「同じ絵本ばかり読みたがる」のは成長のサイン! 絵本専門士が教える最高の読み聞かせ術

絵本専門士

子どもが、何度も同じ絵本ばかりを「読んで!」と持ってくる…。保護者にとっては「またこの本?」「成長のチャンスを逃していない!?」と不安になる瞬間かもしれません。でも、絵本専門士であり、絵本カフェMébaé (めばえ)の店主でもある洞本昌哉(ほらもと・まさや)さんは「そこには成長の大事なサインがたくさん隠れています」と断言します。この記事では、絵本専門士である洞本さんのユーモアあふれる実例と豊富な経験をもとに、親子の絵本時間がもっと豊かになるコツをぎゅっとまとめて紹介します。今日からの読み聞かせが、もっと楽しく、もっと自由になりますよ。

なぜ子どもは同じ絵本を「何度も」読みたがるのか?

子どもが何度も同じ絵本を持ってくる理由… それは、単純な「お気に入り」よりもずっと深いところにあります。絵本専門士の洞本さんは、子どもにとって 「知っている物語は『安心のスイッチ』になる」 といいます。

大人でも、初めて行く場所は緊張する一方、馴染みのカフェや通い慣れた道はほっとするものですよね。

子どもにとって、それが絵本だったりします。「一度経験した物語」は心が落ち着く「帰れる場所」。もう知っている展開だからこそ、安心して物語の中に入っていけるのです。

絵本専門士であり、絵本カフェMébaé (めばえ)の店主でもある洞本昌哉(ほらもと・まさや)さん
絵本専門士であり、絵本カフェMébaé (めばえ)の店主でもある洞本昌哉(ほらもと・まさや)さん。

さらに、洞本さんは子どもの行動にこう注目します。

「好きな本を読むとき、子どもは必ず同じページで止まります」

そのページには、親子で話した記憶、気持ちが大きく動いた瞬間、一度受け取った感動… その「体験の痕跡」が残っているのだといいます。

怖い絵本が何度も読まれるのもそのため。「怖いけれど楽しかった」、「ママにぎゅっとくっついた!」、そんな強い感情の記憶をもう一度味わいたいから、同じ絵本を選ぶのでしょう。

同じ絵本を繰り返すことは、

・心が落ち着く
・感情の動きを確かめられる
・理解が深まり、世界が広がる

といった、子どもの発達に欠かせない大事なプロセスだといえますね。

「同じ絵本」は安心のスイッチ

大好きな本を手に取ると、子どもは自然と落ち着きを取り戻します。洞本さんは、これを「日常の中にある帰れる場所」だと説明します。

例えば…

園や学校で少しドキッとする出来事があった日
なんとなく気持ちがザワザワするとき

そんなときに、大好きな一冊を見せるだけで表情がふっと緩むことがありますよ。

絵本は「これから、いつもの楽しい時間が始まるよ!」という合図になり、子ども自身が気持ちを整える「道具」として機能しているのです。

たくさんの絵本が並ぶ店内。
たくさんの絵本が並ぶ絵本カフェMébaéの店内。

発達にとって大切な「反復」

繰り返し読むことは、単に好きだからではなく「理解が深まり、世界が広がる」発達のプロセスでもあります。洞本さんは、子どもが読む速度や止まる場所の変化に注目しています。

最初は「怖い」「面白い」だけで反応
 ↓
何度も読むうちに細部に気づき始める
 ↓
「この鳥は何?」「ここは土が盛り上がってる」など、観察が深まる
 ↓
親子の会話が増え、理解度が豊かに広がる

つまり繰り返しは「理解の積み重ね」。子どもの脳と心が同じ物語を通して、少しずつ世界を広げているのです。

絵本は、「親子の関係を結ぶ道具」

洞本さんが強調していたのは、繰り返し読みは親子のコミュニケーションそのものであるということです。

子どもは好きなページで話した記憶を覚えている。
「あのときの気持ちを一緒に味わいたい」と絵本を持ってくる。

絵本は、親子の「会話のきっかけ」にも「安心の儀式」にもなる。だからこそ、保護者は焦って新作を与えなくてもいいのだと教えてくださいました。

「何度も読んで!」にどう応える? 絵本との最高の向き合い方

子どもが同じ本を持ってきたとき、「またこの絵本?」と思ってしまうこともあるかもしれません。しかし洞本さんは、「それは親にとっての『ごほうび』だと思ってほしい」と言います。 

なぜなら、子どもは前に読んでもらったときの楽しさや安心感が忘れられず、「もう一度あの時間を味わいたい」という気持ちで本を持ってきているから。つまり、そのときの読み聞かせ時間は「最高だった!」という子どもからの最大の評価なのです。

ここでは、より豊かな読み聞かせ時間にするためのちょっとした工夫を紹介します。

洞本さんが教えてくれたのは、「絵本は読むより『遊ぶ』感覚でいい」ということ。同じ本でも、少し読み方を変えるだけで子どもの反応がガラッと変わりますよ。

工夫1:あえて「わからないふり」をする

「これ、どっちが太郎だっけ?」
「この虹ってなんで出てるの?」

——などと聞くと、子どもは得意げに説明してくれます。これは「理解を言葉にする練習」にもなり、親子の会話はより豊かなものになっていくはずです。 

工夫2:一冊全部を読まなくてもいい

洞本さんは、「なぜ、絵本を全部読もうとするんですか?」と素朴な問いかけをされました。絵本を渡されたら、最後まで読まなければ… と思ってしまいがちですが、確かに全部読む必要はないかもしれません。

