【キャサリン&ナンシーに聞く6~12歳のマネー教育】ゴールはしあわせな自立。「お金」の管理力を身につけるには「小学生のうちが9割」!

お金について理解が進み、自分で使う機会も増える小学校6年間。「6~12歳は、お金を管理する力をふくめ、お金の流れを知ることを目指します」というのは、母であり、証券会社出身のファイナンシャルプランナー・キャサリンさんとナンシーさん。本格的な思春期が訪れる前のこの時期は、親子でコミュニケーションがとりやすい年齢である、とも。家族でお金についてたくさん話してみませんか? 今回は、6~12歳への「マネー教育」、略して「マネ育」についてお聞きしました。


家庭で、社会で、お金の流れを親子で知ろう

給料振り込みや光熱費の口座振替などが当たり前の今、子どもにとってはお金の流れがわかりづらい時代でもあると、キャサリンさんとナンシーさん。だからこそ「今日は給料日だったよ」「電気代が引き落とされたよ」などと、まずは“家庭でのお金の流れ”をあえて言葉にすることが大切なのだとか。

マネー教育の普及につとめるキャサリンさん(写真左)とナンシーさん(写真右)。

ナンシーさん 「子どもにはお金の話をしない、というおうちもあるかもしれません。でも、わたしたちはしていくべきだと考えています。

というのも、“ある”中で使うのがお金の基本。おうちの方がまずそれを理解して、お子さんにも使えるお金について話しておくほうがよいと思うからです。

経済事情は家庭によりちがいます。でも、使えるお金が少ない=不幸なのではなく、叶えようと思えば夢は叶えられることも伝える。その際に、現状を親子で知っておくことでよりパフォーマンス高く戦える方法を一緒に考えられると思うんです。

小学生になるとお金の価値もわかり、だんだん家庭の経済事情にも理解がすすむでしょう。わが家では、小学生になると子どもたちに『習い事の月謝は一人1万5,000円まで』と伝えていました。また、月々の外食費の上限も共有していましたね。

だからか、習い事を自分から辞めたいと言い出したことは一度もなく、新しい習い事がしたい場合は子どもと相談しました。外食も『今月は贅沢気分を味わいたいから、外食は一度にしてパッと行こう』などと、今でも家族で話します。むしろ子どもたちのほうから『今月、外食しすぎじゃない?』なんて注意されたこともありますね(笑)」

また、“社会のお金の流れ”も伝えるのによい時期でもあるそうです。

ナンシーさん 「おすすめは、預金通帳での利息の可視化です。銀行にお金を預けることで、なぜお金が増えるのか。言葉だと少しわかりづらいですよね。銀行に預金する→銀行が誰か(借主)に貸す→借主が銀行(貸主)に借りた対価として利息というお金を払う……という流れを理解するためにも、お子さんが自分で通帳への振り込みや記入をするとわかりやすいです。

わが家は毎年お年玉をもらったタイミングで、冬休みの間に子どもたちが自分で振り込みや通帳記帳をするようにしていました

ナンシーさんのおすすめは、「冬休みの間の平日。日中だと空いているので、子ども自身に入金や通帳記入もさせやすいです」

6~12歳は「お小遣い」を渡して管理することを身につける

お小遣い制度をはじめるなら6歳ごろから。渡す方法は、家庭やお子さんに合わせて下記のような方法があります。

  • ①    定額制
  • ②    お手伝いに応じて
  • ③    ふたつをミックス

ポイントは、金額から決めるのではなく、まず「何に使うのか(何を自分で買うのか)」を家庭で話し合うことです。

ナンシーさん 「長女は、幼稚園の年長さんからお小遣いを渡しはじめました。用途はスイミングの後のジュース代です。スイミングはひと月に4回あったのですが、渡していたのは300円。どこかで一度我慢する必要があります。ただあるとき、親が買ってくれるからなんとなく飲んでいたけれど、本当は飲まなくてもよかったとわかったり、二度ガマンしてテストの後に高いジュースを買おうとやりくりしたり。子どもなりに工夫するようになっていきましたね」

お小遣いの用途は、年齢や状況を鑑みて少しずつ線引きしていきます。文房具も任せる。お友だちの家に持っていくお菓子は親が買うけれど、自分の分は自分で買う。スマホ代は親が払うけれど、LINEのスタンプはお小遣いでなど。「ご家庭やお子さんの性格に応じて、いろいろ試してみてください」とナンシーさん。

お手伝いの報酬制の場合、金額やあげるタイミングなども相談するとよいそうです。

また、お小遣いを使ったらレシートをもらう習慣をつけ、1か月に一度など定期的に親子で内容を振り返ります

キャサリンさん 「お小遣い帳の場合、つけたりチェックしたりするのも大変です。レシートなら、もらったら親に渡すだけでOK。わたしは子どもたちと“いいお金の使い方”か“悪いお金の使い方”かを振り返りました

“いいお金の使い方”とは、買ったものをきちんと使っていたり、買うことでテンションが上がるものを選べていたりする場合。“悪いお金の使い方”は、せっかく買ったのに使っていない場合です。

キャサリンさん 「次は親のお金ではなく自分で買おうとか、これは買わないようにしようなど、一緒に振り返るとお金の使い方を軌道修正できます。また振り返るときに、ニーズ(必要)とウォンツ(ほしい)をわけて考えられるようにもしてあげてほしいですね。それから、家族の誕生日や寄付など、人のためにお金を使うことも練習させてあげてください」

こうしたお小遣いのやりくりを通して、自分にとってのしあわせなお金の使い方がだんだんわかってくるのだそうです。

レシートなら、使った内容もお店もすべてが把握できます。

ちなみに、値上げを要求してきたらどうすればいいのでしょう?

