東大卒・人気塾の先生が教える、勉強の自立を促す「ZCBA評価」とは? 中学進学までに身に付けるべき4つの習慣 【東大卒教育アドバイザー連載】vol.7

『10歳からの“勉強”こうりゃく! 頭がよくなる88ワザ』の著者で、東大卒の教育アドバイザー・清水章弘さんの執筆による好評連載。第7回は、中学進学までに身につけておきたい「学習習慣」について。カギとなる「ZCBA評価」とは?

もうすぐ中学生、うちの子は大丈夫?

「もうすぐ中学生になるのに、うちの子は宿題をやるのも一苦労。机に向かっても集中できないし、答え合わせも適当で…。このままで中学校の勉強についていけるのかしら?」

こんな不安を抱えている保護者の方は多いのではないでしょうか。小学校高学年になると、勉強の内容も難しくなり、中学進学を控えて「今のうちに何か準備をしておかなければ」と焦る気持ちもあるでしょう。

しかし、やみくもに勉強量を増やしたり、難しい問題集を買い与えたりするだけでは、根本的な解決にはなりません。大切なのは、中学校での学習を支える「学習習慣」を今のうちに身につけることです。

教育アドバイザーの清水章弘先生「学習習慣をいかに身につけるかが大事です」

学習習慣は「主体性×勉強のやり方」

学習習慣とは、単に「毎日決まった時間に机に向かう」ことではありません。真の学習習慣は「主体性」×「勉強のやり方」の掛け合わせで成り立っています。

「主体性」とは、自分から進んで学習に取り組む姿勢のことです。例えば、わからないことがあったときに、自分で解決しようとする態度や、苦手な授業の前に少し予習をしておこうとする意識などが挙げられます。

一方、「勉強のやり方」とは、効果的な学習方法を知り、実践できることです。解いた後は答え合わせをし、解説を読み、間違い直しをするといった、学習の基本的な流れを理解していることが重要です。この2つが組み合わさることで、子どもは自立した学習者として成長していくのです。

中学進学までに身につけるべき学習習慣

具体的には、以下の習慣を中学進学までに身につけておきたいものです。

①決まった時間に机に座る

学習のリズムを作ることで、勉強への心理的なハードルを下げることができます。

②解いたら答え合わせをする

多くの子どもが見落としがちですが、答え合わせからが本当の勉強です。正解不正解を確認するだけでなく、解説を読んで理解を深めることが大切です。

③「答え写し」ではなく、解き直しができる

間違えた問題の答えを赤ペンでそのまま写すのは「答え写し」です。本当の学習効果を得るためには、解説を読んで理解し、答えを閉じてから鉛筆で自分の力で解き直す「解き直し」が必要です。

④わからないことは、調べる習慣がある

辞書や参考書、ときにはインターネットを使って自分で調べる習慣は、中学校以降の学習で大きな力となります。

ZCBA評価で段階的に主体性を引き出す

主体性の大切さは理解できても、最初から主体的に取り組むことは子どもにとって簡単ではありません。そこで、以前、この連載でご紹介した「ZCBA評価」という段階的なアプローチを活用しましょう。ZCBA評価とは、学習者の習得状況を4つのステップに分けて評価し、段階的に自立を促す方法です。

ステップZ:やり方を知らない状態

ステップC:サポートが必要な状態

ステップB:一人でできる状態

ステップA:上手にできる状態

例えば、「解いたら答え合わせをする」という習慣を身につける場合を考えてみましょう。

ステップZ:やり方を知らない状態

この段階では、親が答え合わせのやり方を実際にやってみせることが重要です。解答を見て丸付けをし、間違えた問題の解説を読み、それでもわからないときは人に質問するという一連の流れを、まず親が実演します。

「教える」よりも「一緒にやる」「やってみせる」ことから始めましょう。言葉で説明するだけでは、子どもは実際の行動に移すことが難しいものです。親がやってみせた後で、「今度は一緒にやってみよう」「次は自分でやってみて」と段階的に進めることが大切です。これを2〜3回繰り返すことで、次のステップに進む準備が整います。

ステップC:サポートが必要な状態

この段階では、親の目が届く範囲で学習させ、解いた後に答え合わせができているかを確認します。リビング学習など、自然に親の目が届く環境を作ることが効果的です。

ここで重要なのは、適当に丸付けをしていないか、子どもの答え合わせを丁寧にチェックすることです。子どもを「監視」するのではなく、正しいやり方ができないときに、いつでも助ける準備ができているという「見守り」の姿勢で行いましょう。

ステップB:一人でできる状態

基本的には子どもに任せますが、時々、適切に答え合わせができているかを確認します。ここでのポイントは、「疑い」ではなく「ゲーム感覚」でチェックすることです。

例えば、「この問題、マルがついてるけど結構難しいよね。もう一度やってみる?」といった声かけで、自然に復習の機会を作ります。抜き打ちテストも、「監視」ではなく「学習の確認」として、明るい雰囲気で行うことを目指してください。

ステップA:上手にできる状態

特に介入は不要ですが、子どもが困っているときは相談に乗ります。この段階では、子どもの学習の自主性を尊重し、必要なときにサポートする姿勢を保ちましょう。

子どもの発達段階に合わせて、ZCBA評価を活用して

中学進学を控えた今こそ、学習習慣を身につける絶好の機会です。大切なのは、子どもの発達段階に応じて、段階的に自立を促すことです。

ZCBA評価を活用して、「やってみせる」「一緒にやる」「見守る」「任せる」という段階を踏むことで、子どもは確実に学習習慣を身につけていきます。

焦らず、子どもの納得感を大切にしながら、中学校での学習に向けた土台をしっかりと作っていきましょう。そうすることで、子どもは「勉強ちょっと楽しい!」と感じられる学習者へと成長していくはずです。

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子どもの「勉強って楽しい!」のために親ができること

記事執筆

清水章弘 教育アドバイザー

1987年、千葉県船橋市生まれ。私立海城中学高校、東京大学教育学部を経て、同大学院教育学研究科修士課程修了。中学高校時代に生徒会長、サッカー部、応援団長、文化祭実行委員などを経験しながら東京大学に現役で合格。自身の時間の使い方や効率的な勉強法を体系化し、「勉強のやり方」を教える塾プラスティーを起業。現在は東京・京都・大阪で運営。創業以来、公教育支援を続けており、青森県三戸町教育委員会の学習アドバイザー等を務めてきた。

著書は『東大式ふせん勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など13冊。累計40万部を突破、海外翻訳も多数。TBS「ひるおび」YTV「情報ライブ ミヤネ屋」MBS「よんちゃんTV」コメンテーター、北海道テレビ「イチモニ!」などに出演。朝日新聞・朝日小学生新聞で執筆・連載中。プライベートでは2児の父。

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