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洛陽天満宮二十五社順拝とは?
京都には、学問の神様・菅原道真公をお祀りする天満宮が数多くあります。その中でも、道真公とゆかりの深い25の社をめぐる「洛陽天満宮二十五社順拝」という風習が、いまも静かに受け継がれています。
この順拝は、時代や資料によって社の数や順番に違いがあるため、厳密に定められたものとはいえません。今回ご紹介する25社も、江戸時代後期の資料を参考にしました。長いときの流れの中で残念ながら廃社となってしまった社もありましたが、姿のない場所にも、土地の記憶と祈りの気配が息づいているように感じられました。
それではここから、一つ一つのお社をご紹介します。ぜひ皆様も画面を通して、一緒に順拝してみてください。
道真公誕生の地・都での暮らしにゆかりを持つ3つの天満宮
まずは、菅原道真公が生まれ過ごしたゆかりのある天満宮を3つ紹介します。まだ「学問の神様」と呼ばれる前、一人の人間として悩み、努力を重ねていた道真公。その足跡が残る場所をたどりながら、受験生のいまの姿にそっと重ねてみるのはいかがでしょうか。
⚫︎菅原院天満宮神社

京都御所の西、烏丸通に面して佇む菅原院天満宮神社。ここは、菅原道真公と、父・是善公、祖父・清公の三代をお祀りする、菅原家ゆかりの地です。
境内には「産湯の井」と呼ばれる井戸が残り、道真公の誕生にまつわる伝承がいまも静かに語り継がれています。誕生地には諸説ありますが、この場所を大切に守り続けてきた人々の思いが、境内の空気から伝わってくるようです。
学問の神様としてだけでなく、家族に見守られながら歩み始めた一人の少年としての道真公。その「はじまりの場所」は、努力を重ねる受験生をそっと見守ってくれるような、やさしい静けさに包まれていました。

【菅原院天満宮神社】
住所:京都市上京区堀松町408
アクセス:地下鉄「丸太町」駅下車、徒歩約5分
HP:https://sugawarain.jp
⚫︎菅大臣神社

菅大臣(かんだいじん)神社は、道真公が生まれ育ち、日々学問に励んだ邸宅跡と伝えられる場所です。屋敷内には、学びの場である「菅家廊下(かんけろうか)」があったともいわれています。
この地は、太宰府へ向かう際に詠まれた和歌
「東風吹かば にほひをこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな」
にまつわる「飛梅伝説」の舞台のひとつとも伝えられています。
鳥居のそばに立つ紅梅は、春になると変わらず鮮やかな花を咲かせます。離れていても、思いは届く…。そんな道真公の願いが、いま努力を続ける受験生の背中を、そっと押してくれるようでした。

【菅大臣神社】
住所:京都市下京区仏光寺通新町西入菅大臣町
アクセス:地下鉄「四条烏丸」駅下車、徒歩約5分
⚫︎北菅大臣神社

北菅大臣神社が鎮座する一帯は、かつて菅原家の私邸「紅梅殿」や書斎、学問所が置かれ、多くの学び手が巣立っていった場所だと伝えられています。
祀られているのは、道真公の父・菅原是善公。学問に向かう道真公を、すぐそばで支え続けた存在です。
努力する本人の力はもちろん、その歩みを見守る存在があること。北菅大臣神社は、受験生を支える家族の思いとも重なる、あたたかな空気に包まれていました。

【北菅大臣神社】
住所:京都市下京区菅大臣町
アクセス:地下鉄「四条烏丸」駅下車、徒歩約5分
太宰府配流前に立ち寄ったゆかりを持つ天満宮
都を離れ、遠い太宰府へと向かう道真公の旅は、不安と覚悟を胸にした出立でもあったことでしょう。ここでは、その旅立ちの前後に立ち寄ったと伝えられる地に建つ天満宮をご紹介します。
大きな試練を前に、それでも一歩を踏み出した道真公の姿は、受験本番に向かう受験生の背中と、どこか重なるように感じられます。
⚫︎一夜天神堂(壬生寺内)