・集中力が切れる前に切り上げる
・好きなページだけ読んでもOK
・自分で読める子には「続きは自分で読んでごらん」と促すのもいい

絵本は「読破する」ためのものではなく、親子で楽しむための道具だと考えると、もっと自由に楽しめる気がしてきますね。 

とても楽しそうに読み聞かせをしてくださる、洞本さん。
とても楽しそうに読み聞かせをしてくださる、洞本さん。

工夫3:読書環境作りも技術のひとつ

「子どもが読み聞かせを聞いてくれないのは、読む側の環境づくりの問題」と洞本さんは指摘します。テレビがついたままのざわついた部屋で突然読み始めてもうまくはいきません。

・少し静かになるのを待つ
・読む前に表紙を見せて「これから読むよ」の合図を出す
・子どもにとって安心できる位置に座る

ちょっとした準備が、集中して聞く姿勢につながります。 

「遊びのように読む」と、絵本はもっと楽しくなる

洞本さん自身は、読み聞かせのとき、本をわざと逆さに持つこともあるそうです。すると子どもは「逆だよ、逆、逆!」と突っ込み、そこで笑いが生まれます。 

また、

・裏表紙から読む
・「ストップ!」でランダムにページを開く
・好きなページだけを連続して読む

このような自由な読み方こそ、絵本の楽しみ方の幅を広げます。ページを追うよりも、遊びながら読むこと。これが、絵本を好きでい続ける一番のコツなのかもしれません。

新しい絵本に関心を持たせるテクニック

「同じ絵本ばかりで、新しい本に興味を持ってくれない」これは多くの保護者が感じる悩みです。でも洞本さんは、この状況を「問題」ではなく「チャンス」だと捉えています。 

大切なのは、無理に世界を広げようとしないこと。「好き」の土台がしっかりしているからこそ、次の一冊につながるのだといいます。

いちばん簡単で失敗しない方法は「好きな作家・テーマから横に広げる」こと

新しい絵本への入り口として、洞本さんがまず挙げるのが「好きな絵本の『近く』にある本を選ぶこと」。 

例えば、

・この作家さんの絵が好き → 同じ作家さんの別の一冊を選んでみる
・食べものの絵本が好き → ほかの食べものが出てくる本をセレクト
・電車が好き → 乗り物全般の絵本を読んでみる

まったく違う世界の絵本を選ぶのではなく、「知っている世界から、少しだけ隣へ」がポイントです。

でも「食べる」「ママ」などカテゴリーに分けて、絵本が並べられています。
絵本カフェMébaéでも「食べる」「ママ」などカテゴリーに分けて、絵本が並べられています。

興味がなければ「読まなくていい」。否定しないことが何より大事

新しい絵本を出しても、あまり反応がないこともあるでしょう。それに対して洞本さんは「無理に読ませなくていい。基本は、否定しないこと」 と言います。

子どもはとても傷つきやすい存在。「これ面白くないの?」、「せっかく選んだのに」といった空気を感じるだけで、絵本から距離を取ってしまうこともあります。

「今はタイミングじゃなかっただけ」。そう受け止めて、そっと本棚に戻す余裕が、次の出合いをつくります。

「見せない読み」が、好奇心を引き出すこともある

絵本に興味を示さない子には、あえて「見せない」という方法もあります。洞本さんがすすめるのは、親が子どもの横で、自分だけ絵本を読むこと。 

「面白いなあ」と笑いながら読んでいても、「見せて」と言われるまで見せない。押し付けず、でも楽しそうな姿を見せる。これだけで、子どもの好奇心は自然に刺激されます。

同じ絵本を何度も読む時間は、かけがえのない宝物

繰り返し読まれる一冊には、親子の会話や感情の記憶が染み込んでいます。その本は、子どもにとっての「お守り」であり、次の世界へ進むための土台でもある…。そんなことが洞本さんのインタビューからわかりました。

好きな一冊があるからこそ、子どもはやがて、自分のタイミングで新しい物語に出合っていきます。今日もまた同じ絵本を持ってきたら、「この時間が好きだよ」というサインかもしれません。

そんなふうに受け止められたら、絵本の時間は、きっと今より少しだけ、やさしく、豊かなものになるはずです。

絵本専門士の洞本昌哉さんが店主を務める
【絵本カフェMébaé 】

住所:京都市北区紫野下門前町5-5
営業時間:11:00~16:00
休業日:日曜、月曜、火曜
電話:075-493-5528
アクセス:【電車】京都市市営地下鉄烏丸線「北大路」駅より徒歩約15分
【バス】京都市バス「大徳寺前」下車、徒歩約3分

インスタグラム:https://www.instagram.com/mebae0925/
X:https://x.com/ehoncafe_mebae

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取材・文・撮影/末原美裕(京都メディアライン)

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