待機児童数の推移。近年は…

待機児童の数は、年々変化しています。近年どのような状態なのか、推移を見ていきましょう。併せて、地域ごとの特徴も解説します。
待機児童は減少傾向にある
待機児童とは、保育施設や幼稚園への入所を希望しているものの、施設側の都合で入所ができず順番待ちをしている子どもを指します。
【2013年から2024年の待機児童数】
・2013年 2万2,741人
・2014年 2万1,371人
・2015年 2万3,167人
・2016年 2万3,553人
・2017年 2万6,081人
・2018年 1万9,895人
・2019年 1万6,772人
・2020年 1万2,439人
・2021年 5,634人
・2022年 2,944人
・2023年 2,680人
・2024年 2,567人
2013年時点では2万人以上の待機児童がいましたが、2024年には2,000人台まで減少し、年々減少傾向です。
地域ごとの特徴
待機児童の数は、地域によって状況が異なります。全ての都道府県が減少しているわけではなく、増加や減少を繰り返している地域もあるのです。2024年時点での状況を確認してみましょう。
【待機児童数が多い都道府県(2024年時点)】
・東京都 361人
・沖縄県 356人
・滋賀県 353人
・兵庫県 256人
・埼玉県 241人
待機児童数が多い都道府県であっても、人口や都道府県内のエリアによっては割合として高くない可能性もあります。対して待機児童数が0人の都道府県も10以上あり、改善状況には差があるようです。なお、待機児童数が多い都道府県の中にも、過去と比べると大幅に減少している地域や急増している地域があります。
待機児童が減少している理由と背景

待機児童の推移を見ると年々減少が続いていますが、どのような背景があって減少が続いているのでしょうか? 主な原因と背景について解説します。
保育施設の増加や定員増
待機児童の減少要因として、保育施設の増加や定員増が挙げられます。以前よりも保育施設が増えているために、保育施設に入れない子どもが減っているのです。
2013年に2万4,425カ所だった保育施設は、2024年になると合計3万9,805カ所に増加しています。2013年の利用児童数は226万6,813人、2024年には270万6,058人と利用児童数自体は増えているものの、施設数が大幅に増えているために十分な対応が可能です。
保育所以外にこども園や地域型保育事業が充実し、子どもの保育を担う施設が多くなっていることもあり、選択肢が増え待機児童の減少につながっています。
出典:「保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)」を公表します|こども家庭庁
子どもの人数が減少している
2024年の出生数は、68万6,061人です。2023年と比べて4万人以上出生数が減っており、毎年少しずつ減少しています。
子どもが減っていくと保育施設を必要とする子どもの数も予想より少なくなり、結果的に施設利用の申し込み人数の減少につながります。
現時点では両親ともに働く家庭が多いことから大幅な利用人数減少は始まっていないものの、当初の予測より申し込み人数が減少していることは確かです。今後、さらに保育施設を利用する0〜5歳の人数は少なくなっていくでしょう。
育児休業制度の充実
近年、育児休業制度は男女ともに充実してきています。特に男性の育児休暇取得率はここ数年で大きく変化し、以前は取得率が数%だったものが2024年には40.5%となり、大幅な改善傾向です。
女性の育児休暇取得率は80%台で横ばいですが、育児休業制度の推進や最大28日間手取り10割相当の給付金を受け取れる「出生後休業支援給付金」の創設などもあり、産前産後の休暇は取得しやすくなっています。
育児休業制度が充実している会社であれば両親が子どもを世話できる期間も長くなり、一時的に保育施設への入所を遅らせるケースもあるため、育児休業制度の充実も待機児童の減少に一定の影響を与えていると考えられます。
待機児童の今後の予測と課題

待機児童の数は、今後どのように変わっていくのでしょうか? 推移の予測と今後の課題について解説します。待機児童の数が減っても、保育施設数との兼ね合いや保護者の希望など、さまざまな問題が出てくる可能性もあるでしょう。
少子化が進むと今後も減少する見込み
少子化が速いペースで進むと、保育施設の数に比べて子どもの数が減少するため、待機児童の数は今後も減少する見込みです。定員割れの保育施設が多くなると、順番待ちをする必要がなくなり、すぐに子どもを預けられます。
日本の少子高齢化は今後も緩やかに進んでいく予測で、待機児童の数も減少していく可能性が高いでしょう。さらに、現状は予測よりも少子化が進むペースが速いため、さらに保育施設を必要とする子どもの数は少なくなるはずです。
ただし、少子化が現在のペースで今後も進んでいくかどうかは未知数であり、状況によって子どもの数が増える可能性も考えられます。
児童の減少により保育施設が余る可能性がある
少子化が進んだ場合、子どもの数に対して保育施設が余ります。定員割れや申込者がいないなどの問題で経営がうまくいかず、廃業や撤退をする施設も増えていくでしょう。
一時的に子どもの数に対して保育施設が多い状況が続いたとしても、少子化が改善する兆しが見えなければ保育施設の数も子どもの数に合わせて減っていくはずです。
待機児童の数が多くならないようコントロールはされるとしても、全員が自由に好きな保育施設が選べるようになり、全ての希望が叶うほど、施設の数が余り続けることは考えにくいでしょう。
待機児童が少なくなっても本質的な問題は残る
待機児童とは、保護者が保育施設へ入所の希望を出し、希望が叶わなかったときに初めてカウントされるものです。空きがなく申し込みができずに入所を諦めるときや、求職活動を中止しているようなときには保護者の都合と判断されます。
待機児童の数が減っても、子どもが預けられず求職活動自体が難しくなるケースや、希望の施設に預けることができずに復職ができないケースなど、本質的な問題は残り続けるでしょう。地域によって希望の施設に入所できるかどうかも偏りがあります。
ある程度は許容が必要であったとしても、「勤務時間数と預けられる時間が合わない」「子どもが別々の保育施設になり送迎をしていると出勤時間に間に合わない」など、勤務自体が難しくなると申し込みを諦め休職しなければならないパターンも考えられます。
待機児童の減少には複数の背景がある

待機児童の数は年々減少しています。国が待機児童の減少を推進していることもありますが、さまざまな背景があり減少につながっています。
今後も少子化が進めば、待機児童は減少していくと考えられます。しかし、保育施設が余る可能性や、保護者の希望が全て叶うとは限らないことは課題として残るでしょう。
こちらの記事もおすすめ
文・構成/HugKum編集部