リビング学習、そのままで大丈夫? 「自学力」を育むため、今日からすぐできる親のアクション《4つのステップ別》|東大卒教育アドバイザー連載vol.5

『10歳からの“勉強”こうりゃく! 頭がよくなる88ワザ』の著者で、東大卒の教育アドバイザー・清水章弘さんの執筆による好評連載。第5回は、小学生の子どものリビング学習について。リビング学習のメリット・デメリットを踏まえつつ、子どもの「自学力」を4つのレベルにわけ、親の関わり方を紹介します!

子どもの「自学力」、これで育める?

お子さんがリビングで勉強している姿を見て、「これでいいのかな?」と疑問に感じたことはありませんか? 将来的にはひとりで勉強できるようになってもらいたいけど、任せるにはまだまだ不安…と悩む親御さんは少なくありません。

特に小学校高学年になり、学習内容が難しくなるにつれて、家庭での学習環境はより重要になります。今回は、お子さんの「自学力」を育むための具体的な親の関わり方についてお話ししたいと思います。

親の視点から考える、リビング学習の難しさ

リビング学習には、多くの家庭が経験している通り、良い面と難しい面の両方があります。

メリット:子どものつまずきを親が把握できる

まず良い点として、親の目が届きやすいことが挙げられます。お子さんがどこでつまずいているのか、集中できているのか、親がすぐに気づけるのは大きなメリットです。わからないことがあればその場で質問できるので、疑問を抱えたままにせず、スムーズに解決できます。

また、適度な緊張感があるため、子どもがだらだらと時間を過ごすことを防ぎ、集中力を維持しやすいという声もよく聞かれます。親子のコミュニケーションが増え、学習内容について会話する機会が自然と増えることも、リビング学習の魅力と言えるでしょう。

昨今、増えてきているリビング学習。

デメリット:リビング特有の雑音や動き、ゲームなどの誘惑

一方で、懸念される点もあります。いちばんの心配は、集中力の妨げになる可能性です。テレビの音、家族の話し声、生活の出入りなど、リビング特有の雑音や動きが気になって、子どもが学習に集中できないことがあります。

また、リビングにおもちゃやゲーム、スマートフォンなどがあると、つい誘惑に負けてしまうことも。子ども自身が「一人で集中できる場所」を持てないことで、深く思考したり、自分のペースで学習を進めたりするのが難しいと感じるケースもあります。

親にとっては、リビングに教材が散らかりやすく、整理整頓が必要になるという負担も出てくるかもしれません(しかし、こうしたデメリットは工夫次第で改善できることも多いのです。具体的な工夫に関しては、こちらの記事もご参照ください)。

親の関わり方で変わる! 自学力を伸ばす、学習状況別《4つのステップ》

リビング学習を続けるにせよ、いずれは子ども部屋での学習に移行するにせよ、大切なのはお子さん自身が「自学力」を身につけることです。つまり、「親の目」がなくても、自分で学習計画を立て、実行し、振り返る力を育むことです。

私の塾では、子どもの学習状況を4つの段階「Z」「C」「B」「A」にわけて分析し、それぞれに合わせたアプローチを行っています。これは、リビング学習の環境下でも大いに役立つ考え方です。お子さんが今、どの状態にあるかを観察し、その状態に合わせた具体的なアクションを起こすことが、「今日からすぐにやってみよう」と思える最初の一歩です。

ステップZ:やり方を知らない状態

この段階のお子さんは、そもそも「どうやって勉強したらいいのか」がわかっていない状態です。宿題の進め方、問題集の取り組み方、ノートの取り方など、基本的な学習方法を知らない可能性があります。

☆今日からすぐできる親のアクション☆

学習の準備のやり方を覚える:宿題を始める前に必要なものを準備する、終わったら片付けるといった一連の流れを一緒に実践し、学習習慣の「型」を作っていきます。

横について、一緒に勉強する:まさに「手取り足取り」で、最初から最後までお子さんの横に座って、一緒に課題を進めてみましょう。例えば、漢字の練習なら「まずお手本を見て、空書きしてみよう。次に書いてみよう」と具体的に手順を示します。

つきっきりは時間も手間もかかって大変ですが、子どもが勉強のやり方を身につけるための最初の一歩と思って。

ステップC:サポートが必要な状態

やり方はなんとなくわかっているものの、まだ一人で完全に集中して取り組むのは難しい状態です。親のサポートがあることで、初めて集中が持続したり、学習が進んだりします。

