冬の感染症対策に注目! 「ヌメ活」とは?
――広瀬先生、宮崎先生が提唱されている「ヌメ活」とはどのような食習慣でしょうか?
広瀬先生:もずく、オクラ、なめこ、納豆などの「ヌメヌメ食材」を、日々の食事に取り入れる健康習慣のことで、「腸内環境の改善」をはじめ、「免疫力の向上」、「抗炎症作用」、「代謝促進」など、複数の健康効果が期待できます。その中で特に注目されるのがヌメヌメ食材に共通して含まれる「ヌメヌメ成分」です。
――「ヌメヌメ食材」の「ヌメリ」とは一体なんなのでしょうか?
広瀬先生:「ヌメリ」の正体は水溶性の食物繊維で、海藻や植物が乾燥や外的ストレスから身を守るために分泌する保護物質です。たとえば海藻は潮の満ち引きで乾きやすいため、水分を保つバリアとして機能しています。「ヌメリ」は、海藻や植物が環境に適応するために身につけた生体防御物質のひとつであり、私たちにとっては腸内環境の改善や免疫機能の調整に役立つ天然の機能性成分といえるのです。
とはいえ、さまざまな食品に含まれるヌメリは全て同じ成分というわけではありません。
| ヌメリ成分 | 代表的な食材 | 期待できる主な健康効果 |
| フコイダン | もずく、メカブ、ガゴメコンブ など | 免疫賦活、アレルギー緩和 |
| ガラクタン | 里芋、 山芋・長芋、オクラ など | 便秘の改善、血中コレステロールの低下 |
| ペクチン | オクラ、なめこ、モロヘイヤ、レンコン など | 便秘の改善、血中コレステロールの低下、血糖値の抑制 |
| マンナン | 山芋・長芋、モロヘイヤ など | 食べ過ぎ防止、便通改善 |
| βグルカン | なめこ | 免疫賦活、アレルギー緩和 |
この表のように「ヌメヌメ食材」はそれぞれが異なる健康効果を持っているため、いくつかを組み合わせることで、さまざまな健康メリットが期待できます。
もずくに含まれるヌメヌメ成分がインフルエンザ予防に!

――冬の感染症対策になぜ「ヌメ活」が効果的なのでしょうか?
広瀬先生:冬は「寒暖差や気圧変動による自律神経の乱れ」、「日常的な運動量の低下」、「暴飲暴食などの食生活の乱れ」、「乾燥によるウイルス侵入リスクの増加」により、インフルエンザや感染性胃腸炎をはじめとする感染症にかかりやすい季節です。そのため、感染症対策として「ヌメ活」を日常に取り入れ、免疫機能を高めておくことをおすすめします。
――インフルエンザ対策にも効果があるというのは、とても期待できます。
宮崎先生:もずくやメカブに含まれるヌメリ成分の「フコイダン」を摂取させたマウスでインフルエンザ予防効果を検証したところ、摂取していないマウスと比較して症状が緩和されることや、肺におけるウイルス増殖が抑えられることがわかりました。また、その背景としてフコイダンを摂取することで免疫細胞の活性化が起こることや、それに伴ってウイルスに対する抵抗力(免疫力)が上がることもわかっています。
――今年はインフルエンザの流行が早まりましたが、現代人の免疫力は下がっているのでしょうか?
宮崎先生:感染に対する抵抗力は全体的に落ちているように感じますね。 背景として、欧米型の食事が多くなり腸内環境が悪化しやすくなったことや、コロナ禍での「三密」を避ける生活や長期間のマスク生活が続いたために個々人がウイルスに接触して免疫をつける機会が減ったことが影響していると考えられます。
味噌汁や鍋料理がおすすめ! ヌメヌメ食材の効果的な食べ方とは
――もずくやメカブというとさっぱりしているイメージもありますが、冬こそしっかり食べた方がよいということがわかりました。ヌメヌメ食材を食べるときの注意点はありますか?
広瀬先生:特定の食材を毎日食べ続けるのではなく、いろいろな「ヌメヌメ食材」を組み合わせることが大切です。ただ、ヌメリ成分は水溶性で、洗いすぎるとせっかくのヌメリ成分が流れてしまうため気をつけてください。