壬生寺の境内に祀られている一夜天満宮は、「一夜にして知恵を授かる」と伝えられる天神さんです。菅原道真公が太宰府へ向かう途中、この地で一夜を過ごしたという伝承に由来しています。
社の前に立つと、旅立ちの不安や、別れの思いを胸にした道真公の姿が想起されます。大切な一日を迎える前夜の過ごし方を、そっと考えさせてくれる場所でもありました。
試験前夜、これまで積み重ねてきた努力が、穏やかな気持ちで実を結びますように。一夜天神堂は、受験生の「最後の一歩」をやさしく見守ってくれるような、静かな祈りの場です。

【一夜天神堂】
住所:京都市中京区壬生梛ノ宮町31
アクセス:阪急電車「大宮」駅下車、徒歩約10分
HP:https://www.mibudera.com/index.html
道真公没後、祈りが形となって生まれた3つの天満宮
道真公がこの世を去ったあと、さまざまな出来事をきっかけに、人々の祈りは信仰として受け継がれていきました。ここでは、そうした思いの積み重ねから生まれた、3つの天満宮をご紹介します。
⚫︎文子天満宮

京都駅から北へ進み、六条通の静かな町並みの中に鎮座する文子(あやこ)天満宮は、菅原道真公とその乳母とされる多治比文子(たじひのあやこ)をお祀りする天満宮です。ここは、天神信仰のはじまりの地として大切に受け継がれてきました。

道真公の死後、道真公の託宣により文子は自らの住まいに小さな祠を設け、その御霊を祀ったと伝えられています。また、太宰府へ旅立つ際に託された御神像を祀ったのが始まりだとする由緒も残されています。
この空間にあるのは、ただ一途に相手を思い、信じ続ける心。文子天満宮は、努力を重ねる受験生を天から見守ってくれるような温かさに包まれた場所です。


手前の着物姿の御守は、手作りの「文子守り」。
京都の老舗・松栄堂のお香(幸)が入った「一願成就御守」です。
文子天満宮では、合格祈願も行なっていますよ。ご祈祷を希望する場合は、事前に予約をしてください(電話:075-361-0996)。
【文子天満宮】
住所:京都市下京区間之町通花屋町下る天神町400
アクセス:京都駅下車、徒歩約10分
HP:https://ayakotenmangu.or.jp/index.html
⚫︎水火天満宮

堀川通に面して佇む水火(すいか)天満宮は、都に続いた水害や火災を鎮めるため、道真公の御霊をお迎えして創建されたと伝えられる天満宮です。
境内はコンパクトながらも、水難・火難除けを願う人々の祈りが、いまも静かに受け継がれています。思いがけない出来事から身を守りたい… そんな願いは、受験を控えた時期の気持ちともどこか重なります。
水火天満宮は、大切な日を無事に迎えられるよう守ってくれるような安心感に包まれていました。

【水火天満宮】
住所:京都市上京区堀川通上御霊前上ル扇町722-10
アクセス:地下鉄「鞍馬口」駅下車、徒歩約10分
⚫︎火除天満宮

火除(ひよけ)天満宮は、幕末の蛤御門の変で、この一帯だけが火災を免れたことから信仰を集めるようになった天満宮です。以来、学問成就に加え、「火除けの天神さま」としても親しまれてきました。
境内には「洛陽天満宮二十五社順拝」の石碑が立ち、このお社がいまも祈りの道の一部であることを伝えています。賑わう四条通のすぐそばにありながら、一歩足を踏み入れると、不思議と心が落ち着く場所です。

【火除天満宮】
住所:京都市下京区寺町通四条下ル貞安前之町613
アクセス:阪急「京都河原町駅」下車、徒歩約5分
祈りが受け継がれてきた、6つの天満宮
ここでは、道真公との詳しいゆかりはいまでは分からなくなってしまったものの、「洛陽天満宮二十五社順拝」に数えられてきた天満宮をご紹介します。
はっきりした記録はなくても、長い年月、人々が手を合わせ続けてきたこと自体が、大切に守られてきた証です。
⚫︎筑紫天満宮(五條天神社内)

五條天神社の脇を通っていくと、筑紫天満宮があります。
五條天神社の境内に祀られる筑紫天満宮。「筑紫」とは、菅原道真公が向かった太宰府の旧称です。その名には、遠く離れた地へと思いをつなぐ祈りが込められているようにも感じられます。
【筑紫天満宮】
住所:京都市下京区松原通西洞院西入天神前町351-2
アクセス:市バス50「西洞院松原」下車すぐ
⚫︎天満宮社(下御霊神社内)