ナンシーさん 「なぜ値上げが必要なのか、プレゼンさせるのもおすすめです。プレゼンの体験は、社会人になったときにも役立ちますよ。

あとは、フリマサイトやフリーマーケットなどで、おうちの人と一緒に不要なものを誰かに譲る体験をするのもいいですね。自分が使わないものが誰かの役に立つことを知るにはいい機会だと思います。稼ぐというより、ものやお金が循環していることを知る体験にもなります」

フリマサイトやフリマへの出店は、必ず親御さんも一緒に。

こんな「トラブル」に注意! 予防できるものもあります


小学生は、お小遣いを使うようになったり、行動範囲が広がったり。自立が進む一方で、どうしてもお金にまつわるトラブルが出てくるといいます。ただし親が守ってあげられるケースもある、とおふたり。

ケース1:「うまい話」や「無料」の罠

キャサリンさん 「SNSなどで流れてくる『楽をして稼げる』といったうまい話はないことや、無料サイトや無料ゲームなどが無料にできる仕組みを伝えることも大切です。サギの誘惑にのらないことを注意し、理解させましょう」

ケース2:友だちに「おごる」「借りる」

ナンシーさん 「大人であっても“おごる”とか“借りる”とかいったやりとりはトラブルのもと。そもそも「しないほうがいい」と伝えてください」

キャサリンさん 「おごらないと友だち関係が成立しないのは変ということも伝えてほしいですね。おごっていい格好しないと友だちが成立しないという考えには、心のトラブルが隠れている可能性も。親子でしっかりコミュニケーションをとってください」

ケース3:親のお金を盗る

キャサリンさん 「悲しいかな、よく聞くケースでもあります。お金の話はオープンにしつつも、実際のお金は子どもの手が届くところに置かない。リビングのテーブルにお金をほったらかしにするなど、粗末に扱うのもだめ。子どもの出来心を誘わないように予防します。

また、会話の中で『こんなことがあってね……』と、お金を盗ってしまうことの怖さや悪いことを伝えるのも一つの方法です。お子さんの性格に合わせて寄り添ってみてください」

お金についての知識があると、自分の人生を選べるようになる

学校などでも「マネ育」を行うおふたりも、普段はひとりの母。お子さんたちが幼い頃からお金についてたくさん話してきました。

「わたしたちは、お金をとおして子どもたちに世の中のことを話している」とナンシーさん。

ナンシーさん 「お金は交換するもので、自分と相手がいて、初めて成り立つ存在です。

家庭でのマネ育でお金の考え方が身についていれば、たとえば大人になってうまい話をされたときに『なぜわたしに、そんな話を持ちかけるんだろう?』と思えるはず。日々のお買い物でも、お金を通して売り場を見るとおもしろいですよ。たとえばスーパーで、いちばん前に並んでいる野菜は、お店の人(相手)がいちばん売りたいもの。だから前にあるんだと、相手の視点に立って考えられます。

こうしたものの見方は、ビジネスでもコミュニケーションでも重要な要素です。子どものうちからお金を学ぶことは、複数の視点を持つことにつながるんじゃないでしょうか」

また、金融教育の成果は「めっちゃ稼げる」ではなく、「しあわせに自立できること」だと思うとキャサリンさんが続けます。

キャサリンさん 「大学生の息子は、日常生活を決められた範囲内で楽しく送ることができています。これはしあわせなお金の使い方を小さなころから日々伝えて、実践した結果じゃないでしょうか。

こうした価値観をしっかり伝えられるのは、本格的な思春期を迎える前の小学校6年間だと思います。つまりマネ育は小学生のうちが9割! どうぞ楽しみながら親子でたくさん話してみてください」

取材・文/ニイミユカ

記事監修

キャサリンとナンシー 金融教育実務家

証券会社出身で子育て中のファイナンシャル・プランナー二人が、お金のお医者さんとして公立小学校や金融庁など公的機関を中心に授業を行っている。20224月に株式会社マネイクを設立。子どものお小遣いの話から株式や旬な経済の話まで、大人も子どもも夢中になれる「実践的なお金の学び」を全国で展開。小学生向け・親子向け金融教育、大人向け投資教育の講座実績は 800講座を超える(202511月現在)。金融教育に関する監修・コンサルティング、テレビ出演、各種メディア掲載実績多数。

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