べやすいのもうれしいポイントです。
ロープウェイで楽々! 子連れに優しい絶景ハイキング

スイスの良いところは、登山鉄道やロープウェイであっという間に3000m級の絶景ポイントまで行けること。体力に自信がない高齢者や、小さな子連れでも簡単に絶景にアクセスできます。

展望台近くには子どもの遊び場があることも多く、小さな子どもたちが楽しそうに遊んでいました。

ちなみにツェルマットからは、ロープウェイを乗り継いで、なんとイタリアにも行けます。国境を越えると、山小屋でのあいさつが「ハロー」や「グーテンターク」から「ボンジョルノ」に変わり、値段表示もスイスフランからユーロに。
日本では体験できない陸路での国境越えは、子どもが地理に興味を持つきっかけになってくれるかもしれません。

ちなみに今回滞在したツェルマットやグリンデルワルトのようなスイスの観光地では、基本的にどこでも英語が通じました。ホテルでドアの調子が悪くて見に来てもらったメンテナンスのスタッフさんが、次々にかかってくる電話に英語とドイツ語を切り替えながら対応していて、家族で「すごい!」と聞き入ったことも。
英語が母国語ではないのに、流暢に複数の言語を使いこなす姿に、語学を学ぶ娘も刺激を受けたようです。
ゴミがない! 見習いたい美しい景観への意識

スイスを歩いていて驚いたのは、ゴミが落ちていないこと。ハイキングコースも街なかも、どこもとてもきれいです。みんな当たり前にゴミを持ち帰っているほか、駅や街なか、電車などあちこちにゴミ箱があるのも理由だと思います。
さらに村のあちこちやホテルの窓辺には花が飾られていて、まるで絵本の世界。母は「本当に町がきれい」と何度も写真を撮っていました。

持続可能な観光への取り組み「スイステナブル」

スイスの環境意識の高さは、景観の美しさだけでなく、観光業全体の取り組みにも表れていました。
たとえばツェルマットの村は、ガソリン車の乗り入れが禁止されているので、走っているのは電気自動車のみ。そのせいか空気がひときわおいしい気がしました。スイスにはこうしたカーフリーリゾートが複数あります。
ホテルでは、ペットボトルの水がなく、代わりに置かれていたのはウォータージャグ。また洗面所には「環境のためにタオルの再利用にご協力ください」というメッセージがありました。こうした取り組みは日本のホテルでも見かけますが、スイスではより当たり前な感じがしました。
ちなみにスイスでは、「スイステナブル(Swisstainable)」という独自のサステナビリティ・プログラムが展開されています。これは「スイス」と「サステナブル(持続可能な)」を掛け合わせた造語で、観光業全体をより環境・地域に配慮したものにしていこうという取り組みです。

多くの宿泊施設やレストラン、交通機関などがプログラムに参加しています。今回の旅行中も、街なかのデジタルサイネージやツアーパンフレットでロゴを見かけました。
子連れスイス旅行を楽しむための工夫

現地で体験して感じた、押さえておきたいポイントをご紹介します。
1. 鉄道の割引パスは家族の強い味方!

物価の高いスイス。移動費を抑えるには、鉄道などが乗り放題の「スイストラベルパス」などを購入するのがおすすめです。今回、私たちは都市間の移動が少なかったので、運賃が半額になる「スイスハーフフェアカード」を使いました。
こうしたカードがあると、登山鉄道やゴンドラリフトも50%割引に。いずれのカードも6歳未満は無料。6歳~16歳は家族と一緒なら無料で発行できます。購入の際は旅程と照らし合わせてお得なものを選んでください。
2.鉄道アプリとお天気アプリが便利
「SBB Mobile」(スイス鉄道の公式アプリ)を入れておけば、電車の切符購入や時刻表確認がスマホで完結。「MeteoSwiss」という天気アプリと、グリンデルワルト周辺ではライブカメラ「Webcams Jungfrau Region」(Webサイト)も大活躍でした。
3.キャッシュレスで楽々
支払いは基本キャッシュレスでOK。今回、スイスフランには両替せず、すべてクレジットカードで済ませました。有料トイレも今回使ったところはすべてキャッシュレスでした。
ただトイレに関しては、たとえばチューリヒ駅では1.5スイスフラン=約270円と高額なので、家族3人で利用すると1000円近くかかることも! 山の上に行くと、2スイスフランなどさらに高額になりますが、その料金は環境保全に使われていると聞けば気持ちよく支払えます。

物価は高いもののスーパーの総菜を活用するなど、工夫次第で節約も可能です。レストランの料理は量が多めで、食べきれない分は持ち帰りがOKなところがほとんどです。
4. ハイキングを楽しむなら靴やレインウェアの用意を

スイスの自然を満喫するなら、やはりハイキングがおすすめ。整備されたコースや短いコースも多いので、小さな子連れもOK。ただし、靴はしっかりした運動靴を。山の天気は変わりやすく、急に雨がぱらつくこともあるので、レインウェアも忘れずに。
また、鉄道やゴンドラで簡単に標高をかせげる分、3000メートル級の展望台に行くときは高山病にも注意。意識的にゆっくり行動するのがおすすめです。
ツェルマットやグリンデルワルトのような山岳リゾートは朝晩だけでなく、夏でも天気によっては肌寒いので調節できる服装の準備を。また、空気が乾燥しているので、のど飴などがあると安心です。
スイスの旅を通して感じたこと

今回、スイスで過ごして感じたのは、自然と人の距離が近いこと。おいしい食べ物も、きれいな景観も、特別な誰かが作っているのではなく、自然と人々の共生の中で守られていると実感しました。
治安も良く、ツェルマットやグリンデルワルトのような山岳リゾートは夜でも安心して歩けます。三世代それぞれが楽しめて、心身ともにリフレッシュできました。物価の高さはハードルですが、次は違う季節のスイスも見てみたいなと思っています。
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取材・文/古屋江美子