京都御苑の東、丸太町通に面して鎮座する下御霊(しもごりょう)神社。表門をくぐった右手側に、菅原道真公をお祀りする天満宮社が静かに佇んでいます。
詳しい由緒は伝わっていませんが、「洛陽天満宮二十五社順拝」に数えられてきたことが、このお社が長く人々の祈りの中で守られてきた証。
境内に立つと、京都の町とともに受け継がれてきた確かな祈りの気配が感じられますよ。

【天満宮社】
住所:京都市中京区寺町通丸太町下る
アクセス:地下鉄「丸太町」駅下車、徒歩約10分
HP:https://shimogoryo.main.jp
⚫︎上御霊天満宮(御霊神社内)

京都・烏丸通の北、御霊神社の境内に、菅原道真公をお祀りする小さな上御霊天満宮が本殿向かって左手側にあります。
御霊神社そのものは、桓武天皇の勅命により、非業の死を遂げた人々の御霊を鎮めるために創建されたと伝えられる御霊信仰の社です。天変地異や疫病を鎮めるための御霊会がたびたび執り行われたことから、広く庶民の信仰を集めました。

【上御霊天満宮
】
住所:京都市上京区上御霊前通烏丸東入ル上御霊竪町495
アクセス:地下鉄「鞍馬口」駅下車、徒歩約3分
⚫︎安井天満宮(安井金比羅宮内)

東山の賑わいの中にある、安井金比羅宮(やすいこんぴらぐう)。その境内の一角に、静かに祀られているのが安井天満宮です。菅原道真公をお祀りし、学業成就や文の道をはじめ、名誉回復や雪冤(せつえん、無実の罪を晴らすこと)のご神徳が伝えられています。
江戸時代には「洛陽天満宮二十五社順拝」の一社として、多くの人が手を合わせてきました。大切な場面で、自分の力が正しく発揮できますように…。安井天満宮は、受験生の歩みをそっと後押ししてくれる、心強さを感じました。

【安井天満宮】
住所:京都市東山区東大路松原上ル下弁天町70
アクセス:京阪本線「祇園四条」駅下車、徒歩約10分
HP:http://www.yasui-konpiragu.or.jp
⚫︎神泉苑天満宮(神泉苑内)

神泉苑(しんせんえん)の境内に、静かに佇む神泉苑天満宮。池や木々に囲まれた境内は、穏やかな時間が流れています。
大切な日に向けて、気持ちを整えるひととき。神泉苑天満宮は、受験生と家族にやさしく寄り添ってくれる天神さんでした。

【神泉苑天満宮
】
住所:京都市中京区御池通神泉苑町東入る門前町167
アクセス:阪急「四条大宮」駅下車、徒歩約10分
HP:https://www.shinsenen.org
⚫︎東三條社天満宮(大将軍神社内)

大将軍神社の境内の一角に、菅原道真公をお祀りする東三條社天満宮があります。
古木に囲まれた境内には、長い年月を生きてきた大イチョウなどが残り、天神さんへの信仰がいまも大切に受け継がれていることを感じさせます。
長いときを超えて守られてきた祈りは、いま努力を重ねる受験生のそばにも、そっと寄り添ってくれるようでした。

【東三條社天満宮】
住所:京都市東山区三条大橋東三丁目下る長光町640
アクセス:地下鉄東西線「東山」駅下車、徒歩約4分
最後に
新年を迎え、受験本番が近づくこの時期。受験生とご家族が、天満宮へ足を運ぶ機会も増えることでしょう。
そんなとき、菅原道真公が歩んだ人生や、それぞれの神社に込められた思いを少しだけ心に留めてお参りしてみてください。これまで積み重ねてきた日々を静かに振り返りながら手を合わせる時間は、不安で揺れる心を、やさしく整えてくれるはずです。
努力してきたことは、もう十分にあなたの中にあります。
あとは、落ち着いてその力を出し切れますように——! そんな願いを込めて、〈前編〉を締めくくります。
文・構成/ぐうとくじん(京都メディアライン)
『ちゃおプラス』で配信中の漫画『受験のカミサマ〜中学受験・合格へのオラクル〜』の原作を担当。著書に小学館ジュニア文庫『受験のカミサマ〜中学受験・合格へのオラクル〜』がある。京都市在住。
【合格祈願】洛陽天満宮二十五社順拝の後編はこちら
こちらのムックにも中学受験情報がたっぷり