☆今日からすぐできる親のアクション☆

最初の10分だけ横について集中を促す:学習開始の合図として、最初の5分〜10分だけお子さんの横に座り、一緒に課題を見たり、今日の目標を確認したりします。お子さんが集中し始めたら、「じゃあ、ママ(パパ)はこっちで他のことするからね」と声をかけて、別の作業に移りましょう。

見守りに移行する:完全には離れず、お子さんが視界に入る範囲にいつつも、親は別のことをするようにします。家事でもいいですが、読書や親自身の学習をすると、お子さんによい刺激になります。時々目を向けたり、ちょっとした声かけをしたりすることで、適度な緊張感を持たせつつ、徐々に自分で取り組む時間を増やしていきます。

ステップB:一人でできる状態

親の直接的なサポートがなくても、ある程度は自分で学習を進められる状態です。しかし、まだ完全に自立しているわけではないため、結果に対するフィードバックや、困ったときのサポートが必要です。

☆今日からすぐできる親のアクション☆

「見守れる場所」で勉強させる:リビング学習を続ける場合、親もリビングにいながらも、お子さん自身のペースで学習を進めさせます。子ども部屋で勉強させる場合は、扉を開けておく、時々声をかけるなど、見守りのサインを送ります。

取り組みに対して具体的にフィードバックする:宿題が終わったら、「よくできたね」「この問題は惜しかったね、一緒に見てみようか」など、具体的な内容に触れて声をかけます。プロセスだけでなく、取り組んだ内容に対する評価と改善点を伝えられるとベストです。

困ったときは助けられるよう見守りつつ、子どものペースで勉強を。

ステップA:上手にできる状態

この段階のお子さんは、自分の学習方法を確立し、自律的に学習を進めることができます。親は、基本的に口出しせず、子どもが助けを求めてきたときに適切な助言をする役割になります。

☆今日からすぐできる親のアクション☆

自室での学習を尊重する:お子さんが自室での学習を希望するなら、その意思を尊重します。「今日から勉強を任せるからね」などと言葉にして伝えるのもいいでしょう。同時に、「学習が進まないようだったら、またやり方を考え直そうね」と、うまくいかない場合にリビング学習に戻ることも事前に伝えておきましょう。

お子さんの成長に合わせて、最適な関わり方を

リビング学習は、お子さんの成長段階や性格、家庭環境によって、最適な形が異なります。大切なのは、親が一方的に環境を決めるのではなく、お子さんの状態をよく観察し、柔軟にアプローチを変えていくことです。

今回ご紹介した4つのステップは、お子さんの「自学力」を育み、学習における自立を促すための道筋です。(清水先生)

今日からできる「ひと工夫」をぜひ試してみてください。お子さんの「できた!」という喜びの積み重ねが、将来の大きな力となるはずです。

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例:先生の「つもり」で勉強すると効果アップ/雨の日は記おく力が3倍あがる!?/音楽をきくなら勉強する「前」/心があれたらセルフ実きょう中けい/図形センスがあがる部屋の「間取り図」/4コママンガで物語文&作文の練習 など

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【東大卒教育アドバイザーが教えます】「うちの子、やる気がない…」そんなときは“To Do ビンゴ”! 宿題やタスクをゲーム感覚で楽しくクリア♪ 小さな成功体験が次のやる気へと
いわゆる「やることリスト」とはひと味違う 「宿題しなさい!」「早く準備して!」毎日、お子さんに何度言っても動いてくれない…そんな悩み...

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子どもの「勉強って楽しい!」のために親ができること

記事執筆

清水章弘 教育アドバイザー

1987年、千葉県船橋市生まれ。私立海城中学高校、東京大学教育学部を経て、同大学院教育学研究科修士課程修了。中学高校時代に生徒会長、サッカー部、応援団長、文化祭実行委員などを経験しながら東京大学に現役で合格。自身の時間の使い方や効率的な勉強法を体系化し、「勉強のやり方」を教える塾プラスティーを起業。現在は東京・京都・大阪で運営。創業以来、公教育支援を続けており、青森県三戸町教育委員会の学習アドバイザー等を務めてきた。

著書は『東大式ふせん勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など13冊。累計40万部を突破、海外翻訳も多数。TBS「ひるおび」YTV「情報ライブ ミヤネ屋」MBS「よんちゃんTV」コメンテーター、北海道テレビ「イチモニ!」などに出演。朝日新聞・朝日小学生新聞で執筆・連載中。プライベートでは2児の父。

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