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目次
ICU高校・大学で見つけた「全力が当たり前」の環境
――ICU(国際基督教大学)高校への進学後はいかがでしたか?
臼井さん:中学時代は「頑張るのはダサい」という空気にとても苦しみましたが、ICU高校では何事にも全力で取り組む人が多くて、「ここなら頑張っていいんだ」と思えたことに、すごく救われました。
軽音部に所属していたのですが、同時に運動もやりたくて、男子バレーボール部を立ち上げました。通学には片道2時間ほどかかるので毎朝5時起きの生活で大変でしたが、充実していましたね。
――かなりハードな高校生活ですね。そのまま大学へも内部進学されたのでしょうか。
臼井さん:はい、そのまま大学に進学しました。ただ、ICUは内部進学でも約3分の1しか大学に進めません。
ICU高校から内部進学するには一定水準の成績も必要で、姉が勉強を教えてくれたりもしました。

あえて厳しい道を選ぶ——大学ラグビー部での挑戦
――大学生活はいかがでしたか?
臼井さん:大学では、「あえていちばんきつそうな道を選ぼう」と決め、迷った末にラグビー部に入部しました。入部当時の体重は48kgほど。ラグビー部の先輩たちは100kg近くあるような選手もいて、最初は練習にすら参加できない状況でした。それでも諦めず、4年間で体重を36kg増やしたんです。
――体重を36kgも増量されたんですね。今の姿からは、想像ができないです。
臼井さん:ラグビー未経験でしたが、とにかく食べて、トレーニングして、自分を追い込み続けました。その結果、レギュラーを勝ち取ることができて…。泣くほどうれしかったですね。

「お前は0点だ」大学2年生のインターンで直面した“何もできない自分”
――大学生活のなかで、大きな転機となったできごとはありましたか?
臼井さん:大学2年生から始めたベンチャー企業でのインターンが、人生の大きな転換点になりました。それまでの自分の甘い考えを、根底から覆されるような経験だったと思います。
――具体的には、どのようなことがあったのでしょうか。
臼井さん:以前のインターン先で少し評価されていたこともあり、「自分はそれなりにできる人間」と思っていました。でも、そのインターンでは初日から「お前の成果物は0点だ。そこから1点、2点と積み上げる努力をしない限り、使い物にならない」と言われてしまって…。
その瞬間、「自分は何もできないんだ」と痛感しましたし、「何もできないなら、頑張るしかない」と覚悟が決まりました。
臼井さんのお母さま(以下、お母さま):あのころは、本当にかわいそうなくらい打ちのめされていたことを覚えています。裁量のある仕事を任されるようになって、「自由って、辛いこともあるんだね」と話していましたね。

ーーインターン先では、実際にどのような業務を担っていたのでしょうか?
臼井さん:テレアポや訪問営業、プロジェクトマネージャーなど、初めての仕事を次々に任されました。分からないなかで必死に調べて学び、毎日日報を書き、先輩たちの助言をもらって…本当に大変でしたが、この経験で仕事の基礎をすべて叩き込むことができたと思います。
大学では「ジェンダースタディーズ」を専攻するも…就活では苦戦
――その後、新卒でAmazon Japanに入社されたということですが、就職活動は順調だったのでしょうか。
臼井さん: いえ、じつはかなり苦戦しました。大学でジェンダースタディーズを専攻し、人生で初めて「勉強したい」と思える学問に出合えたのですが、今とは少し時代の空気も違い、面接では「女性が働く意味はないと思っている」という心ない言葉を投げられることも少なくありませんでした。
*ジェンダースタディーズとは:「男らしさ」「女らしさ」というイメージが、社会の中でどのようにつくられ、私たちの生き方にどう影響しているかを考える学問
お母さま:就活が思うように進まず、「自分には価値がないんじゃないか」と落ち込んでいる時期もあり、本当につらそうでした。ただ、それでも落ち込むだけで終わらず、落ちた企業に「何が足りなかったのか」を素直に尋ねていて、本当に驚きました。
ーー「ジェンダースタディーズ」の専攻に否定的な企業も多かったのですね。
臼井さん:そうなんです。しかし、さまざまな企業に同じ話をしたときに、僕の経験や考え方を「素晴らしい」と唯一肯定してくれたのがAmazonでした。無事に内定をもらって入社後は、インターン時代に叩き込まれた泥臭い努力や気合いで、最初から「絶対に営業1位を取る!」と燃えていましたね。

