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数を唱えられることと、数の概念を理解することは別物
「いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお・・・」数を数える声が聞こえると、「うちの子、数がわかってる!」と思うこと、ありますよね。
でも、実は「数を唱えられる」ことと「数の概念を理解する」ことは別物。単に唱えられるだけでは、「数がわかっている」とは言えないのです。
「数が唱えられる」だけでは不十分
子どもが「1、2、3」と言えるようになったとしても、それは数唱(数を唱えるだけ)の段階かもしれません。よくよくお子さんを観察すると、数を1から10まで唱えられるけれど、「3つ取って」「ぜんぶで5個にして」などの要望に答えるのは難しいということもよくあるものです。
数を理解するには、数の概念(数字と数量の対応)を身につける必要があります。
つまり、数の力は「数唱」と「数概念」の両方がそろって獲得が進んでいると言えます。
数の概念を育てるためには、日常の遊びの中で具体的な体験を
- 数唱:「いーち、にーい、さーん」と数字を順番に言えること
- 数概念:数字とものの数が結びついていて、「りんご3個」と言われたら3つを正しく取れること
この「言える」と「わかる」は、似ているようでまったく違います。数概念を育てるためには、日常の遊びの中で具体的に体験させることが大切です。
やってみて! 数の理解を育てる遊び
数の理解を育てる遊びのアイディアをいくつかご紹介します。
①ものを並べる
つみきを積む ミニカーを道路や駐車場に並べる

「並べる」という行為が、数を数える第一歩につながります。
②1対1の対応をつくる
5体のお人形ひとつひとつに、食べ物を1つずつあげていくことで、1対1の対応を学習していきます。

「ぴったり」「足りる」「あまる」といった数にまつわることばも意識して使用していきます。
楽しいときには、「もう1回!」を経験させましょう
遊びやおやつ、食事などの場面では、ジェスチャーで「もう1回!」「もう1個」とのやりとりを意識していきます。「もういっこ」「もういっかい」という言葉をやりとりしながら、数量の増減を体感できます。
③飛ばさずに、かぶらずに指差していく
イラストやおもちゃを1つずつ指しながら数える
指差しが「飛ばさず」「かぶらず(重複せず)」できるようにサポートします。
指差しの順番やリズムがそろうことで、1対1対応が育ちます。

④サイコロ遊び
- 1〜3までのサイコロを手作りして転がす。
- 出た数のブロックを集めたり、シールを貼ったり。

数概念の獲得を促したいとき、いきなり大きな数を扱うのではなく、まずは1から3までの数を扱えるようになるよう練習するのがおすすめです。
ふつうのサイコロの4から6の上に、テープなどを貼り、1から3までの数だけに限定した簡易サイコロを作ります。遊びの中で反復練習することで、「数」と「量」のつながりを、少しずつ身につけていきます。
日本語特有の「数のむずかしさ」
ところで、数の理解には言葉の要素も影響します。日本語では、数えるときの数字の言い方のバリエーションや、「かぞえかた」の表現がとても豊富という特徴があります。かぞえかたのつまずきやすさにも注意が必要です。
- 同じ数字でも言い方が複数ある:「1(ひとつ/いっこ)」「4(し/よん)」「7(しち/なな)」など
- かぞえかたの表現が豊富:「1個」「1本」「1枚」「一人」「1匹」など
もちろん、これらは一度に理解されるものではありません。年齢や発達に応じて、少しずつ積み重ねていくことが大切です。
唱えられるだけでなく、数をやりとりする経験を重ねていきましょう
2〜3歳ごろは、数唱ができてきても、まだ数の概念が未発達な時期。
遊びや生活の中で、「並べる」「1つずつ対応させる」「繰り返す」といった具体的な体験を重ねることが、数の理解を育てます。
「唱えられる」だけではなく、数を“見て、触れて、やりとりする”経験をたっぷり取り入れていきましょう。このような視点を持つことで、数の理解が次第に深まり、後の教科学習としての算数の土台にもなっていきます。
教えてくれたのは
慶應義塾大学文学部卒。養成課程で言語聴覚士免許を取得。総合病院、耳鼻科クリニック、専門学校、区立障害者福祉センターなどに勤務ののち独立し「ことばの相談室ことり」を設立。現在、東京都台東区と熊本市中央区に店舗を構える。年間100症例以上のことばの相談・支援に携わる。臨床のかたわら、「おうち療育」を合言葉に「コトリドリル」シリーズを製作・販売。専門は、子どものことばの発達全般、吃音、発音指導、学習面のサポート、大人の発音矯正。著書に、『0~4歳 ことばをひきだす親子あそび』(小学館)、『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』(誠文堂新光社)がある。