たとえばもずくなら、ごはんにかけたり、スープや味噌汁に入れたりして「溶けだした分もまるごと食べる」という方法がよいでしょう。ヌメリ成分は熱に強く、加熱調理で損なわれないのも特徴です。免疫を担う細胞の材料にもなるたんぱく質、体の代謝を支えるビタミン類などと組み合わせて食べるとさらに効果的です。
――先生方はどのようにヌメ活をされていますか?
広瀬先生:私は毎日納豆ともずくを混ぜて食べています。もずくやメカブはスーパーでも手軽に買えるのがよいところです。
宮崎先生:私は味噌汁やサラダに入れて食べることが多いですね。
広瀬先生:もずくは種類によって食感が異なるので、お好みのものを探してみるとよいでしょう。熱に強いので、海藻の香りが苦手な方はかき揚げや天ぷらにしたり、チヂミやお好み焼きなどに混ぜたりするのも美味しくて食べやすいですよ。
キング・オブ・ヌメ活! 冬にぴったりのもずくレシピ
――冬におすすめのヌメ活レシピはありますか?
広瀬先生:寒い時期の「キング・オブ・ヌメ活」として「豆乳もずくきのこ鍋」をご紹介します。鍋にすることで、ヌメリ成分が溶けだした汁ごと食べられますし、肉や野菜なども合わせて栄養を整えやすいので、今の季節にぴったりです。

豆乳もずくきのこ鍋
材料【3〜4人分】
・もずく 80g
・豚バラ肉 200g
・木綿豆腐 1丁
・白菜 1/8株(250g程度)
・春菊 1/2株(80g程度)
・長芋 80g
・しめじ 1袋(100g)
・えのき 1袋(150g)
・にんじん 1/3本
・無調製豆乳 500mL
・白だし 100mL
・水 100mL
・しょうが 3g (千切り)
【味変】
・キムチ 適量
・味噌 適量
作り方
1.下ごしらえをする。白菜はざく切り、春菊は5cmの長さに切る。しめじとえのきは石づきを取ってほぐす。
長芋は皮をむき、1cm幅に切る。にんじんは薄切りにする。豆腐は食べやすい大きさに切る。
2.鍋に水と白だしを入れて中火にかける。白菜・にんじん・しめじ・えのきを加え、ふたをして5分ほど煮る。
3.豚肉を加える。豚肉を広げながら入れ、色が変わるまで煮る。
4.豆腐と長芋を加える。弱火に落とし、いったん火を止めてから豆乳を加える。
※豆乳は沸騰させると分離しやすいため、弱火〜中弱火で温める。
5.しょうがを加えて温め、春菊をのせる。ふつふつと温まったら火を止め、仕上げにもずくをのせる。
6.好みで味変する。そのままでも、途中で味噌を溶いたりキムチを加えたりしても美味しい。
――鍋料理なら、具材を変えていろいろアレンジできそうです! これから本格的な受験シーズンに突入しますが、感染症から身を守るためのアドバイスをお願いします。
広瀬先生:手洗いやうがいなどで「ウイルスが入ってくるのを防ぐ」ということ、そして睡眠やバランスのよい食事で「体の土台をつくる」という基本的な対策をベースにしながら、「免疫を高める食習慣」としてヌメ活を取り入れていただければと思います。毎日何らかの形でヌメヌメ食材を摂り続けることで感染症に負けない体を作ってください。
――ありがとうございました。感染症が流行りやすい季節は特に「ヌメ活」を意識していきたいですね。スーパーで手軽に購入できるヌメヌメ食材を組み合わせて、冬を乗り切りましょう!
お話を伺ったのは
大阪府立大学農学部卒業後、食品企業の研究員を経て同大学大学院で博士号取得。沖縄県農業研究センターおよび工業技術センターにて農産物の加工利用研究に携わり、2022年に鹿児島県立短期大学教授、2024年に九州⼤学⼤学院教授に就任。現在はヴェントゥーノ社と共同で幅広い食品加工と免疫機能に関する研究を実施している。
九州⼤学⼤学院農学研究院で博⼠号取得後、同⼤医学部研究員、佐賀⼤学医学部助教。2016年に九州⼤学⼤学院農学研究院⽣命機能科学部⾨准教授に就任。
国内で初期からフコイダンの免疫メカニズムを解明する研究に携わり、現在はヴェントゥーノ社と共同で、幅広い⾷品の免疫機能に関する研究を実施している。
京都大学の本庶佑教授や大阪大学の坂口志文教授などのノーベル賞受賞者を輩出する、世界各国で活躍する免疫学者が⼀同に集う世界最⼤規模の学術組織「アメリカ免疫学会」でフコイダンの免疫調節作用に関する論⽂を発表している。
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取材・文/平丸真梨子