Amazon入社1年目で「営業成績トップ」に
――入社1年目から圧倒的な成果を出されたそうですね。
臼井さん:はい、営業成績は1位でした。それだけでなく、自分で社内サイトを作って便利なアプリを紹介したり、ツールの使い方動画を自作して社内SNSにアップしたりもしました。こうした「仕組み化」がみんなに喜ばれたのが、本当にうれしかったですね。Amazonでの時間は、人生で初めて「自分は輝いている」と確信できた気がします。
――たくさんの偉業があったのですね! その裏には、相当な努力があったのではないでしょうか。
臼井さん:はい。テレアポも朝から晩までずっとやっていましたし、本当に努力しました。負けず嫌いなので、成績1位になりたい気持ちは人一倍強かったと思います。
お母さま:子どものころからいつも1位になりたい気持ちが強すぎて、親戚などで集まったときにゲームで負けると外に飛び出してしまうこともありました。それが、周囲からは「どうにかした方がいいよ」と言われてしまうこともあって。
でも親として、「この負けず嫌いな性格も、いい方向に向かえば必ずプラスになる」と信じていたので、今こうして、その性格をうまく活かしているのを見られて、本当にうれしいですね。
ChatGPTとの出合いが転機に——独立し、「AI教育」の道へ
――順風満帆に見えるAmazon時代を経て、なぜわずか1年で起業を決意されたのでしょうか?
臼井さん:Amazon1年目のころ、ChatGPTなどの生成AIに触れて、これまでのテクノロジーとはまったく違う衝撃を受けたんです。「これは社会のあり方そのものを変える」と直感して、AIの可能性に大きな魅力を感じ、起業を決意しました。
現在は「AI教育」を軸に、企業コンサルや、個人の方へAI講座などを行っています。受講された方からは、実際に「人生が変わった」と言っていただけることも多く、やりがいを感じていますね。

――AIを活用できるようになることで、どのような変化が生まれているのでしょうか。
臼井さん:たとえば、育休中で「職場復帰が不安」「社会についていけるか心配」と思っていた方が、僕の講座でAIを学び、使いこなせるようになったんです。復職後には「AI活用で、職場の業務効率を大幅に改善できた」と報告してくれて、仕事も以前よりずっと楽しくなったそうです。AIは、うまく活用することで強力な武器になると、あらためて感じています。
子どもとAIの距離感とは? 親こそ、AIを楽しむ背中を見せよう
――子どもにAIをどこまで使わせたらよいか悩む親御さんも多いですが、親としてどうあるべきでしょうか?
臼井さん:まずは、親自身がAIに触れて楽しむことが大切です。親が理解して、面白がって使う姿を見せると、子どもも自然と興味を持ちます。最初は触ってみるだけでも構いません。親が楽しむ姿こそ、子どもにとってのいちばんの学びになるのです。
――親も学ぶ姿勢が大事、ということですね。
臼井さん:その通りです。今は生涯学習が当たり前の時代です。僕は子どものころから、自宅で父や母が学び続ける姿を見て育ったので、勉強し続けることが自然な環境でした。
お母さま:日本では「勉強すること」をあまりプラスに見ない風潮もありますが、わが家では知識のある人がかっこいいという文化を意識して作っていたんです。家族でクイズをしたり、本棚に図鑑を並べたり、ときには私も資格の勉強をしたりと、学び続ける姿を見せてきたことも大きな影響になったのかもしれません。

親子で楽しむAI活用! おすすめは「疑問解決」「ゲーム制作などのクリエイティブ体験」
――実際、子どもはどのようにAIを活用していくべきでしょうか?
臼井さん:気になることを、好奇心のままにAIに質問してみるのが一番です。たとえば、電子工作で「どうして動かないんだろう?」と思ったときにAIに聞いたり、分からない問題の説明をしてもらったり…。また、ゲームやアプリ制作など、子どもの自由な発想をAIで形にすると、大人の想像を超えるクリエイティビティが生まれることも多いです。
親が禁止してしまうと、可能性は広がりません。ぜひ親子で一緒に学び、活用していってもらえたらと願っています。
お話を伺ったのは
Michikusa株式会社代表取締役。ICU(国際基督教大学)卒業後、Amazon Japanに入社。その後独立し、起業。AIコミュニティ「AI木曜会」の開催、デジタルハリウッド大学特任准教授としても活動するなど、教育分野にも力を入れている。SNS総フォロワー数は50万人を超え、AI分野で国内トップクラスの発信力を持つ。著書に『Notion AIハック 仕事と暮らしを劇的にラクにする72の最強アイデア』がある。
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構成・文/牧野 未衣菜

