ウクライナ侵攻以来初の対面会談
2025年8月15日、米アラスカ州アンカレジのエルメンドルフ・リチャードソン統合基地で、米国のドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領による首脳会談が開催されました。
この会談は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以来初の対面会談であり、4年ぶりの米露首脳会談として世界中から注目を集めました。
なぜアラスカで行われたの?
会談の場としてアラスカが選ばれた理由は、地理的・歴史的な背景にあります。アラスカは1867年にロシアから米国が購入した土地で、両国の歴史的つながりを象徴しています。
プーチン大統領は「アラスカは米露の共通の歴史と文化の地」と述べ、ベーリング海峡を挟んでわずか4キロしか離れていない「隣人関係」を強調しました。

会場となったエルメンドルフ・リチャードソン基地は、冷戦時代から戦略的に重要な軍事拠点であり、安全保障上の条件を満たす場所として選ばれました。トランプ大統領の選挙公約「ウクライナ戦争を24時間で終わらせる」も、この会談の重要な動機でした。
ウクライナ紛争の停戦について具体的な合意には至らず
会談の主要議題は、3年半続くウクライナ紛争の停戦と和平交渉でした。
プーチン氏はウクライナを「兄弟国家」と呼びつつ、ロシアの安全保障上の懸念としてウクライナの「非軍事化」や「中立化」を主張。対するトランプ氏は、領土交換を含む停戦案を提案しましたが、具体的な合意には至りませんでした。
両首脳は「建設的な対話だった」と評価しつつも、ウクライナのゼレンスキー大統領やNATOとの調整が必要と述べ、進展は限定的でした。
経済協力により、対立から協調へ
プーチン氏は、貿易や宇宙開発、北極圏での協力など、米露間の経済連携の可能性を強調。ロシアの豊富なレアアース資源を活用した経済協力を提案し、対立から協調への転換を訴えました。

トランプ氏も「多くの点で合意した」と前向きな姿勢を示し、次回の会談をモスクワで開催する可能性に言及。両首脳の再会談への意欲は、関係改善の第一歩と見られています。
対話の再開ができたものの、ウクライナ和平への進展はなし
この会談は、米露間の対話再開という点で一定の意義を持ちました。しかし、ウクライナの領土問題など、複雑な課題の解決には程遠い状況です。
トランプ氏はゼレンスキー氏との対話を予定し、プーチン氏はロシアの国益を優先する姿勢を崩していません。また、会談の舞台裏では、経済的利害や資源を巡る戦略が交錯。ロシアの資源輸出をテコにした外交が、戦争終結への鍵となる可能性も示唆されました。
アラスカでの米露首脳会談は、ウクライナ和平への道筋はつけられなかったものの、対立する両国が対話のテーブルについた歴史的な一歩でした。しかし、肝心のウクライナ問題では何も進展は見えないことが、あらためて浮き彫りになりました。
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
